対象試験と出題頻度
フローチャート(流れ図)は、ITパスポート・基本情報技術者・応用情報技術者のすべてで出題されるテーマです。
記号の意味を問う知識問題から、流れ図を読み解いて実行結果を求めるトレース問題まで、出題パターンが幅広い分野です。
R元年秋期 FE 午前 問1、R3年度 IP 問74、R6年春期 AP 午前 問5など、毎回のように何らかの形で登場しています。
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ITパスポート
基本情報技術者
応用情報技術者
★★★★☆
ランクA(重要)必ず覚えておくべき
用語の定義
情報処理試験を勉強していると、「フローチャートって結局どこまで覚えればいいの?」と迷いがちです。
フローチャート(流れ図)とは、一言で言うと
「処理の手順や判断の分岐を、JIS規格で定められた図形記号と矢印で視覚的に表した図」
のことです。
イメージとしては、「料理のレシピを、文章ではなく一目でわかる道順マップにしたもの」です。
「玉ねぎはある? → あれば炒める → なければ買いに行く」のように、やることと分岐を矢印でつないでいけば、誰が見ても同じ手順を再現できます。これがフローチャートの考え方です。
📊 フローチャート(流れ図)の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 英語名 | Flowchart(flow=流れ、chart=図) |
| 準拠規格 | JIS X 0121:1986(対応国際規格:ISO 5807) |
| 主な用途 | アルゴリズムの視覚的表現、プログラム設計、業務手順の文書化 |
| 3つの基本構造 | 順次・選択(分岐)・繰返し(ループ) |
詳細解説
プログラムの処理手順(アルゴリズム)は、文章だけで伝えると読み手によって解釈がぶれます。
「条件Aが成り立つなら処理Bを行い、そうでなければ処理Cを行い、その後…」と書き連ねても、分岐が増えるほど全体像が見えなくなります。
この問題を解決するために生まれたのがフローチャートです。JIS X 0121(ISO 5807対応)で記号の形状と使い方が標準化されており、誰が描いても同じルールで読めるようになっています。
試験で問われる主要記号
JIS X 0121には多数の記号が定義されていますが、IPA試験で問われる範囲は限られています。以下の6つを押さえれば十分です。
📊 フローチャートの主要記号一覧
| 図形 | 記号名 | 意味 | 覚え方 |
|---|---|---|---|
| 端子 | 処理の開始と終了を示す | 角丸の四角形。「ここがスタート/ゴール」 | |
| 処理 | 計算や代入など任意の演算を行う | ただの四角形。最も基本の記号 | |
| ◇ 条件 |
判断 | 条件を評価し、Yes/Noで分岐する | ひし形。「岐路に立つ=ダイヤモンド形」 |
| |副処理| | 定義済み処理 | 別の場所で定義されたサブルーチンやモジュールを呼び出す | 四角形の両端に縦線。「中身は別紙参照」 |
| 入出力 | データ (入出力) |
データの読み込みや結果の書き出し | 平行四辺形。「データが流れ込む/出ていく」 |
| 始端 終端 |
ループ端 | 繰返し処理の開始と終了を対で示す | 台形が上下で対。始端と終端で繰返し範囲を挟む |
3つの基本構造
あらゆるアルゴリズムは、以下の3構造の組み合わせで表現できます。これは「構造化定理(ベーム-ヤコピーニの定理)」として理論的にも証明されている事実です。
① 順次構造
↓
↓
↓
上から下へ順番に実行
② 選択構造(分岐)
◇
条件
Yes ↙ ↘ No
処理A
処理B
↘ ↙
↓
条件の真偽で処理を切替え
③ 繰返し構造(ループ)
↓
↓
↓
条件を満たすまで繰り返す
流れ図の読み方(トレースの基本)
IPA試験では、与えられた流れ図に具体的な値を入れて手順どおりに追跡(トレース)し、最終的な出力値を求める問題が頻出です。トレースの手順は3ステップに分かれます。
まず、変数の初期値を確認します。次に、矢印に沿って処理を1つずつ実行し、変数の値を書き換えていきます。判断記号に到達したら条件を評価して進む方向を決めます。最後に、終了条件を満たしたときの変数の値が答えです。
▶ トレース例:割り算のアルゴリズム(クリックで展開)
H28春期 FE 午前 問8で出題された流れ図を簡略化した例で手順を示します。x = 36、y = 7のとき、「xをyで割った商と余り」を求めるアルゴリズムです。
初期値: r ← 36, q ← 0
判断: r ≧ y(= 7)?
1回目: r=36 ≧ 7 → Yes → r=36-7=29, q=0+1=1
2回目: r=29 ≧ 7 → Yes → r=29-7=22, q=1+1=2
3回目: r=22 ≧ 7 → Yes → r=22-7=15, q=2+1=3
4回目: r=15 ≧ 7 → Yes → r=15-7=8, q=3+1=4
5回目: r=8 ≧ 7 → Yes → r=8-7=1, q=4+1=5
6回目: r=1 ≧ 7 → No → ループ終了
結果: q = 5(商), r = 1(余り) → 36 ÷ 7 = 5 余り 1 ✓
このように、1ステップずつ変数の値を表に書き出していくのがトレースの基本です。焦って暗算しようとせず、紙に書きながら追うのが確実です。
ここだけは確実に押さえてください。フローチャートは「記号の意味」と「トレースの手順」の2つが理解できていれば得点につながります。
では、この用語が試験でどのように出題されるか見ていきましょう。
💡 フローチャートの核心を3行で
・処理手順を図形記号と矢印で表した図。JIS X 0121(ISO 5807)で記号が標準化されている
・順次・選択・繰返しの3構造であらゆるアルゴリズムを表現できる
・端子(角丸)=開始/終了、処理(四角)=演算、判断(ひし形)=分岐の3記号が最頻出
試験ではこう出る!
