ブルーオーシャン戦略の対象試験と出題頻度
「ブルーオーシャン戦略ってレッドオーシャンの反対?」「ニッチ戦略とどう違うの?」
経営戦略の用語を学び始めると、似たような戦略名が並んで混乱しがちではないでしょうか。
ブルーオーシャン戦略はITパスポート・基本情報技術者・応用情報技術者の3区分すべてで出題実績がある用語です。
午前の4択問題では「定義を正しく選べ」という形式、AP午後では企業事例から戦略名を特定する形式で問われています。
頻出度はB(覚えておくと有利)ですが、レッドオーシャンやニッチ戦略との区別が問われるため、正確な理解が得点に直結します。
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ITパスポート(IP)
基本情報技術者(FE)
応用情報技術者(AP)
★★★☆☆
B(標準:覚えておくと有利)
ブルーオーシャン戦略の定義
IT業界で働いていると、既存のSaaSツールがひしめく激戦区の中で「他社がまだ解決していない課題を見つけて製品化しよう」という議論に何度も遭遇します。
新規事業の企画会議で「それってブルーオーシャンなの?」と問いかけられる場面も珍しくありません。
この「ブルーオーシャン」という言葉は、試験にも実務にも頻繁に登場する重要な経営戦略用語です。
ブルーオーシャン戦略は、フランスの経営大学院INSEADの教授であるW・チャン・キムとレネ・モボルニュが2005年に提唱した経営戦略理論に由来する概念です。
ブルーオーシャン戦略とは、
「これまでにない新しい価値を提供することで、競争が存在しない未開拓の市場(ブルーオーシャン)を創造し、高い成長と利益を同時に実現する経営戦略」
です。
飲食店に置き換えると、ラーメン激戦区で他店と味やトッピングで競い合う代わりに、「ラーメンでもカレーでもない、まったく新しいジャンルの料理を生み出して専門店を開く」ようなもの。
既存の土俵で戦うのではなく、そもそも新しい土俵を作ってしまうのがブルーオーシャン戦略の発想です。
競争相手がいない市場を自ら生み出すため、価格競争に巻き込まれにくく、先行者としての利益を享受しやすくなります。
📊 ブルーオーシャン戦略の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 英語名 | Blue Ocean Strategy |
| 提唱者 | W・チャン・キム & レネ・モボルニュ(INSEAD教授) |
| 分類 | ストラテジ系 > 経営戦略マネジメント > 経営戦略手法 |
| 核心概念 | バリューイノベーション(低コストと高付加価値の同時実現) |
| 対義語 | レッドオーシャン戦略(既存市場での競争戦略) |
解説
レッドオーシャンとブルーオーシャン ─ 2つの海の違い
ブルーオーシャン戦略を理解するには、まず「レッドオーシャン」との対比を押さえる必要があります。
レッドオーシャンとは、すでに多数の企業がひしめき合い、激しい競争が繰り広げられている既存市場のこと。
価格の引き下げ合戦やスペック競争が起こり、市場が「血の海(Red Ocean)」のように赤く染まるさまを比喩した表現です。競合他社と同じ土俵で限られたパイを奪い合うため、利益率は低下しやすくなります。
一方のブルーオーシャンは、競争相手がまだ存在しない未開拓の市場空間を指します。
穏やかで広大な「青い海」のように、争いのない市場で独自の価値を提供するため、高い収益性を確保しやすい構造となっている。
ブルーオーシャン戦略の本質は「競争に勝つ方法」を考えるのではなく、「競争そのものを無意味にする新市場を創り出す」という発想の転換にあります。
バリューイノベーション ─ 低コストと高付加価値の両立
ブルーオーシャン戦略の理論的支柱となるのが「バリューイノベーション(価値革新)」という考え方です。
マイケル・ポーターの競争戦略では、企業は「コストリーダーシップ(低コスト追求)」か「差別化(高付加価値追求)」のどちらかを選ぶべきだとされています。
両方を同時に追うと中途半端になり、どちらの優位性も得られない。これがポーターの「スタック・イン・ザ・ミドル」の警告でした。
しかしバリューイノベーションは、この二者択一を否定します。
不要な要素を大胆に削ぎ落としてコストを下げると同時に、顧客が真に求める要素を際立たせて価値を引き上げる。
