EA(エンタープライズアーキテクチャ)の対象試験と出題頻度

EA(エンタープライズアーキテクチャ)は、基本情報技術者試験(FE)と応用情報技術者試験(AP)の両方で繰り返し出題されている定番テーマです。

とくにFEでは「EAの定義を選べ」「4つの体系の残り1つを答えよ」という形式が何度も再登場しており、パターンを押さえれば確実に得点できる分野といえます。

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対象試験:
基本情報技術者試験(FE)
応用情報技術者試験(AP)
出題頻度:
★★★☆☆
B(標準)

EA(エンタープライズアーキテクチャ)の定義

「4つの体系って何?」「As-Is / To-Be との関係がわからない」──EAの学習で最初につまずくのは、用語自体の輪郭がつかめないことではないでしょうか。

EAは、もともと米国で政府の情報システム改革を効率化するために整備された考え方で、日本でも経済産業省が「業務・システム最適化計画」として導入を推進した経緯があります。

EA(エンタープライズアーキテクチャ)とは、

組織全体の業務とシステムを4つの体系で分析し、全体最適化の観点から見直すフレームワーク

です。

たとえるなら、会社の”設計図面”を「業務・データ・アプリ・技術」の4枚セットで描き、部門ごとにバラバラだった仕組みを1枚の見取り図にまとめ直す作業に近い考え方です。図面がなければどこに無駄があるか分からないように、EAは「まず全体を見える化してから改善する」ことを重視します。

📊 EA(エンタープライズアーキテクチャ)の基本情報

項目 内容
英語名 Enterprise Architecture
提唱・推進元 米国連邦政府(クリンガー・コーエン法)、日本では経済産業省が導入推進
適用対象 政府機関・大企業など組織全体の業務とシステム
試験キーワード 4つの体系(BA・DA・AA・TA)、全体最適化、As-Is / To-Be

解説

EAを構成する4つのアーキテクチャ

EAでは、組織の構造を「ビジネス → データ → アプリケーション → テクノロジ」という4つの階層に分けて整理します。

上位の階層が下位の設計方針を方向づける関係にあり、業務上の要件がデータの持ち方を決め、データの構造がアプリケーションの設計に影響し、アプリケーションの要件が技術基盤の選定につながるという流れになっています。

以下の図は、4つのアーキテクチャの階層関係と各層の代表的な成果物を示したものです。

📊 EAの4層構造

BA(ビジネスアーキテクチャ)
政策・業務体系 | 成果物:業務フロー、機能構成図(DMM)
DA(データアーキテクチャ)
データ体系 | 成果物:E-R図、データ定義表
AA(アプリケーションアーキテクチャ)
適用処理体系 | 成果物:情報システム関連図、システム機能構成図
TA(テクノロジアーキテクチャ)
技術体系 | 成果物:ネットワーク構成図、ハードウェア構成図

上位の層が下位の設計方針を方向づける

試験で最も混同されやすいのが DA(データ)と AA(アプリケーション)の境界です。

DAは「どんなデータをどう構造化するか」に焦点を当て、AAは「そのデータをどのシステム・機能で処理するか」に焦点を当てる点が判別のカギになります。

次の比較表で4つの体系の違いを整理しておきましょう。

📊 EAの4つのアーキテクチャ比較表

略称 正式名称 日本語名 対象範囲 代表的成果物 試験での狙われ方
BA ビジネスアーキテクチャ 政策・業務体系 業務プロセス・組織機能 業務フロー、機能構成図(DMM) 4体系の上位として名称を問われる
DA データアーキテクチャ データ体系 データの構造・定義・関連 E-R図、データ定義表 「残り1つを選べ」で正解になる頻出枠
AA アプリケーションアーキテクチャ 適用処理体系 情報システムの機能・連携 情報システム関連図、システム機能構成図 DAとの取り違えを誘う選択肢が定番
TA テクノロジアーキテクチャ 技術体系 ハードウェア・ネットワーク・OS等 ネットワーク構成図、ハードウェア構成図 成果物を選ばせる問題で出題される

