情報処理試験を勉強していると、「企画プロセスのシステム化構想とシステム化計画って何が違うの?」「要件定義との境界線がわからない」と混乱しがちです。この記事では、企画プロセスの2つのアクティビティの役割と境界を、日常の例え話で整理します。

対象試験と出題頻度

企画プロセスは、基本情報技術者(FE)・応用情報技術者(AP)の科目A(午前)で出題されるテーマです。

共通フレームにおけるプロセスの区別を問う定番問題として、「企画プロセスで実施すべき作業はどれか」という形式が繰り返し出題されています。

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対象試験:
基本情報技術者
応用情報技術者
出題頻度:
★★★☆☆
ランクB(標準)覚えておくと有利

用語の定義

企画プロセス(Planning Process)とは、一言で言うと

 「経営目標を達成するために、どんなシステムが必要かを構想し、実現に向けた計画を立てる上流工程

のことです。

イメージとしては、家を建てる前の「理想の暮らし方を描くフェーズ」と「予算・間取りを決めるフェーズ」です。

「こんな暮らしがしたい。広いリビングがほしい」と理想を描くのがシステム化構想の立案、「予算は○○万円、3LDK、工期は半年」と具体的に決めるのがシステム化計画の立案にあたります。

設計図を引いたり壁紙を選んだりする段階(要件定義や開発)よりも、もっと手前の話です。

📊 企画プロセスの基本情報

項目 内容
英語名 Planning Process
定義元 共通フレーム2013(SLCP-JCF2013)
構成アクティビティ ①システム化構想の立案 ②システム化計画の立案
位置づけ 要件定義プロセスの前段階(超上流工程)
主な関係者 経営層、情報システム部門、事業部門

解説

共通フレーム2013(IPA策定のソフトウェアライフサイクルプロセスの日本語版ガイドライン)では、テクニカルプロセスを「企画→要件定義→開発→運用→保守」の順で定義しています。

企画プロセスは、この流れの最も上流に位置し、「そもそもシステムを作るべきか」「何のために作るのか」を経営視点で固める役割を担います。

共通フレームにおける全体の流れ

まず企画プロセスがどの位置にあるのかを全体像で確認します。

共通フレーム2013 テクニカルプロセスの全体像

企画
構想 → 計画
◀ ここ
要件定義
開発
運用
保守

▲ 企画プロセスは最上流に位置し、後続の全プロセスの方向性を決定する

システム化構想の立案

企画プロセスの前半にあたるアクティビティです。

経営上のニーズや課題を確認し、それを解決するための「新しい業務の全体像」と「システム化の方向性」をまとめます。成果物は構想レベルの文書であり、詳細な設計には踏み込みません。

システム化構想の立案 ─ 7つのタスク

No. タスク名 具体的な内容
1 経営上のニーズ・課題の確認 経営目標と現状のギャップを把握する
2 事業環境・業務環境の調査分析 市場動向・競合状況・法規制などを調べる
3 現行業務・システムの調査分析 既存の業務フローやシステムの問題点を洗い出す
4 情報技術動向の調査分析 AI・クラウドなど活用できる技術トレンドを把握する
5 対象となる業務の明確化 どの業務をシステム化するか範囲を絞り込む
6 業務の新全体像の作成 理想の業務フローを「全体像」としてまとめる
7 対象の選定と投資目標の策定 優先度を決め、投資対効果の目標値を設定する

システム化計画の立案

構想を受けて、実現性を考慮した具体的な計画に落とし込むアクティビティです。

開発スケジュール、費用対効果、推進体制などを明確にし、利害関係者の合意を得ることがゴールになります。

システム化計画の立案 ─ 主なタスク

No. タスク名 具体的な内容
1 業務モデルの作成 システム化の範囲を反映した新業務モデルを作る
2 全体開発スケジュールの作成 マイルストーンを含む開発のタイムラインを引く
3 プロジェクト目標の設定 品質・コスト・納期(QCD)の目標を決める
4 費用とシステム投資効果の予測 開発・運用コストを試算し、ROIを見積もる
5 リスク分析 技術・コスト・スケジュール面のリスクを洗い出す
6 システム化計画の承認 経営層・利害関係者から正式な合意を取得する

図解:構想と計画の守備範囲

2つのアクティビティがどのように連携するかを図で整理します。

企画プロセスの2段階構造

経営上のニーズ・課題

① システム化構想の立案

「何を実現したいか」を描く
成果物:業務の新全体像、投資目標

② システム化計画の立案

「どう実現するか」を決める
成果物:開発スケジュール、費用見積、体制図

要件定義プロセスへ

▲ 構想→計画の順序で進み、計画が承認されて初めて要件定義に入る

要件定義プロセスとの境界

試験で最も混同されるのが、企画プロセスと要件定義プロセスの境界です。判別のコツは「主語が誰か」で分けることです。

観点 企画プロセス 要件定義プロセス
主語 経営者・事業責任者 利害関係者(利用者含む)
問いかけ 「なぜ作るのか」「何を目指すのか」 「何が必要か」「どんな機能がいるか」
キーワード 経営目標、事業環境、投資効果、全体像 利害関係者のニーズ、業務要件、機能要件、非機能要件
見分け方 「経営」「事業」「構想」「投資」が登場 「利害関係者」「要件」「ニーズ」が登場

選択肢に「経営上のニーズ」「事業環境の分析」「業務の全体像」があれば企画プロセス、「利害関係者のニーズ」「業務手順」「入出力情報」があれば要件定義プロセスと判断できます。

では、この知識が試験でどのように問われるか見ていきましょう。

💡 企画プロセスの核心を3行で

・共通フレーム2013における最上流のテクニカルプロセスで、「システム化構想の立案」と「システム化計画の立案」の2つで構成される
・構想は「何を実現したいか」、計画は「どう実現するか」を決めるフェーズ
・要件定義との境界は「主語が経営者か、利害関係者か」で見分ける


試験ではこう出る!