フローチャートの出題は、記号の意味を直接問う問題と、流れ図をトレースして実行結果を求める問題の2パターンに大別されます。
📊 過去問での出題実績
| 試験回 | 出題内容 | 問われたポイント |
|---|---|---|
| IP R4年度 問79 |
流れ図で示す処理を終了したとき、xの値を求める問題。ユークリッドの互除法を流れ図で表現。 | ・判断記号(x>y)の分岐を正しく追えるか ・変数の値を1ステップずつ追跡するトレース力 |
| FE R元年秋 午前 問1 |
10進整数を8桁の2進数に変換する流れ図の空欄(a, b)を埋める問題。 | ・div(商)とmod(余り)を使った基数変換の理解 ・ループ内の処理順序を正しく読み取る力 |
| AP R6年春 午前 問5 |
正の整数Mに対する2つの流れ図の結果が等しくなる条件を選ぶ問題。 | ・2つの異なる流れ図を読み比べる力 ・ループの終了条件の違いに着目する |
📝 IPA試験での出題パターン
パターン1:「流れ図の実行結果を求めよ」
具体的な初期値が与えられ、流れ図をトレースして最終的な変数値を選ばせる形式。IP・FEで最も多い。紙にトレース表を書いて1ステップずつ値を追えば必ず正解にたどり着く。
パターン2:「流れ図の空欄を埋めよ」
流れ図の一部(処理や判断条件)が空欄になっており、正しい処理を選ぶ形式。FE 科目Aサンプル問題 問2がこのパターンの典型。空欄前後の処理から論理的に推測する力が求められる。
試験ではここまででOKです。JIS規格の記号を暗記するよりも、「流れ図を正確にトレースできること」が得点に直結します。記号の名前や形を問う単独問題は少なく、ほとんどがトレース力を試す問題です。
【確認テスト】理解度チェック
ここまでの内容を理解できたか、簡単なクイズで確認してみましょう。
Q. フローチャート(流れ図)で使用される「ひし形」の記号が表す意味として、最も適切なものはどれでしょうか?
- A. 条件を評価し、その結果に応じて処理の流れを分岐させる判断を表す。
- B. 別の場所で定義されたサブルーチンやモジュールを呼び出す定義済み処理を表す。
- C. 処理の開始地点または終了地点を示す端子を表す。
正解と解説を見る
正解:A
解説:
ひし形はJIS X 0121で「判断」記号として定義されており、条件を評価して処理の流れを分岐させる役割を持ちます。Yes/NoやTrue/Falseの結果に応じて進む方向が変わります。
選択肢Bは定義済み処理の説明です。定義済み処理は四角形の両端に縦線が入った記号で表されます。選択肢Cは端子の説明です。端子は角丸の四角形(カプセル型)で表され、処理全体の開始と終了を示します。
よくある質問(FAQ)
Q. フローチャートと擬似言語(疑似コード)はどう使い分けますか?
フローチャートは図で処理の流れを表現し、擬似言語はプログラム風の文章で処理を記述します。基本情報技術者の科目B(旧午後試験)では擬似言語形式の出題が中心ですが、科目Aでは流れ図形式が残っています。どちらも「順次・選択・繰返し」を表現する手段である点は同じです。図の方が全体像を把握しやすく、擬似言語の方が処理の詳細を正確に記述できるという特性の違いがあります。
Q. 流れ図の矢印の向きにルールはありますか?
JIS X 0121では「標準的な流れの方向は、左から右へ、上から下へ」と定められています。この方向に流れる場合は矢印(矢先)を省略できますが、下から上や右から左へ逆行する場合は矢印を必ず付ける必要があります。IPA試験の問題図では、見やすさのためにすべての線に矢印が付いているケースがほとんどです。
Q. 実務でフローチャートは今でも使われていますか?
使われています。ただし、プログラムの設計図としてJIS準拠のフローチャートを描く場面は減っており、UMLのアクティビティ図やBPMN(Business Process Model and Notation)に置き換わる傾向です。一方、業務マニュアルや障害対応手順書では「誰が見ても手順がわかる」という強みから、簡易的なフロー図が広く使われています。
Q. トレース問題を速く解くコツはありますか?
変数ごとに列を作ったトレース表を紙に書くのが最も確実で速い方法です。流れ図を目で追いながら暗算しようとすると、ループ回数が増えたときに必ずミスが起きます。変数名を列の見出しにし、1行ごとに処理後の値を記入していけば、転記ミスを防げます。判断記号ではYes/Noのどちらに進んだかもメモしておくと、後から見返すときに迷いません。