As-Is / To-Be ― EAの進め方

EAでは、まず現状の業務やシステムの姿を「As-Is(アズイズ)」として可視化し、次に目指すべき理想の姿を「To-Be(トゥービー)」として定義します。

この2つを比較してギャップを明らかにし、そのギャップを埋めるための移行計画を策定するのが基本的な進め方です。

実務では、中小SIerの現場で「EA」という言葉を直接使う場面はそれほど多くありません。

しかし「As-Is / To-Be」という考え方自体は、要件定義やRFP(提案依頼書)の作成で日常的に登場しており、EAの概念は名前以上に身近な存在です。次の図でフローの全体像を確認してみてください。

📊 EAのAs-Is / To-Be アプローチ

As-Is
現状の可視化
To-Be
あるべき姿の定義
ギャップ分析
差分の特定
移行計画
実行ロードマップの策定

現状と理想のギャップを埋めていくのがEAの基本アプローチ

📝 ポイント整理

・EAは組織の業務とシステムを BA → DA → AA → TA の4層で整理する手法
・上位のアーキテクチャが下位の設計方針を決める階層構造になっている
・As-Is(現状)と To-Be(理想)のギャップを特定し、移行計画を立てて改善を進める

試験ではこう出る!

出題パターン分析

EAに関する過去問を分析すると、出題パターンは大きく3つに分類できます。

筆者自身も受験勉強中、パターン1(定義選択型)の出題頻度の高さに気づいてからは、「4つの体系」と「全体最適」の2ワードを見た瞬間にEAだと即答できるようにトレーニングしていました。

📝 IPA試験での出題パターン

パターン1:「EAの定義を選べ」(最頻出)
UML・E-R図・DFD・EAの説明が4択で並び、EAの正しい定義を選ぶ形式。FE H21春・FE H28秋・AP H24秋・AP H27春・AP R4秋などで繰り返し登場。キーワード「4つの体系」「全体最適化」が決め手になる。

 

パターン2:「4つの体系の残り1つを答えよ」
ビジネス・テクノロジ・アプリケーションの3つが提示され、残る1つ(=データアーキテクチャ)を選ぶ形式。FE H23特別・FE H25秋・FE H28春・AP R3春で出題。ひっかけは「システムアーキテクチャ」「ソフトウェアアーキテクチャ」。

 

パターン3:「特定のアーキテクチャの説明/成果物を選べ」
アプリケーションアーキテクチャまたはテクノロジアーキテクチャの説明文・成果物を選ばせる形式。FE H22秋・FE H27秋・FE H31春・AP H21秋で出題。DAとAAの取り違えが最も多い失点パターン。

出題実績一覧

FE・APを合わせると13回の出題が確認されており、ストラテジ系の中でも安定して問われるテーマです。

過去の出題実績を確認する(全13回)

FE H21春 問61:EAを説明したものを選ぶ(正解:ウ)

FE H22秋 問61:テクノロジアーキテクチャの成果物を選ぶ(正解:エ)

FE H23特別 問61:4つの分類体系に含まれるアーキテクチャを選ぶ(正解:ウ)

FE H25秋 問62:4つの分類体系に含まれるアーキテクチャを選ぶ(正解:ウ)

FE H27秋 問61:アプリケーションアーキテクチャの説明を選ぶ(正解:イ)

FE H28春 問62:4つの分類体系に含まれるアーキテクチャを選ぶ(正解:ウ)

FE H28秋 問61:EAを説明したものを選ぶ(正解:ウ)

FE H31春 問61:アプリケーションアーキテクチャの説明を選ぶ(正解:イ)

AP H21秋 問61:アプリケーションアーキテクチャの説明を選ぶ(正解:イ)

AP H24秋 問61:EAを説明したものを選ぶ(正解:ウ)

AP H27春 問62:EAを説明したものを選ぶ(正解:ウ)

AP R3春 問61:4つの分類体系に含まれるアーキテクチャを選ぶ(正解:ウ)

AP R4秋 問63:EAを説明したものを選ぶ(正解:ウ)