企画プロセスは、FE・APの科目A(午前)で「共通フレームのプロセス区別」を問う問題として定期的に出題されています。

出題パターンは大きく3つに分かれます。

📊 過去問での出題実績

試験回 出題内容 問われたポイント
FE H25春
問64
企画プロセスの目的として正しいものを選ぶ。 ・「システム化の方針と実施計画を得る」が正解
・要件定義や開発の作業記述がひっかけ
AP R2秋
問62
共通フレーム2013で企画プロセスの作業を選ぶ。 ・「事業環境を分析し情報戦略と事業目標の関係を明確にする」が正解
・利害関係者の識別(要件定義)がひっかけ
AP H30春
問61
システム化構想の立案で作成されるものを選ぶ。 ・「業務の全体像」が正解
・業務手順(要件定義)やシステム方式(開発)がひっかけ
AP H30秋
問65
システム化構想の立案プロセスで行うべきことを選ぶ。 ・「情報技術動向の調査分析」が正解
・品質要件定義やシステム方式設計がひっかけ
FE H30秋
問64
システム化計画の立案で実施すべき事項を選ぶ。 ・「費用の算出基礎を明確にし、組織体制を策定」が正解
・運用や保守の作業がひっかけ

📝 IPA試験での出題パターン

パターン1:「企画プロセスの目的/作業を選べ」
4つの選択肢に企画・要件定義・開発・運用の作業がそれぞれ記述され、企画プロセスに該当するものを選ぶ形式。「経営目標」「事業環境」「全体像」が含まれる選択肢を選べばよい。

 

パターン2:「システム化構想の立案で作成されるものを選べ」
成果物を問う形式。「業務の全体像」が正解で、「業務手順」(要件定義)や「システム方式」(開発)は不正解。

 

パターン3:「システム化計画の立案で実施すべきことを選べ」
費用・スケジュール・投資効果・開発体制に関する記述が正解。インタフェース設計(開発)や障害復旧(運用)は不正解。

 

ここだけは確実に押さえてください。選択肢のキーワードだけで判別できるので、深追いは不要です。


【確認テスト】理解度チェック

ここまでの内容を理解できたか、簡単なクイズで確認してみましょう。


Q. 共通フレーム2013によれば、企画プロセスで実施すべきものはどれか。

  • A. 新しい業務の在り方を整理し、業務手順やルール、制約条件を利害関係者間で合意する。
  • B. ソフトウェア製品の信頼性や効率性など品質に関する要件を定義する。
  • C. 市場や競合など事業環境を分析し、経営目標とシステム化の方針を明確にする。

正解と解説を見る

正解:C

解説:
企画プロセスは、経営上の目的・目標を達成するために必要なシステム化の方針と実施計画を策定するプロセスです。事業環境の分析は、システム化構想の立案における「事業環境、業務環境の調査分析」タスクに該当します(参照:AP R2秋 問62)。

選択肢Aは要件定義プロセスの作業です。「業務手順」「ルール」「利害関係者間の合意」は要件定義の典型的なキーワードであり、企画プロセスでは扱いません。選択肢Bは開発プロセスにおけるソフトウェア要件定義の作業です。品質に関する具体的な要件の定義は、企画よりも後の工程で行われます。


よくある質問(FAQ)

Q. 共通フレーム2013と共通フレーム2007で企画プロセスの内容は変わりましたか?

企画プロセスの基本構造(システム化構想の立案+システム化計画の立案の2アクティビティ)は2007と2013で変わっていません。2013ではISO/IEC 12207:2008への対応として用語や分類が一部見直されましたが、企画プロセスの出題内容への影響はほぼありません。過去問では「共通フレーム2007によれば」と書かれた旧問題もそのまま学習に使えます。

Q. 「超上流工程」と呼ばれるのはなぜですか?

一般に「上流工程」というと要件定義や基本設計を指しますが、企画プロセスはそれよりもさらに前の段階です。IPAが発行した「超上流から攻めるIT化の事例集」でも、企画プロセスと要件定義プロセスを「超上流」と位置づけています。開発の失敗原因の多くは上流の曖昧さに起因するため、超上流での意思決定の品質を高めることが重要だという考え方です。

Q. ITポートフォリオとは何ですか?企画プロセスとの関係は?

ITポートフォリオとは、情報化投資をリスクや投資価値の類似性でカテゴリ分けし、最適な資源配分を行う手法です。システム化計画の立案で「費用とシステム投資効果の予測」を行う際、投資対象の優先順位をつける道具として活用されます。FE・APでは「ITポートフォリオ」という用語単体で出題されることもあるため(FE R1秋 問61など)、名称と役割を押さえておくと得点源になります。

Q. 実務で企画プロセスを担当するのはどの部門ですか?

企業の規模や体制によりますが、一般的には情報システム部門が事務局的な役割を担い、経営企画部門や事業部門と連携して進めます。中小企業では経営者自身が構想を描くケースも多く、外部のITコンサルタントが支援に入ることもあります。IPA試験の範囲では部門名まで問われることはないため、「経営層が関与する」という点だけ認識しておけば十分です。