プロジェクトマネジメントを勉強していると、「調達マネジメントって外注の管理のこと?スコープやコストとどう違うの?」と混乱しがちです。この記事では、調達マネジメントの全体像と試験で問われるポイントを整理します。

対象試験と出題頻度

調達マネジメントは、基本情報技術者・応用情報技術者で出題されるテーマです。

PMBOKの10の知識エリアの一つとして、RFI・RFPの流れや契約タイプに関する問題で繰り返し登場します。

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対象試験:
基本情報技術者
応用情報技術者
出題頻度:
★★★☆☆
ランクB(標準)覚えておくと有利

用語の定義

調達マネジメント(Procurement Management)とは、一言で言うと

 「プロジェクトに必要な製品・サービスを外部から購買・契約し、その過程と履行を管理する活動

のことです。

イメージとしては、結婚式の会場・料理・カメラマンの手配です。

結婚式を自分たちだけで全部やるのは現実的ではありません。

会場は式場に頼み、料理はケータリング業者に依頼し、カメラマンは外注します。このとき「どの業者に何を頼むか」「見積りを比較してどう選ぶか」「契約条件は何か」「納品物の品質は大丈夫か」を一括して管理する。

これが調達マネジメントの役割です。

📊 調達マネジメントの基本情報

項目 内容
英語名 Procurement Management
所属する体系 PMBOK 第6版 10知識エリアの1つ
プロセス数 4プロセス(計画・実行・コントロール・終結)
主な関連文書 RFI(情報提供依頼書)、RFP(提案依頼書)、契約書、SOW(作業範囲記述書)

解説

プロジェクトでは、すべてのリソースを自社でまかなえるケースのほうが珍しく、ソフトウェア開発の一部やハードウェア、専門コンサルティングなどを外部に委託する場面が頻繁に発生します。

ところが「とりあえず安いベンダに丸投げ」では、納品物の品質不良や納期遅延、契約トラブルに直結します。

そこで、発注前の計画段階から契約終了までを体系的に管理する枠組みとして、PMBOKの中で調達マネジメントが定義されています。

4つのプロセス

調達マネジメントは以下の4つのプロセスで構成されます。

それぞれの役割を正確に区別することが理解の土台になります。

プロセス プロセス群 やること
調達マネジメント計画 計画 内外製分析(自社で作るか外注するか)、契約タイプの選定、調達文書(SOW・評価基準)の作成
調達実行 実行 供給者候補への提案依頼、提案の評価・選定、契約の締結
調達コントロール 監視・コントロール 納品物の検収、契約条件の履行状況の監視、変更管理
調達終結 終結 全納品物の最終受入確認、調達監査、教訓の記録

調達プロセスの全体フロー

実務・試験の両面で頻出するのが「RFI → RFP → 提案評価 → 選定 → 契約」の一連の流れです。

以下のフロー図で全体像を押さえてください。

調達プロセスの流れ

① 評価基準の決定
提案を受け取る前に判定基準を固める
② RFI(情報提供依頼書)の発行
候補ベンダの技術力・実績を収集する
③ RFP(提案依頼書)の発行
要件・調達条件を示し、具体的な提案を求める
④ 提案評価
①で決めた基準に従い提案書を評価する
⑤ 供給者の選定
評価結果を踏まえて発注先を決定する
⑥ 契約の締結
条件を合意し、正式に契約を結ぶ

※ 評価基準を最初に決めるのは、提案内容に判断基準が左右されるのを防ぐため

契約タイプの分類

調達マネジメント計画では「どの契約タイプで発注するか」を決定します。

大きく分けて定額契約・実費償還契約・タイム&マテリアル契約の3種類があります。

契約タイプ 概要 リスク負担
定額契約(FFP) あらかじめ決まった価格で成果物を納品する。要件が明確な場合に適する 供給者側が大きい
実費償還契約(CPFF等) 実際にかかったコスト+報酬を支払う。要件が不確定な場合に適する 発注者側が大きい
タイム&マテリアル(T&M) 時間単価×稼働時間+材料費で支払う。スコープが未確定の短期作業向き 双方にある

他の知識エリアとの違い

調達マネジメントは「外部との売買・契約」に特化している点が、他の知識エリアと明確に異なります。

知識エリア 管理対象 見分けキーワード
調達マネジメント 外部からの購買・契約の管理 RFI、RFP、契約、ベンダ選定
スコープマネジメント 作業範囲の定義と管理 WBS、スコープ記述書
コストマネジメント 予算の見積り・配分・実績管理 EVM、BAC、コストベースライン
ステークホルダマネジメント 利害関係者の特定と期待値調整 ステークホルダ登録簿、関与度

では、この用語が試験でどのように出題されるか見ていきましょう。

💡 調達マネジメントの核心を3行で

・外部からの購買・契約を「計画→実行→コントロール→終結」の4段階で管理する
・RFI→RFP→提案評価→選定→契約の順序が鉄板の出題テーマ
・契約タイプは「定額」「実費償還」「T&M」の3種類でリスク負担の所在が異なる


試験ではこう出る!