「コスト削減」と「買い手にとっての価値向上」を同時に達成することで、競合がいない新しい市場を生み出すのがバリューイノベーションの核心です。
企業が持つ技術やノウハウといったコアコンピタンスを活かしながら、従来の業界常識にとらわれない価値の再定義を行う点が特徴といえます。
戦略キャンバスと4つのアクション
ブルーオーシャン戦略では、現状の競争構造を可視化する「戦略キャンバス」と、新たな価値曲線を描くための「4つのアクション(ERRCグリッド)」が実践ツールとして用いられます。
4つのアクションとは、業界が当然としている要素を「取り除く(Eliminate)」「減らす(Reduce)」「増やす(Raise)」「付け加える(Create)」という4つの問いかけで再構成するフレームワーク。
この流れを図で確認してみましょう。
📊 4つのアクション(ERRCグリッド)── 10分カット店の例
Eliminate
例:待ち時間
予約・シャンプー
Reduce
例:メニュー数
内装の豪華さ
Raise
例:回転率
立地の利便性
Create
例:エアウォッシャー
(切った髪を吸引)
業界の常識を4つの問いで再構成し、新しい価値曲線を描く / モバイルでは縦に折り返して表示
たとえば「10分1000円カット」の事業モデルでは、従来の理髪店が当然としていた予約制度・シャンプー・マッサージを「取り除き」、メニューの選択肢や内装のグレードを「減らす」ことで大幅にコストを圧縮。
その一方で回転率や駅前立地の利便性を「増やし」、カット後の髪を吸い取るエアウォッシャーという新装置を「付け加えた」。
このように4つのアクションを通じて、従来の理髪店とも美容院とも異なるブルーオーシャンを生み出した好例です。
同様の構造は任天堂Wiiにも見られます。
ゲーム専用機の高精細グラフィックス競争(レッドオーシャン)を避け、モーションコントロールという新しい操作体験を「付け加える」ことで、従来ゲームをしなかった高齢者やファミリー層という未開拓の顧客を取り込みました。
📝 解説のポイント整理
・レッドオーシャン=既存市場で競合と戦う、ブルーオーシャン=新市場を創造して競争を回避する
・バリューイノベーション=低コストと高付加価値の同時実現。ポーターの「二者択一」を超える発想
・4つのアクション(ERRC)=取り除く・減らす・増やす・付け加えるで新たな価値曲線を描く
・戦略キャンバスで現状の競争要因を可視化し、ERRCグリッドで再構成する流れが基本
試験ではこう出る!
出題パターン分析
ブルーオーシャン戦略のIPA試験での出題は、大きく2つのパターンに分類できます。
📝 IPA試験での出題パターン
パターン1:「定義を選べ」型(午前・最頻出)
ブルーオーシャン(戦略)の説明として正しいものを4択から選ぶ問題。「競争が存在しない未知の市場」「新しい価値を提供して新たな市場を生み出す」といったキーフレーズを含む選択肢が正解になる。FE R6公開問題 問17、IP H27秋 問14がこのパターンに該当。
パターン2:「事例から戦略名を特定せよ」型(午後)
長文の企業事例を読み、その企業が採用している戦略をコストリーダーシップ・市場開拓・フォロワー・ブルーオーシャンなどの選択肢から選ぶ。「競合がない市場を切り開く」「独自サービスで新市場を創造した」という記述がブルーオーシャン戦略の判定根拠となる。AP R5春 午後問2がこのパターン。
いずれのパターンでも「未開拓の市場」「競争のない新市場を創造」というキーワードが正解の決め手となっている。
確認済みの出題実績を以下にまとめます。
📊 ブルーオーシャン戦略の出題実績
| 試験回 | 出題内容 | 問われたポイント |
|---|---|---|
| FE R6公開 問17 | ブルーオーシャンの説明として適切なものを選ぶ | 定義の正確な理解(正解:ア「競争が存在していない未知の市場」) |
| IP H27秋 問14 | ブルーオーシャン戦略の説明として適切なものを選ぶ | 定義の正確な理解(正解:ア「新しい価値を提供し、競争のない新たな市場を生み出す」) |
| AP R5春 午後問2 | Q社の経営戦略を事例から特定する | 企業事例の読解力(正解:エ「ブルーオーシャン戦略」) |
ひっかけポイントと対策
