対象試験と出題頻度

ユースケース図は、基本情報技術者・応用情報技術者で出題されるテーマです。

UMLのダイアグラム比較問題として定番化しており、「クラス図」「シーケンス図」「アクティビティ図」「状態マシン図」との違いを正確に区別できるかが問われます。

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対象試験:
基本情報技術者
応用情報技術者
出題頻度:
★★★★☆
ランクA(重要)必ず覚えておくべき

用語の定義

情報処理試験を勉強していると、「ユースケース図って何を描く図?クラス図やシーケンス図とどう違うの?」と混乱しがちです。

ユースケース図(Use Case Diagram)とは、一言で言うと

 「システムが提供する機能を、利用者(アクター)の視点から整理して表現するUMLの図

のことです。

イメージとしては、レストランのメニュー表です。

メニュー表には「お客様が注文できる料理の一覧」が書かれています。厨房の調理手順や食材の仕入れルートは書かれていません。

ユースケース図も同じで、「このシステムを使う人が何をできるか」だけをシンプルに一覧化した図です。

📊 ユースケース図の基本情報

項目 内容
英語名 Use Case Diagram
UMLでの分類 振る舞い図(Behavior Diagram)
主な利用工程 要求分析・要件定義
構成要素 アクター、ユースケース、関連、システム境界

解説

システム開発の初期段階では、「このシステムは誰のために、何をするものなのか」を開発チームと利用者の間で共有する必要があります。

しかし、文章だけで要件を書き出すと解釈のズレが起きやすく、抜け漏れも発生します。

この問題を解決するために、利用者とシステム機能の対応関係を視覚的に整理するユースケース図が生まれました。

4つの構成要素

ユースケース図を構成する要素は4つです。

それぞれの役割を正確に区別することが理解の土台になります。

要素 記号 役割
アクター 棒人間(人型) システムを利用する人や外部システム。人間だけでなく、連携する外部サービスやハードウェアもアクターになり得る
ユースケース 楕円 アクターがシステムを通じて遂行する単位業務。「商品を検索する」「注文する」のように動詞で記述する
関連 実線 アクターとユースケースのつながりを示す線
システム境界 長方形 開発対象の範囲を囲む枠。この中がシステム化の対象

図解:ECサイトのユースケース図

具体例として、ECサイトを題材にした簡易的なユースケース図を示します。

🧑

顧客

———— ———— ————

ECサイト

商品を検索する
商品を購入する
注文履歴を確認する
商品を管理する
————
🧑‍💼

管理者

▲ アクター(棒人間)はシステム境界の外側、ユースケース(楕円)は内側に配置する

include(包含)とextend(拡張)

ユースケース間には2種類の特別な関係があります。

include(包含):あるユースケースが別のユースケースの機能を「必ず」含む関係です。例えば「商品を購入する」は必ず「認証する」を含みます。点線矢印に «include» と記述します。

extend(拡張):特定の条件を満たしたときだけ追加で実行されるユースケースの関係です。例えば「商品を購入する」に対して、条件次第で「クーポンを適用する」が拡張されます。点線矢印に «extend» と記述します。

include / extend の関係図

商品を購入する

↓ «include»

認証する

(必ず実行される)

↑ «extend»

クーポンを適用する

(条件次第で実行される)

※ include:基底→包含先へ矢印 / extend:拡張側→基底へ矢印

他のUMLダイアグラムとの比較

ユースケース図を正しく位置づけるには、他の主要な図と「何を表現するか」で整理するのが近道です。

図の名称 何を表現するか 見分けキーワード
ユースケース図 アクターとシステム機能の対応関係 アクタ、相互作用、要求機能
クラス図 クラスの属性・操作とクラス間の静的な関連 属性、操作、汎化、集約
シーケンス図 オブジェクト間のメッセージを時系列で表現 ライフライン、メッセージ、時系列
アクティビティ図 処理の制御フロー(フローチャートのUML版) 制御の流れ、分岐、並行処理
状態マシン図 オブジェクトの状態遷移 トリガ、状態遷移、イベント

では、この用語が試験でどのように出題されるか見ていきましょう。

💡 ユースケース図の核心を3行で

・システムの機能を利用者(アクター)の視点から整理するUMLの振る舞い図
・構成要素は「アクター(棒人間)」「ユースケース(楕円)」「関連(実線)」「システム境界(長方形)」の4つ
・include(必ず含む)とextend(条件付きで拡張)の2つの関係を区別する


試験ではこう出る!

