対象試験と出題頻度
スケジュールマネジメント(時間管理)は、基本情報技術者・応用情報技術者で繰り返し出題されるテーマです。
プロジェクトマネジメントの10知識エリアの中でも、アローダイアグラム・クリティカルパス・WBSといった計算問題に直結する論点が集中しており、配点上のコスパが非常に高い領域です。
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基本情報技術者
応用情報技術者
★★★★☆
ランクA(重要)必ず覚えておくべき
用語の定義
情報処理試験を勉強していると、「スケジュールマネジメントってガントチャートを引くだけの話じゃないの?」と疑問に感じる方が多いです。実際にはもっと体系的な作業の集まりです。
スケジュールマネジメント(Schedule Management/時間管理)とは、一言で言うと
「プロジェクトを定められた期限内に完了させるために、作業の洗い出し・順序付け・所要時間の見積り・スケジュール作成・進捗のコントロールを行う一連の管理活動」
のことです。
イメージとしては、「運動会の進行表づくり」です。
運動会では、まず競技種目を全部書き出し(作業の洗い出し)、どの順番でやるか決め(順序付け)、各競技に何分かかるか見積もり(所要時間の見積り)、開始時刻と終了時刻を割り当てたタイムテーブルを作ります。
当日は遅れがないかチェックし、押していれば調整します。プロジェクトでも全く同じ流れです。
📊 スケジュールマネジメントの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 英語名 | Project Schedule Management |
| 準拠標準 | PMBOKガイド(PMI)の10知識エリアのひとつ |
| 目的 | プロジェクトを期限内(納期)に完了させる |
| 代表的な技法 | WBS、アローダイアグラム(PERT)、クリティカルパス法、ガントチャート |
解説
プロジェクトは「QCD(品質・コスト・納期)」のバランスで成否が決まります。このうち納期を担う知識エリアがスケジュールマネジメントです。
納期が崩れるとコストも品質も連鎖的に崩れるため、PMBOKでは独立した知識エリアとして体系化されています。
6つのプロセス(PMBOK第6版基準)
PMBOKでは、スケジュールに関する作業を6つのプロセスに分解しています。
順序通りに流れていく点がポイントです。
| # | プロセス名 | やること |
|---|---|---|
| 1 | スケジュール管理の計画 | どう作って・どう監視するかのルール(ベースライン、許容差など)を決める |
| 2 | アクティビティの定義 | WBSの最下層をさらに分解し、実行可能な作業(アクティビティ)に落とし込む |
| 3 | アクティビティの順序設定 | 先行・後続関係を整理する。FS/SS/FF/SFの依存関係を定義 |
| 4 | 所要期間の見積り | 三点見積り、類推見積り、係数見積りなどで各作業の日数を算出 |
| 5 | スケジュールの作成 | アローダイアグラムやガントチャートで全体日程を組み立て、クリティカルパスを特定 |
| 6 | スケジュールのコントロール | 実績と計画を比較し、遅延があればクラッシング・ファストトラッキング等で回復 |
スケジュール作成の流れ
各プロセスのアウトプットが、次のプロセスのインプットになります。順序を視覚的に押さえてください。
作業の洗い出し/ WBS分解
成果物を階層的に分解し、管理可能な単位まで作業を細かく書き出す。
📦 アウトプット:WBS(作業分解構成図)
順序の設定
「Aが終わらないとBに進めない」といった先行・後続の関係を整理する。
📦 アウトプット:作業の依存関係リスト
所要期間の見積り
各作業に何日かかるかを算出する。三点見積りや類推見積りを使う。
📦 アウトプット:作業ごとの所要日数
スケジュールの作成/ CPM・PERT試験頻出
アローダイアグラムを描き、最長経路となるクリティカルパスを特定する。全体の所要日数が決まる。
📦 アウトプット:スケジュールベースライン
進捗の管理/ ガントチャート試験頻出
計画と実績を比較し、遅れがあればクラッシングやファストトラッキングで回復させる。
📦 アウトプット:進捗報告・是正措置
▲ 試験では STEP4の計算問題と STEP5の図表読み取りが頻出
代表的な技法
試験で問われる主な技法を整理します。それぞれの「目的」と「特徴」をセットで覚えてください。
| 技法 | 特徴 |
|---|---|
| WBS (Work Breakdown Structure) |