過去問の不正解選択肢には、ブルーオーシャン戦略と紛らわしい用語の定義が並びます。
特に注意すべきひっかけパターンは次のとおりです。
FE R6公開問題 問17では、選択肢イに「コモディティ化が進んだ既存の市場」という記述がありました。
これはレッドオーシャンの説明であり、「既存市場」というキーワードでブルーオーシャンと区別できます。
同じ問題の選択肢ウ・エには「新事業のアイディアを実際のビジネスに育成するまでの期間」「製品開発したものを市場化する過程に横たわる障壁」というタイムトゥマーケットや死の谷の説明も混ざっていました。
IP H27秋 問14では、「売れ筋商品以外の商品も幅広く取り扱う」というロングテール戦略の記述や、「コスト削減によって競合他社に対する優位性を築く」というコストリーダーシップ戦略の記述がひっかけ選択肢として登場しています。
ブルーオーシャン戦略は低コスト「だけ」を追求するのではなく、コスト削減と価値向上の両立(バリューイノベーション)を目指す点を意識しておけば、コストリーダーシップとの混同を避けられます。
📝 試験区分別の対策方針
・ITパスポート:「競争のない新市場を創造する戦略」という定義の暗記が最優先。ロングテール・差別化・コストリーダーシップとの区別を確認
・基本情報技術者(FE):定義に加え、レッドオーシャンとの対比(既存市場 vs 未開拓市場)を押さえる。「死の谷」「タイムトゥマーケット」との混同に注意
・応用情報技術者(AP):午後の長文では「競合のない市場を切り開く」「新しい価値を提供」というキーフレーズを拾い、戦略名を判定する読解力が必要
受験生が混同しやすい「ブルーオーシャン戦略」と「ニッチ戦略」の違い
筆者自身、受験勉強中にニッチ戦略とブルーオーシャン戦略を「どちらも競争を避ける戦略」として混同していた時期があります。
決定的な違いに気づいたのは、ニッチ戦略が「既存市場の中のすき間に入り込む」のに対し、ブルーオーシャン戦略は「市場そのものを新しく作り出す」という点でした。
この区別を意識してからは二度と間違えなくなったので、ここで丁寧に整理しておきます。
ニッチ戦略はコトラーの競争地位戦略における「ニッチャー」の基本戦略であり、大手が手を出さない小さな専門領域に経営資源を集中して独自の地位を築くアプローチです。
あくまで「既存市場」の中に存在する小さなすき間を狙う点で、「まだ存在しない市場を創造する」ブルーオーシャン戦略とは根本的に異なります。
以下の比較表で、試験で選択肢として並びやすい戦略との違いを整理しましょう。
📊 ブルーオーシャン戦略と類似戦略の比較
| 比較軸 | ブルーオーシャン戦略 | レッドオーシャン戦略 | ニッチ戦略(ニッチャー) | コストリーダーシップ戦略 |
|---|---|---|---|---|
| 市場の状態 | 未開拓の新市場 | 競争が激化した既存市場 | 既存市場の中の小さなすき間 | 既存市場全体 |
| 競争の考え方 | 競争を無意味にする | 競争に勝つ | 競争を避ける(棲み分け) | コストで競争に勝つ |
| 価値提供 | 低コスト+高付加価値の両立 | コスト or 差別化の二者択一 | 特定領域への集中・専門特化 | 業界最低コストの追求 |
| 提唱者 | キム & モボルニュ | (ブルーオーシャン戦略の対概念) | コトラー(競争地位戦略) | ポーター(3つの基本戦略) |
| 試験での見分けキーワード | 「新市場を創造」「未開拓」「競争のない」 | 「既存市場」「コモディティ化」「血の海」 | 「すき間市場」「専門特化」「小規模」 | 「低コスト」「規模の経済」「価格優位」 |
試験で判別するコツは、問題文中に「新しい市場を創り出す」「これまでにない価値」という記述があればブルーオーシャン戦略、「既存市場の小さな領域に特化」「専門分野に集中」という記述があればニッチ戦略、と機械的に振り分けることです。
AP R5春 午後問2でも「競合がない市場を切り開く経営戦略」という表現がブルーオーシャン戦略の判定根拠になっており、この読み分けのパターンは実際の試験で有効に機能します。
【確認テスト】ブルーオーシャン戦略の理解度チェック
ここまでの内容を踏まえて、1問チャレンジしてみましょう。
Q. マーケティング戦略におけるブルーオーシャン戦略の説明として、最も適切なものはどれか。
