対象試験と出題頻度

ニュースで「A社がTOBを実施」と見かけても、IT試験でどう問われるかピンとこない人は多いはずです。

TOBはストラテジ系の経営戦略分野に属する用語で、MBO・LBO・EBOなど類似の買収手法と「誰が買い手か」で区別させる問題が鉄板パターンです。

ITパスポートでは3回にわたり直接出題され、令和7年度でも選択肢の一つとして登場しています。

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対象試験:
ITパスポート
基本情報技術者
応用情報技術者
出題頻度:
★★★★☆
ランクA(重要)必ず覚えておくべき

用語の定義

TOB(Take Over Bid:株式公開買付)とは、一言で言うと

 「買付価格・買付期間・買付株数を公告し、不特定多数の株主から株式市場の外で株式を買い集める制度

のことです。

イメージとしては、マンションの一棟買い交渉です。

マンションを丸ごと手に入れたい不動産会社が、各部屋のオーナーに対して「○月○日までに、1部屋○万円で売ってくれませんか」とチラシを配って買い取りを呼びかける。

こっそり1部屋ずつ買い進めるのではなく、条件をオープンにして一斉に声をかけるのがポイントです。

TOBも同じ構造で、企業の経営権を握りたい買い手が、株式市場を通さず「この価格・この期間で売ってください」と全株主に広く呼びかけます。

📊 TOBの基本情報

項目 内容
英語名 Take Over Bid(米国ではTender Offerとも呼ぶ)
日本語名 株式公開買付(け)
主な目的 他企業の経営権取得、子会社化、完全子会社化
公告する3要素 買付価格・買付期間・買付株数
根拠法令 金融商品取引法 第27条の2~第27条の22の4

解説

なぜ市場で普通に買わないのか

株式は証券取引所で自由に売買できます。

では、わざわざ市場の外で買い集める理由は何でしょうか。

大量の株式を市場内で一気に買い始めると、需要の急増により株価が跳ね上がります。

当初の想定よりはるかに高い金額を支払うことになり、買収コストが膨らみます。

さらに、市場での不自然な大量買いは投機筋の介入を招き、価格の制御が困難になります。

TOBは「○円で○株を○日までに買います」と事前に条件を確定させるため、買い手にとってはコストの見通しが立ち、売り手の株主にとっては売却判断の時間が確保されます。

双方にとって条件が透明であることが、この制度の存在意義です。

TOBの流れ

株式公開買付はいくつかのステップを経て進行します。

TOBの基本フロー

① 買付者が条件(価格・期間・株数)を公告
② 公開買付届出書を内閣総理大臣(金融庁)に提出
③ 対象企業が意見表明報告書を提出(賛同 or 反対)
④ 買付期間中、株主が応募するか判断
⑤-A 成立
目標株数に到達
⑤-B 不成立
応募不足で撤回

※ 買付者は原則として公告後の撤回はできない(金融商品取引法第27条の11に定める例外を除く)

友好的TOBと敵対的TOB

TOBには2つの性格があります。

対象企業の経営陣が賛同しているかどうかで区分されます。

種類 特徴 具体例
友好的TOB 対象企業の経営陣が買付けに賛同。グループ再編や完全子会社化で多用される 親会社が上場子会社を完全子会社化するケースなど
敵対的TOB 経営陣の賛同を得ずに実施。対象企業は買収防衛策で対抗することがある ホワイトナイト(友好的な第三者による対抗買収)やポイズンピルが発動される場面

混同しやすい買収手法との比較

試験で最も差がつくのは「TOB・MBO・LBO・EBO」の4つを正確に区別できるかどうかです。

キーワードは「誰が買い手か」「資金の出どころ」の2軸です。

手法 買い手 資金の特徴 見分けキーワード
TOB 外部の企業・投資家 自己資金・借入など 公告、市場外、不特定多数
MBO 自社の経営陣 自己資金+借入(LBO併用が多い) 経営陣、自社株取得、独立
LBO 企業・ファンド 買収先の資産を担保に借入 買収先の資産、担保、借入
EBO 一般従業員 自己資金+借入 従業員、一般社員、経営を引き継ぐ

TOB・MBO・LBO・EBOの関係図

企業買収(M&A)
| 株式取得の方法として |
TOB(公開買付で市場外から集める)

買い手が経営陣なら

MBO

買い手が従業員なら

EBO

買収先資産を担保にするなら

LBO

※ MBOの実施にTOBを用いることもある(MBO+TOBの併用)。分類は排他的ではない

ここが得点ライン(3行整理)

・「買付価格・期間・株数を公告」して「市場外」で「不特定多数の株主」から株式を買い集める制度
・目的は経営権の取得・子会社化が中心。友好的と敵対的の2種がある
・MBO(経営陣)・EBO(従業員)・LBO(買収先資産担保)との違いは「誰が・どの資金で買うか」


試験ではこう出る!

