対象試験と出題頻度

期待値は、基本情報技術者・応用情報技術者で出題されるテーマです。

「利益の期待値が最大になる仕入個数を求めよ」「デシジョンツリーから期待値を算出せよ」といった計算問題が定番であり、確率と掛け算の組み合わせを正確にこなせるかが問われます。

 

FE H30秋 午前問75、FE H24秋 午前問76、AP R5春 午前問75(R1秋 問74・H30春 問75と同一問題)など、複数の試験回で繰り返し出題されています。

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対象試験:
基本情報技術者
応用情報技術者
出題頻度:
★★★☆☆
ランクB(標準)覚えておくと有利

用語の定義

情報処理試験を勉強していると、「期待値ってどうやって計算するの?」「そもそも何の”期待”なの?」と戸惑う場面が多いです。

期待値(Expected Value)とは、一言で言うと

 「各結果の値に、その結果が起こる確率を掛けて、すべて合計したもの」

のことです。

イメージとしては、「何回も繰り返したとき、1回あたり平均でどのくらいの結果になるか」を先に計算で出した数値です。

 

たとえば、コイントスで表が出たら200円もらえ、裏なら0円の場合、期待値は「200円 × 0.5 + 0円 × 0.5 = 100円」。1回あたり平均100円の見込みがあるという意味になります。

📊 期待値の基本情報

項目 内容
英語名 Expected Value
記号 E(X)(確率変数Xの期待値)
計算式 E(X) = Σ(値 × その確率)
分野 応用数学(確率・統計)

解説

確率を学ぶと「ある事象が起こる可能性」は分かりますが、それだけでは「結局どのくらいの利益(損失)になるか」を数値で表せません。

期待値は、確率と結果の値を結びつけて「平均的な見込み」を1つの数値にまとめる計算手法です。

 

計算の手順

期待値の計算は、次の3ステップで完結します。

期待値の計算 3ステップ

Step 1:起こりうるすべての結果(値)を書き出す

Step 2:各結果の発生確率を確認する

Step 3:「値 × 確率」をすべて合計する

▶ サイコロの例で計算してみる(クリックで展開)

サイコロを1回振って、出た目がそのまま得点になるゲームの期待値を求めます。

出た目 1 2 3 4 5 6
得点 1 2 3 4 5 6
確率 1/6 1/6 1/6 1/6 1/6 1/6

E(X) = 1×(1/6) + 2×(1/6) + 3×(1/6) + 4×(1/6) + 5×(1/6) + 6×(1/6)

= (1+2+3+4+5+6) / 6 = 21/6 = 3.5

サイコロを何回も振り続ければ、1回あたりの得点は平均して3.5点に近づいていきます。「3.5の目」は実在しませんが、「長い目で見た平均値」が期待値です。

IPA試験での典型的な使い方

試験で出る期待値の計算は、大きく2パターンあります。

仕入個数の最適化:商品を何個仕入れるかによって利益が変わる問題。販売個数ごとの確率が与えられ、仕入個数ごとに利益の期待値を算出して、最大となる個数を答えます。

 

デシジョンツリー:複数の施策や選択肢が樹形図で提示され、各分岐の確率と金額から期待値を段階的に計算する問題。応用情報技術者で特に頻出です。

 

どちらも「値 × 確率を合計する」という基本操作は同じです。問題文の表や図から数値を読み取り、掛け算と足し算を丁寧に進めれば必ず解けます。

▶ 仕入問題の計算例(クリックで展開)

1個1,000円の利益、売れ残りは1個300円の損失。販売個数の確率が以下のとき、何個仕入れると利益の期待値が最大か?

販売個数の予想確率

販売個数 4個 5個 6個 7個
確率 0.3 0.3 0.3 0.1

仕入6個の場合の計算:

販売4個 → 利益 4,000 − 損失 600 = 3,400円(確率0.3)
販売5個 → 利益 5,000 − 損失 300 = 4,700円(確率0.3)
販売6個 → 利益 6,000 − 損失 0 = 6,000円(確率0.4)

期待値 = 3,400×0.3 + 4,700×0.3 + 6,000×0.4 = 1,020 + 1,410 + 2,400 = 4,830円

同様に他の仕入個数でも計算し、最も大きい値を選びます。試験ではこの「表を埋めて比較する」作業が問われます。

では、この用語が試験でどのように出題されるか見ていきましょう。

💡 期待値の核心を3行で

・「各結果の値 × その確率」をすべて合計したもの
・「何度も繰り返したとき、1回あたりの平均的な見込み」を数値化する手法
・試験では「仕入個数の最適化」と「デシジョンツリー」の2パターンが定番


試験ではこう出る!