- A. 業界の競合他社を上回る低コストを実現することで、市場全体における価格優位性を確立する戦略。
- B. これまでにない新しい価値を提供することで、競争が存在しない未開拓の市場を創造し、高い成長と利益を目指す戦略。
- C. 大手が手を出さない小さな専門市場に経営資源を集中し、限定された領域で独自の地位を築く戦略。
正解と解説を見る
正解:B
解説:
Bはブルーオーシャン戦略の定義そのものです。「競争のない未開拓市場」「新しい価値の提供」が判別キーワードであり、FE R6公開問題 問17やIP H27秋 問14の正解選択肢と同じ趣旨の記述となっています。
Aが不正解の理由:これはコストリーダーシップ戦略(ポーターの3つの基本戦略の一つ)の説明です。ブルーオーシャン戦略は低コスト「だけ」を追求するのではなく、低コストと高付加価値の両立(バリューイノベーション)を目指す点が異なります。
Cが不正解の理由:これはニッチ戦略(コトラーの競争地位戦略におけるニッチャーの基本戦略)の説明です。ニッチ戦略は「既存市場のすき間」に特化するのに対し、ブルーオーシャン戦略は「まだ存在しない市場を創り出す」点が決定的に異なります。
よくある質問(FAQ)
Q. ブルーオーシャン戦略は誰が提唱したのか?
フランスの経営大学院INSEAD(欧州経営大学院)の教授であるW・チャン・キム(韓国出身)とレネ・モボルニュ(フランス出身)の2人が提唱しました。2005年に刊行された共著『ブルー・オーシャン戦略(Blue Ocean Strategy)』が世界的ベストセラーとなり、経営戦略の基本概念として定着しています。IPA試験では提唱者名が直接問われることは少ないものの、AP午後の長文中に登場する可能性があるため、名前を知っておくと安心です。
Q. バリューイノベーションとは何か?
バリューイノベーション(価値革新)とは、コスト削減と買い手にとっての価値向上を同時に実現する考え方です。従来の競争戦略では「低コスト」か「差別化(高付加価値)」のどちらかを選ぶべきとされていましたが、バリューイノベーションはその前提を覆し、不要なコストを削りながら新しい価値を生み出すことで両方を達成します。ブルーオーシャン戦略の理論的な柱であり、4つのアクション(取り除く・減らす・増やす・付け加える)を通じて具体化されます。
Q. ブルーオーシャン戦略は実務でどのように使われるのか?
実際のプロダクト開発現場では、4つのアクション(取り除く・減らす・増やす・付け加える)を付箋に書いてホワイトボードに貼り出し、チームでブレインストーミングを行うケースがあります。「この機能は業界では当然とされているが、本当にユーザーは求めているのか?」と問いかけることで、不要な機能を削ぎ落とし、代わりに競合が提供していない新機能にリソースを集中する判断材料になるのです。新規事業の企画段階やサービスの差別化ポイントを検討する場面で、戦略キャンバスとERRCグリッドはフレームワークとして日常的に活用されています。
Q. ブルーオーシャンがレッドオーシャンに戻ってしまうことはあるか?
あります。ブルーオーシャンを開拓しても、成功が知れ渡ると模倣企業が次々と参入し、やがて競争が激化してレッドオーシャンへ変質していきます。たとえば「10分カット」のビジネスモデルは登場当初はブルーオーシャンでしたが、多数のチェーンが参入した結果、現在は立地や回転率をめぐる競争が起きている状態です。そのため、ブルーオーシャン戦略は一度実行して終わりではなく、市場環境の変化に応じて繰り返しバリューイノベーションを起こし続ける姿勢が求められます。
ブルーオーシャン戦略の関連用語ネットワーク
ブルーオーシャン戦略を起点に、次に学ぶべき経営戦略用語を3つのカテゴリで整理しました。
📊 関連用語マップ
| カテゴリ | 関連用語 |
|---|---|
| 前提知識 | 3C分析(市場・競合・自社を整理する基本フレームワーク)、SWOT分析(強み・弱み・機会・脅威の分析手法) |
| 関連用語 | バリューチェーン(企業活動の価値連鎖を分析)、PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)(事業の資源配分を決定する手法) |
| 発展 | アンゾフの成長マトリクス(市場浸透・新市場開拓・新製品開発・多角化の4象限で成長戦略を整理) |