ユースケース図は、FE・APの午前問題でUMLダイアグラムの比較問題として繰り返し出題されています。

出題パターンは大きく2つに分かれます。

📊 過去問での出題実績

試験回 出題内容 問われたポイント
FE R3免除
問45
ユースケース図の説明として正しいものを選ぶ問題。 ・「システムとアクタの相互作用」が正解
・ステートチャート図・クラス図・DFDの説明がひっかけ
AP H28秋
午前 問46
上記FE R3問45と同一構成の問題(流用)。 ・FEとAPで同じ問題が出回る典型例
・選択肢の文言もほぼ同一
AP H27秋
午前 問64
要件定義で利用者と業務機能を分離して表現する図を選ぶ問題。 ・「利用者と業務機能の分離」がユースケース図の特徴
・アクティビティ図・オブジェクト図・クラス図がひっかけ
AP H23秋
午前 問43
ユースケース図でシステムと相互作用する外部システムを選ぶ問題。 ・正解は「アクタ」
・インスタンス・トリガ・リンクは構成要素ではない

📝 IPA試験での出題パターン

パターン1:「ユースケース図の説明を選べ」
4つのUMLダイアグラムの説明文が並び、ユースケース図に該当するものを選ぶ形式。ひっかけとして「クラスと関連」(クラス図)、「オブジェクトの状態遷移」(状態マシン図)、「データの流れ」(DFD)の説明が紛れ込む。キーワードは「アクタ」「相互作用」。

 

パターン2:「構成要素を選べ」
AP H23秋のように、ユースケース図の構成要素として正しいものを問う形式。「アクタ」を選ばせる問題が典型。「インスタンス」「トリガ」はユースケース図の構成要素ではないので除外する。

 

試験ではここまででOKです。includeやextendの矢印の向きまで問われることはほぼないので、深追いは不要です。


【確認テスト】理解度チェック

ここまでの内容を理解できたか、簡単なクイズで確認してみましょう。


Q. UMLのユースケース図の説明として、最も適切なものはどれでしょうか?

  • A. システムに対する要求機能を、利用者や外部システム(アクター)とシステムの相互作用として表現する。
  • B. クラスの属性・操作と、クラス間の汎化や集約などの静的な関連を表現する。
  • C. オブジェクト間でやり取りされるメッセージの流れを、時系列に沿って表現する。

正解と解説を見る

正解:A

解説:
ユースケース図は、システムが提供する機能(ユースケース)と、それを利用するアクターとの対応関係を表すUMLの振る舞い図です。要件定義の段階で「誰が何をできるか」を視覚的に整理する目的で使われます。

選択肢Bはクラス図の説明です。クラス図はシステムの静的構造を表す構造図であり、利用者視点の機能一覧を描くユースケース図とは役割が異なります。選択肢Cはシーケンス図の説明です。シーケンス図はオブジェクト間のメッセージを時間軸に沿って記述するものであり、アクターとシステム機能の対応を示すものではありません。


よくある質問(FAQ)

Q. ユースケース図のアクターは人間以外もなれますか?

なれます。アクターは「システムと相互作用する外部の存在」を表すため、外部システム(決済サービスや在庫管理システムなど)やハードウェア(バーコードリーダーなど)もアクターとして記述します。AP H23秋 午前問43では、まさにこの点が出題され、「システムと相互作用する外部システムは何か」の正解が「アクタ」でした。

Q. ユースケース図とDFD(データフローダイアグラム)はどう違いますか?

ユースケース図はUMLに属する振る舞い図で、「誰が何をできるか」を利用者視点で表現します。一方、DFDはUMLには含まれない構造化分析の手法で、「データがどこからどこへ流れるか」に着目してプロセス・データストア・データフロー・外部エンティティの4要素で整理します。過去問ではユースケース図の選択肢にDFDの説明(「データの流れに注目してシステムの機能を表現する」)が紛れ込むパターンがあるため、混同しないよう注意してください。

Q. 実務ではユースケース図はどの工程で使いますか?

主に要求分析・要件定義の工程で使います。クライアントやエンドユーザーとの打ち合わせで「このシステムはこういう人がこういう使い方をする」という認識を合わせるためのコミュニケーションツールとして機能します。技術的な詳細を含まないため、非エンジニアにも理解しやすいのが強みです。アジャイル開発ではユーザーストーリーの洗い出しにユースケース図を併用するチームもあります。

Q. ユースケース図の「ユースケース」と「機能」は同じ意味ですか?

厳密には異なります。ユースケースは「アクターがシステムとのやり取りを通じて達成する一連の目的」を指し、単なる機能の羅列ではありません。例えば「ログインする」は機能ですが、ユースケースとしては「認証を経て個人ページにアクセスする」という利用者の目的を表します。ただし、IPA試験の範囲では「システムの機能をアクター視点で表現したもの」と理解していれば得点に支障はありません。