対象試験と出題頻度
ネットワークスライシングは、応用情報技術者で出題される可能性があるネットワーク分野のテーマです。
IPAシラバスVer.7.0(2022年改訂)でモバイル通信技術の用語として追加された比較的新しい項目であり、5G(第5世代移動通信システム)の特徴を問う問題の選択肢として登場する形式が想定されます。
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応用情報技術者
★★☆☆☆
ランクC(応用)余裕があれば覚える
用語の定義
情報処理試験を勉強していると、「ネットワークスライシングって結局何?VLANと同じでは?」と混乱しがちです。
ネットワークスライシング(Network Slicing)とは、一言で言うと
「1つの物理的なモバイルネットワークを、用途ごとに複数の仮想的な専用ネットワーク(スライス)に分割して運用する技術」
のことです。
イメージとしては、「1本の高速道路を、一般車レーン・緊急車両レーン・物流専用レーンに仕切って同時に使い分ける」こと。
道路そのものは1つですが、用途ごとにレーンを分けることで、救急車は渋滞に巻き込まれず、物流トラックは安定して走れます。
ネットワークスライシングは、これと同じ発想を通信の世界で実現する技術です。
📊 ネットワークスライシングの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 英語名 | Network Slicing |
| 関連技術 | SDN(Software-Defined Networking)、NFV(Network Functions Virtualization) |
| 標準化 | 3GPP Release 15 以降で規定 |
| 前提条件 | 5G SA(Standalone)方式のコアネットワークが必要 |
解説
5Gは「高速大容量(eMBB)」「超低遅延(URLLC)」「多数同時接続(mMTC)」という3つの特性を掲げています。しかし、これら3つを同時に最大値で提供し続けることは物理的に不可能です。
そこで登場したのが、1つの物理インフラを論理的に切り分けて、用途ごとに通信品質を最適化する仕組みです。
▶ なぜ5Gでスライシングが必要なのか(クリックで展開)
たとえば、動画配信には大きな帯域幅が必要ですが遅延はある程度許容されます。一方、工場のロボット遠隔制御では帯域幅は小さくても1ミリ秒単位の低遅延が求められます。
農業のIoTセンサーは1回あたりのデータ量はごく小さいものの、数万台の端末が同時接続します。
こうした相反する要件を、1つの「汎用ネットワーク」で一律に扱うと、どの用途にも中途半端な品質しか提供できません。通信事業者の物理設備を用途ごとに分離して専用化すれば解決しますが、設備投資が膨大になります。
この問題を「仮想的な分割」で解決するのがネットワークスライシングです。物理設備は共有したまま、ソフトウェア制御で論理的に独立したネットワーク区画(スライス)を生成・管理します。
▶ スライシングを支える要素技術(クリックで展開)
ネットワークスライシングは単体の技術ではなく、複数の技術を組み合わせて実現されます。
SDN(Software-Defined Networking):ネットワーク機器の制御機能をソフトウェアで集中管理する技術。スライスごとの経路制御や帯域割り当てを柔軟に変更できる土台になります。
NFV(Network Functions Virtualization):ルータやファイアウォールなどのネットワーク機能を、専用ハードウェアではなく汎用サーバー上の仮想マシンやコンテナとして動かす技術。スライスごとに必要な機能を即座に起動・停止できます。
3GPP Release 15では、5Gコアネットワーク(5GC)の仕様としてスライスの識別子であるS-NSSAI(Single Network Slice Selection Assistance Information)が定義されました。端末がどのスライスに接続するかを、この識別子で制御します。
ここだけは確実に押さえてください。
ネットワークスライシングは「物理的に1つのネットワーク」を「論理的に複数の専用ネットワークに分割」する技術であり、VLANのようなLAN内の分割ではなく、コアネットワークから端末までのエンドツーエンドを対象とする点が特徴です。
では、この用語が試験でどのように出題されるか見ていきましょう。
💡 ネットワークスライシングの核心を3行で
・1つの物理モバイルネットワークを用途別に仮想分割する5G時代の中核技術
・SDNとNFVを基盤とし、3GPP Release 15以降で標準化された
・高速大容量・超低遅延・多数同時接続という異なる要件を同一設備上で両立させる
試験ではこう出る!