TOBは、ITパスポートで「TOBの説明として適切なものはどれか」という直球の定義問題として3回出題されています。

選択肢にはMBO・LBO・株式持合い・IPO・CSRなどの説明が紛れ込みますが、出題のたびに「ひっかけ役」が入れ替わっている点に注目してください。

📊 過去問での出題実績

試験回 出題内容 ひっかけ選択肢
IP H22春
問17
TOBの説明として適切なものを選ぶ問題。 ・株式所有で他企業を支配(M&A全般の説明)
・自社株の時価買入れ(自己株式取得)
・経営陣が自社株を買取り(MBO)
IP H25秋
問26
TOBの説明として適切なものを選ぶ問題。 ・出資や株式持合い(株式持合い)
・経営陣が自社株取得(MBO)
・買収先資産を担保に借入(LBO)
IP H26秋
問8
TOBの説明として適切なものを選ぶ問題。 ・経営陣や幹部が親会社から買取り(MBO)
・株式の新規公開(IPO)
・社会貢献や環境配慮活動(CSR)
IP R5
問28
未公開株式を新規に公開する用語を選ぶ問題。正解はIPO。 ・TOBは不正解選択肢として登場
・LBO、VCもひっかけ
IP R7
問23
コーポレートガバナンス強化に有効な施策を選ぶ組合せ問題。 ・TOBはガバナンス強化策ではないと判断させる
・執行役員制度と社外取締役が正解

📝 出題パターンの傾向

パターン1:「TOBの説明を選べ」(直球型)
H22春・H25秋・H26秋の3回がこの形式。正解の選択肢には必ず「公告」「不特定多数」「市場外」のいずれかが含まれる。MBO(経営陣が自社株を取得)とLBO(買収先資産を担保に借入)がひっかけの常連なので、「誰が」「どこで」買うかに注目すれば正解できる。

パターン2:「TOBは○○ではない」(消去法型)
R5問28やR7問23のように、TOBが不正解選択肢として登場する問題。IPOの問題でTOBを選ばせたり、ガバナンス施策にTOBを混ぜて除外させたりする。TOBが「買収手法」であって「資金調達手法」でも「統治の仕組み」でもないことを押さえていれば即座に排除できる。

選択肢の「入れ替えパターン」を見抜く

TOBの過去問には、出題年度によってひっかけ選択肢が入れ替わるという特徴的なローテーションがあります。

正解の記述はほぼ固定なのに対し、不正解側の組み合わせが毎回変わるため、「TOBの定義だけ暗記した」状態だと消去法が効かず迷います。

ひっかけ選択肢の出題回別マッピング

ひっかけ用語 H22春 H25秋 H26秋
MBO
LBO
IPO
CSR
自己株式取得
株式持合い

▲ MBOだけは全3回で皆勤。TOBとMBOの混同が最も多い証拠

MBOは3回連続でひっかけに使われている唯一の用語です。

「経営陣が自社株を取得して独立する」というMBOの記述を見たら、それはTOBではないと即座に判断してください。

【確認テスト】理解度チェック

Q. 企業戦略におけるTOB(Take Over Bid)を説明したものとして、最も適切なものはどれでしょうか?

  • A. 買付けの価格と期間を公告し、不特定多数の株主から株式を市場外で買い集めて、対象企業の経営支配権を取得する。
  • B. 企業の経営陣が、親会社や株主から自社の株式を買い取り、経営の独立性を確保する。
  • C. 買収しようとする企業の資産やキャッシュフローを担保にして資金を調達し、その資金で当該企業を買収する。

正解と解説を見る

正解:A

解説:
選択肢Aは、IPAの過去問(IP H22春 問17、H25秋 問26、H26秋 問8)で繰り返し正解とされてきたTOBの定義そのものです。「公告」「不特定多数」「市場外」の3要素が揃っている点が判断基準になります。

選択肢BはMBO(Management Buyout)の説明です。買い手が「自社の経営陣」である点がTOBとの決定的な違いです。選択肢CはLBO(Leveraged Buyout)の説明です。「買収先の資産を担保にする」という資金調達方法に特徴があり、買付条件を公告して市場外で株式を集めるTOBとは仕組みが根本的に異なります。

よくある質問(FAQ)

Q. TOBの買付価格はなぜ市場価格より高いことが多いのですか?

株主に「わざわざ市場ではなくTOBに応じる動機」を与えるためです。市場で売れば現在の株価で売却できるのだから、それ以上の価格(プレミアム)を提示しなければ応募は集まりません。この上乗せ分を「買収プレミアム」と呼び、市場価格の20~50%程度が相場とされています。プレミアムが低すぎると応募不足で不成立になり、高すぎると買収コストが膨らむため、価格設定が買付者にとっての最大の判断ポイントです。

Q. TOBは義務ですか?任意ですか?

金融商品取引法により、一定の条件を満たす大量取得には公開買付が義務づけられています。具体的には、市場外取引で株券等の買付後の所有割合が3分の1を超える場合、原則としてTOBを実施しなければなりません。2005年のライブドアによるニッポン放送株取得(時間外取引を利用して公開買付を回避したケース)を契機に規制が強化され、立会外取引も規制対象に含まれるようになりました。

Q. TOBとIPOはどう違いますか?

方向が正反対です。IPO(Initial Public Offering:新規株式公開)は「非公開企業が株式を市場に公開して資金を調達する行為」、TOBは「公開済みの株式を市場外で買い集めて経営権を取得する行為」です。IP R5 問28では、未公開株式を新たに公開する用語としてIPOが正解、TOBが不正解選択肢として出題されました。「IPO=公開する」「TOB=買い集める」と覚えておけば混同しません。

Q. MBOでもTOBを使うことがあるのですか?

あります。MBOは「経営陣が自社を買収する」という買い手の属性を表す概念であり、TOBは「市場外で公告して株式を集める」という買付方法を表す概念です。両者は別の軸なので組み合わせが可能です。例えば、上場企業の経営陣がMBOを実施する際にはTOBの手続きを使って株主から株式を買い集め、上場廃止に至るケースが実務では一般的です。

📚 関連用語ネットワーク

【前提知識】 株式会社の仕組み/株主と経営者の関係(所有と経営の分離)

【関連用語】 コーポレートガバナンスコンプライアンス/MBO/LBO/EBO/IPO

【発展】 ホワイトナイト/ポイズンピル/ゴールデンパラシュート(買収防衛策)