期待値の計算問題は、基本情報技術者ではストラテジ系の業務分析分野、応用情報技術者でもストラテジ系の意思決定問題として定期的に出題されています。

📊 過去問での出題実績

試験回 出題内容 問われたポイント
FE H30秋
午前 問75
販売個数の確率から利益の期待値が最大になる仕入個数を求める問題。 ・仕入個数ごとに「利益 − 廃棄ロス」を計算し確率を掛ける
・H24秋 問76の流用問題
FE H16秋
午前 問6
サイコロの目に応じた得点の期待値を求める問題。 ・得点がない場合は0として計算する
・確率が等しい場合の単純な期待値計算
AP R5春
午前 問75
デシジョンツリーから二つのマーケティング施策の期待値を算出し、最大となる施策を選ぶ問題。 ・R1秋 問74、H30春 問75と同一問題
・「追加費用を払うか否か」を先に判定してから全体を計算する2段階構造

📝 IPA試験での出題パターン

パターン1:「利益の期待値が最大となる仕入個数を求めよ」(FE頻出)
販売個数の確率表と利益・損失の条件が与えられる。仕入個数ごとに全ケースの利益を計算し、確率を掛けて合計するだけ。計算量が多いので電卓が使えないCBT環境では丁寧に進めること。

 

パターン2:「デシジョンツリーから期待値が最大の施策を選べ」(AP頻出)
樹形図の末端から根に向かって計算を進める。途中の意思決定ノード(□)では期待値が大きい方を選択し、確率ノード(○)では「値 × 確率」の合計を求める。末端から計算する手順を守れば、見た目の複雑さに惑わされずに解ける。

 

試験ではここまででOKです。期待値の数学的な定義(積分を使う連続型の定義など)は出題範囲外なので、深追いは不要です。


【確認テスト】理解度チェック

ここまでの内容を理解できたか、簡単なクイズで確認してみましょう。


Q. ある商品の1日あたりの販売個数が「3個(確率0.4)」「4個(確率0.6)」と予測されている。1個あたりの利益が500円のとき、1日の利益の期待値は何円か。

  • A. 1,500円
  • B. 2,000円
  • C. 1,800円

正解と解説を見る

正解:C

解説:
販売3個のときの利益は 500円 × 3 = 1,500円、販売4個のときの利益は 500円 × 4 = 2,000円です。期待値は「各結果の値 × その確率」の合計なので、1,500 × 0.4 + 2,000 × 0.6 = 600 + 1,200 = 1,800円となります。

選択肢Aの1,500円は、販売3個のケースの利益額そのものであり、確率を考慮していません。選択肢Bの2,000円は、販売4個のケースの利益額そのものであり、こちらも確率による加重計算がされていない数値です。


よくある質問(FAQ)

Q. 期待値と平均値は同じものですか?

考え方は近いですが、使う場面が異なります。平均値は「すでに得られた実測データの合計 ÷ 個数」で計算する事後の値です。一方、期待値は「まだ起きていない結果の確率に基づいて算出する事前の予測値」です。試行回数を無限に増やすと、実測の平均値は期待値に近づいていきます(大数の法則)。試験では両者を混同させるひっかけは出ませんが、概念の違いは理解しておいて損はありません。

Q. 確率の合計が1にならないときは計算を間違えていますか?

間違えています。起こりうるすべての結果の確率を合計すると、必ず1(100%)になります。合計が1にならない場合は、結果の書き出しに漏れがあるか、確率の読み取りにミスがあります。試験では問題文の表をそのまま使えば合計が1になるように作られているので、計算前に確率の合計を検算する習慣をつけると、ケアレスミスを防げます。

Q. 期待値がマイナスになることはありますか?

あります。損失が発生するケースの確率が高ければ、期待値はマイナスになります。たとえば「80%の確率で1,000円の損失、20%の確率で2,000円の利益」なら、期待値は −1,000×0.8 + 2,000×0.2 = −400円です。マイナスの期待値は「長期的に見て損する」ことを意味します。

Q. 実務ではどのような場面で期待値を使いますか?

プロジェクトマネジメントのリスク分析で頻繁に使います。PMBOKの「期待金額価値分析(EMV分析)」は、リスクの発生確率と影響額を掛け合わせて期待値を算出し、リスク対応に費用をかけるべきかを判断する手法です。また、在庫管理の発注量最適化や、投資案件の比較評価でも期待値計算が使われています。