成果物を階層的に分解した構造図。アクティビティ定義の出発点。 |
| アローダイアグラム (PERT図) |
作業を矢印、結合点を○で表現するネットワーク図。最早・最遅結合点時刻の計算問題が頻出。 |
| クリティカルパス法 (CPM) |
所要時間が最長となる経路を求める手法。この経路の作業が遅れると全体が遅れる。 |
| ガントチャート | 作業を横棒で表す進捗管理表。計画と実績の比較に向くが、依存関係の表現は苦手。 |
| 三点見積り | 楽観値・最頻値・悲観値から (O+4M+P)÷6 で期待値を算出。 |
| クラッシング | 資源を追加投入して期間を短縮。コストは増加する。 |
| ファストトラッキング | 本来直列の作業を並列化して期間を短縮。手戻りリスクが増加する。 |
アローダイアグラムとクリティカルパス
計算問題の対象となる典型例です。下図のように開始点(①)から終点(⑤)に至る経路が複数ある場合、すべての経路の所要日数を計算し、その中で最も長い経路がクリティカルパスとなります。
「最短距離ではなく最長経路」が答えになる点に注意してください。
5ノードのアローダイアグラム例
📐 全経路の所要日数を比較する
| 経路 | 通る作業 | 計算式 | 所要日数 |
|---|---|---|---|
| ①→②→④→⑤ | A → C → E | 3 + 5 + 4 | 12日 ⭐ |
| ①→③→④→⑤ | B → D → E | 2 + 3 + 4 | 9日 |
⭐ 最も長い経路(12日)がクリティカルパス=プロジェクト全体の所要日数
並行ルートには「12日 − 9日 = 3日」のフロート(余裕)がある。つまりB・Dの作業は合計3日まで遅れても全体納期に影響しない。
ガントチャートのイメージ
ガントチャート(横棒の長さ=作業期間)
| 作業 | 1日 | 2日 | 3日 | 4日 | 5日 | 6日 | 7日 | 8日 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 設計 | ||||||||
| 実装 | ||||||||
| テスト | ||||||||
▲ 進捗の見える化に強いが、作業間の依存関係(先行・後続)は表現しづらい。依存関係を見たい場合はアローダイアグラムを併用する。
では、この用語が試験でどのように出題されるか見ていきましょう。
💡 スケジュールマネジメントの核心を3行で
・QCDの「納期(D)」を担うPMBOKの知識エリア
・WBSで作業を分解→順序設定→所要期間見積り→アローダイアグラムでクリティカルパス特定、の流れ
・遅延発生時はクラッシング(コスト増)かファストトラッキング(並列化)で回復させる
試験ではこう出る!
この領域は午前問題で計算問題として、午後問題ではプロジェクト遅延への対応として繰り返し出題されています。
配点を取りやすい論点なので、解法をパターン化して覚えるのが効率的です。
📊 過去問での出題実績
| 試験回 | 出題内容 | 問われたポイント |
|---|---|---|
| FE R5 科目A 問49 |
アローダイアグラムから最短所要日数を求める計算問題。 | ・最長経路=クリティカルパス=最短所要日数 ・「最短」と「最長」を読み違えさせるひっかけ |
| AP R4春 午前 問52 |
クリティカルパス上の作業が1日遅れたときの全体への影響を問う問題。 | ・CP上の作業はフロート(余裕)がゼロ ・遅れがそのまま全体遅延になる |
| AP R3秋 午前 問52 |
スケジュール短縮技法としてのファストトラッキングの説明を問う問題。 | ・「並列実行で短縮、手戻りリスク増」が正解 ・クラッシング(資源追加)との区別がひっかけ |
| FE H31春 午前 問51 |
三点見積り法で期待値を計算する問題。 | ・公式「(楽観+4×最頻+悲観)÷6」 ・単純平均との混同がひっかけ |
| AP H30秋 午前 問52 |
ガントチャートとアローダイアグラムの特徴比較問題。 | ・依存関係を表現できるのはアロー側 ・進捗の見える化はガント側 |
📝 IPA試験での出題パターン
パターン1:クリティカルパスの計算
アローダイアグラムが図示され、最短所要日数または最長経路を答える形式。各ノードに最早結合点時刻(EST)を書き込み、終点の値を読むのが定石。並行経路を見落とすと不正解になる典型ひっかけがある。
パターン2:技法の使い分け
クラッシングとファストトラッキングの違い、PERTとガントチャートの違い、三点見積りの公式など、技法の名称と特徴を結びつける問題。「並列化=ファストトラッキング」「資源追加=クラッシング」だけは反射的に答えられるようにする。