調達マネジメントは、FE・APの午前問題で「調達プロセスの順序」と「RFI・RFPの定義」を中心に繰り返し出題されています。

出題パターンは大きく3つに分かれます。

📊 過去問での出題実績

試験回 出題内容 問われたポイント
FE H22春
問67
「提案評価方法の決定」に始まる調達プロセスの順序を問う問題。 ・正解は「調達先の選定」
・RFP発行→提案評価→選定→実施の順を正確に把握しているかが鍵
AP H23秋
午前 問65
上記FE H22春問67とほぼ同一構成の問題(選択肢に「契約締結」を追加)。 ・FEとAPで同じ論点が流用される典型例
・正解は同じく「調達先の選定」
AP H27秋
午前 問65
RFIの説明として正しいものを選ぶ問題。 ・「システム化の目的や業務内容を示し、情報の提供を依頼」が正解
・RFP・RFC・契約締結依頼の説明がひっかけ
AP R5春
午前 問65
RFIの説明を選ぶ問題(H27秋問65の再出題)。 ・同じ問題が複数回にわたって出題される高頻出テーマ

📝 IPA試験での出題パターン

パターン1:「調達プロセスの順序を並べよ」
「評価基準の決定→RFP発行→提案評価→選定→契約」の並び替え問題。空欄に入る工程を選ぶ形式で、FE・AP双方で出題実績がある。ここだけは確実に押さえてください。

 

パターン2:「RFI / RFPの説明を選べ」
RFI(情報提供依頼書)とRFP(提案依頼書)の定義を4つの選択肢から選ぶ形式。RFIは「情報の提供を依頼」、RFPは「提案書の提出を依頼」がそれぞれのキーワード。RFC(変更依頼書)が紛れ込むのが定番のひっかけ。

 

パターン3:「RFP提示時の留意点を選べ」
「要件定義を機能要件・非機能要件にまとめて提示する」が正解パターン。「プログラム仕様書を添付する」「全ベンダに提示する」はいずれも不適切。

 

試験ではここまででOKです。契約タイプの細かい分類(CPIF、CPAF等)まで深追いする必要はありません。


【確認テスト】理解度チェック

ここまでの内容を理解できたか、簡単なクイズで確認してみましょう。


Q. 「提案評価方法の決定」に始まる調達プロセスにおいて、「RFP発行 → 提案評価 → ? → 契約締結」の「?」に入るものとして、最も適切なものはどれでしょうか?

  • A. RFI(情報提供依頼書)の発行。供給者候補に対して技術力や実績の情報提供を依頼する工程である。
  • B. 調達先の選定。提案評価の結果を踏まえて、発注先となる供給者を決定する工程である。
  • C. 調達コントロール。契約履行中の納品物の品質や進捗を監視する工程である。

正解と解説を見る

正解:B

解説:
調達プロセスの正しい順序は「評価基準の決定→RFP発行→提案評価→調達先の選定→契約締結」です。提案評価が終わった後、その結果に基づいて発注先を決定するのが「選定」の工程にあたります。

選択肢AのRFI発行は、RFPよりも前の段階で候補ベンダの情報を収集する工程です。RFP発行後のタイミングで登場する工程ではありません。選択肢Cの調達コントロールは、契約締結後に納品物や契約履行を監視する活動であり、契約締結前に行う工程ではありません。


よくある質問(FAQ)

Q. RFIを出さずにいきなりRFPを出すことはありますか?

あります。既に取引実績のあるベンダが候補として固まっている場合や、要件が明確で情報収集が不要な場合は、RFIを省略してRFPから始めるケースが実務では珍しくありません。ただし、IPA試験では「RFI→RFP」の正規の流れが前提で出題されるため、省略パターンを気にする必要はありません。

Q. 「内外製分析」とは何ですか?

内外製分析(Make-or-Buy Analysis)は、プロジェクトで必要な成果物や作業を自社で行う(Make)か、外部から購入する(Buy)かを比較検討する分析手法です。コスト・品質・スケジュール・リスクなどの観点で評価し、外注が有利と判断された項目だけが調達の対象になります。調達マネジメント計画の最初の意思決定ポイントとなる活動です。

Q. SOW(作業範囲記述書)とRFPはどう違いますか?

SOW(Statement of Work)は「発注する作業の範囲・成果物・スケジュール」を具体的に記述した文書です。RFP(提案依頼書)はベンダに対して「こういう要件でシステムを提案してください」と依頼する文書です。SOWはRFPの一部として添付されることが多く、RFPが「依頼の全体パッケージ」、SOWが「作業の詳細仕様」という関係です。

Q. 定額契約と実費償還契約、実務ではどちらが多いですか?

日本のSI業界ではウォーターフォール型の受託開発が主流のため、成果物の対価を事前に固定する定額契約(一括請負)が多く使われています。一方、アジャイル開発や要件が流動的なR&D案件では、稼働時間ベースのT&M契約や実費償還契約が採用されることもあります。契約タイプの選択は「要件の確度」と「リスクをどちらが負うか」のバランスで決まります。