ネットワークスライシングは、IPAシラバスVer.7.0(2022年改訂)で応用情報技術者のネットワーク分野に追加された用語です。
2025年1月時点で、午前問題として単独で出題された実績は確認されていません。
ただし、シラバス改訂後に追加された用語は1〜2年以内に初出題されるパターンが多いため、今後の出題に備えておく価値はあります。
📝 想定される出題パターン
パターン1:「5Gの特徴を選べ」
5Gに関連する技術用語が4つ並び、ネットワークスライシングの説明として正しいものを選ぶ形式。「1つの物理ネットワークを仮想的に分割」「用途ごとに品質を最適化」がキーワードになります。
パターン2:「用語の説明として適切なものを選べ」
ネットワークスライシング・キャリアアグリゲーション・ビームフォーミングなど、同じシラバス改訂で追加されたモバイル技術用語を区別させる問題。それぞれが「何を目的とする技術か」を整理しておけば対応できます。
試験ではここまででOKです。3GPPの詳細仕様やS-NSSAIの構造まで問われることはないので、深追いは不要です。
【確認テスト】理解度チェック
ここまでの内容を理解できたか、簡単なクイズで確認してみましょう。
Q. ネットワークスライシングの説明として、最も適切なものはどれでしょうか?
- A. 1つの物理的なモバイルネットワークを、用途ごとに複数の仮想的な専用ネットワークに分割し、それぞれに最適な通信品質を提供する技術。
- B. 複数の異なる周波数帯を束ねて同時に利用することで、通信速度を向上させる技術。
- C. 電波を特定の方向に集中させて送信することで、通信品質と到達距離を改善する技術。
正解と解説を見る
正解:A
解説:
ネットワークスライシングは、物理的に共有された1つのモバイルネットワーク基盤を論理的に分割し、スライスごとに異なる通信品質を割り当てる技術です。「仮想的に分割」「用途ごとに最適化」が正解を選ぶ判断基準になります。
選択肢Bはキャリアアグリゲーション(CA)の説明です。複数の周波数帯を束ねて帯域幅を拡大する技術であり、ネットワークの分割とは方向性が逆です。選択肢Cはビームフォーミングの説明です。アンテナ技術の一種で、電波を特定方向に集中させることで通信効率を高める仕組みであり、ネットワーク構成の分割とは無関係です。
よくある質問(FAQ)
Q. ネットワークスライシングとVLANは何が違いますか?
VLANはスイッチ上でLANを論理的に分割する技術であり、対象はデータリンク層(L2)のローカルネットワークです。一方、ネットワークスライシングはコアネットワークから無線アクセスネットワーク、端末までのエンドツーエンドを対象に、帯域幅・遅延・接続数などの通信品質パラメータをスライス単位で制御します。対象範囲と制御の粒度がまったく異なります。
Q. 4G(LTE)ではネットワークスライシングはできないのですか?
4Gでは実現できません。ネットワークスライシングには、コアネットワークが仮想化されたクラウドネイティブ構成であることが前提条件です。5G SA(Standalone)方式で初めて導入された5GC(5G Core)がこの構成を採用しており、4G/LTEのコアネットワーク(EPC)はスライス単位の制御に対応していません。
Q. 実務ではネットワークスライシングはどのような場面で使われますか?
通信事業者が法人顧客向けに提供する専用モバイルネットワークサービスで活用されています。たとえば、スタジアムでのライブ配信用に高帯域スライスを確保したり、建設現場の重機遠隔操作用に超低遅延スライスを割り当てたりする事例があります。日本国内ではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが5G SA商用サービスの中でスライシング対応を進めています。