パターン3:プロセスの目的を問う
「アクティビティの順序設定で行うことは何か」のように、6プロセスの役割分担を問う形式。所要期間の見積りとスケジュール作成を混同させるひっかけが頻出。
ここまででOKです。PMBOK第7版のパフォーマンスドメインの話まで深追いする必要はありません。
【確認テスト】理解度チェック
ここまでの内容を理解できたか、簡単なクイズで確認してみましょう。
Q. PMBOKにおけるプロジェクトのスケジュールマネジメントの説明として、最も適切なものはどれでしょうか?
- A. プロジェクトを所定の期限内に完了させるため、アクティビティの定義・順序設定・所要期間見積り・スケジュール作成・コントロールを行う一連の管理活動である。
- B. プロジェクトに必要な要員・設備・資材などのリソースを過不足なく調達し、組織や役割分担を計画・管理する活動である。
- C. プロジェクトの予算を見積り、コストベースラインを設定して支出を監視・コントロールする活動である。
正解と解説を見る
正解:A
解説:
選択肢Aは、PMBOKにおけるスケジュールマネジメントの正しい説明です。納期を守るための6プロセス(管理の計画/アクティビティ定義/順序設定/所要期間見積り/スケジュール作成/コントロール)を端的にまとめています。
選択肢Bは「資源マネジメント」の説明です。人的資源や物的資源の調達・配分を扱う知識エリアであり、時間ではなくリソースに着目しています。選択肢Cは「コストマネジメント」の説明です。コストベースラインや予算管理を扱う知識エリアで、QCDのうち「C(コスト)」を担当します。いずれもPMBOKの10知識エリアに含まれますが、対象が時間ではないため不正解です。
よくある質問(FAQ)
Q. アローダイアグラムとPERT図は同じものですか?
実質的に同じものとして扱われます。PERT(Program Evaluation and Review Technique)は元々米海軍がポラリスミサイル開発で用いた手法で、アクティビティを矢印(アロー)で表すネットワーク図を使うため「アローダイアグラム」とも呼ばれます。IPA試験では両者を同義として扱い、計算手順も共通です。なお、現代のPMBOKでは「ノードを四角で表すPDM(プレシデンス・ダイアグラム法)」が主流ですが、試験では従来型のアロー型が出題されます。
Q. クラッシングとファストトラッキングはどちらを先に選ぶべきですか?
一般的にはファストトラッキングを先に検討します。理由は追加コストが発生しないためです。ただし、本来直列だった作業を並列化するため手戻りリスクが上がります。納期が逼迫しており、追加予算が確保できる場合はクラッシング(要員追加・残業など)を選びますが、人月の神話で知られる通り「遅れているプロジェクトに人を追加するとさらに遅れる」現象に注意が必要です。実務では両者を組み合わせて使うケースが多いです。
Q. フロート(余裕時間)とは何ですか?
フロート(スラックとも呼ぶ)は、ある作業を遅らせてもプロジェクト全体の完了日に影響しない時間的余裕のことです。最遅結合点時刻から最早結合点時刻を引いて算出します。クリティカルパス上の作業はフロートがゼロであり、1日でも遅れれば全体納期が崩れます。逆に、フロートが大きい作業は資源配分の調整余地が大きいと判断できます。AP午前で「クリティカルパス=フロートが0の経路」という言い換え問題が出ることがあります。
Q. アジャイル開発でもスケジュールマネジメントは必要ですか?
必要ですが、ウォーターフォール型とはアプローチが異なります。アジャイルではスプリント単位(通常1〜4週間)でタイムボックスを区切り、固定期間内に収まる作業量をベロシティ(チームの過去実績)から見積もります。詳細なアローダイアグラムは作らず、バーンダウンチャートで進捗を可視化するのが一般的です。試験では従来型のCPM・PERTが中心ですが、AP午後の問9(プロジェクトマネジメント)ではアジャイル文脈の問題も増えています。
Q. PMBOK第7版になって時間管理の扱いは変わりましたか?
第7版(2021年発行)では知識エリア中心から「8つのパフォーマンスドメイン」中心の構成に変わり、スケジュールは「計画」「デリバリー」など複数のドメインに分散しました。ただしIPA試験は第6版ベースの10知識エリアで出題され続けているため、受験勉強としては従来通り「スケジュールマネジメント=6プロセス」で押さえれば問題ありません。