受験生が間違えやすい「EAとUML・E-R図・DFDの区別」

パターン1の過去問を並べると、誤答選択肢はほぼ毎回同じ顔ぶれ。

UML、E-R図、DFDの3つです。

これらはすべて「特定の目的のためのモデリング技法」であり、組織全体を4つの体系で俯瞰するEAとはスコープが根本的に異なります。

判別基準はシンプルで、「4つの体系で全体最適」と書かれていればEA、「特定の図や記法の説明」であればEAではない、という切り分けで対応できます。

なお、共通フレーム(SLCP)の説明が選択肢に紛れるケースもありますが、共通フレームは「開発ライフサイクルの工程定義」であり、EAの「組織構造の4体系整理」とは対象が異なる点を意識しておくと安心です。

📊 ひっかけ選択肢の正体マッピング

選択肢の記述キーワード 正体(用語名) 本来の用途 EAとの判別ポイント
オブジェクト指向、クラス図、ユースケース図 UML システムの構造・振る舞いを図式化する統一モデリング言語 個別の「記法」であり、組織全体の最適化を目的としない
エンティティ、リレーションシップ、属性 E-R図 データベースの論理構造を実体と関連で表現する図 データ設計の「個別技法」であり、4つの体系という概念がない
データフロー、プロセス、ファイル、データ源泉/データ吸収 DFD データの流れを4つの基本要素で抽象化して表現する図 業務分析の「個別技法」であり、組織横断の全体最適を扱わない
4つの体系、全体最適化、ビジネス・データ・アプリケーション・テクノロジ EA(正解) 組織全体の業務・システムを4体系で分析し最適化するフレームワーク 「4つの体系」と「全体最適」が揃えばEA

【確認テスト】EA(エンタープライズアーキテクチャ)の理解度チェック

Q. エンタープライズアーキテクチャ(EA)の説明として、最も適切なものはどれか。

  • A. オブジェクト指向設計を支援する様々な手法を統一して標準化したものであり、クラス図やユースケース図によってシステムの分析や設計を行う技法のこと。
  • B. 企業のビジネスプロセスを、データフロー・プロセス・ファイル・データ源泉/データ吸収の4つの基本要素で抽象化して表現する技法のこと。
  • C. 各業務と情報システムを、ビジネス・データ・アプリケーション・テクノロジの4つの体系で分析し、全体最適化の観点から見直す技法のこと。
正解と解説を見る

正解:C

解説:
EAの核心は「ビジネス・データ・アプリケーション・テクノロジの4つの体系」と「全体最適化」の2つのキーワードです。選択肢の中でこの2つが揃っているのはCだけであり、これがEAの正しい説明に該当します。

Aが不正解の理由:これはUML(Unified Modeling Language)の説明です。クラス図やユースケース図はシステムの構造と振る舞いを表現する個別のモデリング言語であり、組織全体を4つの体系で俯瞰するEAとは目的が異なります。

Bが不正解の理由:これはDFD(Data Flow Diagram)の説明です。データの流れを4つの基本要素で表現する図式手法であり、「4つの基本要素」という記述がEAの「4つの体系」と紛らわしいものの、対象が組織全体の構造ではなくデータフローの可視化に限定される点で区別できます。

EA(エンタープライズアーキテクチャ)の関連用語ネットワーク

EAを起点に、前提として押さえておきたい知識、横に広げたい関連用語、さらに深掘りしたい発展テーマを整理しました。学習の順序を組み立てる際の参考にしてください。

📊 関連用語マップ

カテゴリ 関連用語
前提知識 業務プロセス、E-R図、DFD、UML(誤答選択肢として頻出するため、各技法の定義を先に押さえておくとEAとの区別がスムーズ)
関連用語 ERP(経営資源の統合管理。EAが「設計図」ならERPは「統合管理ソフト」)、ITガバナンス(IT投資・戦略の方向づけ。EAは構造設計、ITガバナンスは意思決定の枠組み)
発展 企画プロセス(個別のシステム化構想・計画。EAの全体最適設計を受けて具体化する工程)、TOGAF(国際的なEAフレームワーク規格)