対象試験と出題頻度

広域イーサネットは、基本情報技術者・応用情報技術者で出題されるテーマです。

WAN回線サービスの比較問題や、午後のネットワーク設計問題で登場し、「IP-VPN」「インターネットVPN」「専用線」との特徴の違いを正確に区別できるかがポイントになります。

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対象試験:
基本情報技術者
応用情報技術者
出題頻度:
★★☆☆☆
ランクC(応用)余裕があれば覚える

用語の定義

情報処理試験を勉強していると、「広域イーサネットって何?IP-VPNと何が違うの?」と混乱しがちです。

広域イーサネット(Wide Area Ethernet)とは、一言で言うと

 「通信事業者の閉域網を利用して、離れた拠点のLAN同士をレイヤ2(データリンク層)で直接つなぐWANサービス」

のことです。

イメージとしては、「東京オフィスと大阪オフィスの間に、見えない超長いLANケーブルを1本引いてくれるサービス」です。

 

普段オフィスの中でPCをLANケーブルで接続するのと同じ感覚で、数百km離れた拠点同士を通信事業者の網を介してつなぎます。

利用者から見ると、まるで1つの大きなLANの中にいるかのように通信できる――これが広域イーサネットの考え方です。

📊 広域イーサネットの基本情報

項目 内容
英語名 Wide Area Ethernet(Ethernet WAN)
動作レイヤ レイヤ2(データリンク層)
ネットワーク種別 通信事業者が提供する閉域網(WAN)サービス
最大の特徴 IP以外のプロトコルも利用でき、ネットワーク設計の自由度が高い

解説

企業が複数の拠点をもつ場合、拠点間でデータをやり取りするためのWAN回線が必要です。

かつてはフレームリレーやATMといった技術が使われていましたが、LAN側で主流のイーサネット規格とは異なるため、接続にプロトコル変換が必要でした。

 

「LAN側と同じイーサネットのフレームをそのままWANでも使えないか」という発想から生まれたのが広域イーサネットです。

▶ 広域イーサネットの仕組み(クリックで展開)

各拠点のレイヤ2スイッチ(L2スイッチ)から、通信事業者が運用する広域のイーサネット網に直接接続します。事業者の網内ではVLANやMPLSといった技術で顧客ごとの通信を論理的に分離し、他の契約者のデータと混ざらないようにしています。

レイヤ2で接続するため、拠点間の通信にはイーサネットフレーム(MACフレーム)がそのまま流れます。上位層のプロトコルはIPに限定されず、IPX/SPXや独自プロトコルなども透過的に運べる点が特徴です。

ただし、通信事業者側では経路制御(ルーティング)を行いません。拠点側に設置したルータでルーティング設定を行う必要があるため、ネットワーク設計の自由度は高い反面、構築・運用の難易度も上がります。

▶ IP-VPNとの比較(クリックで展開)

ここだけは確実に押さえてください。広域イーサネットとIP-VPNは、どちらも通信事業者の閉域網を利用するWANサービスですが、動作するレイヤが異なります。

項目 広域イーサネット IP-VPN
動作レイヤ レイヤ2(データリンク層) レイヤ3(ネットワーク層)
利用プロトコル IP以外も利用可能 IPのみ
ルーティング 拠点側で設定が必要 通信事業者側が実施
設計自由度 高い(自由な経路設計が可能) 低い(事業者の設計に依存)
運用負担 大きい 小さい

一言で整理すると、「レイヤ2で自由に設計したいなら広域イーサネット、レイヤ3で手軽に接続したいならIP-VPN」です。

では、この用語が試験でどのように出題されるか見ていきましょう。

💡 広域イーサネットの核心を3行で

・通信事業者の閉域網を使い、離れた拠点のLAN同士をレイヤ2で接続するWANサービス
・IP-VPNがレイヤ3で動作するのに対し、広域イーサネットはレイヤ2で動作する
・ルーティングを拠点側で行うため設計の自由度が高いが、運用負担も大きい


試験ではこう出る!

広域イーサネットは、午前問題ではWANサービスの比較問題の選択肢として登場し、午後問題ではネットワーク設計のメインテーマとして繰り返し取り上げられています。

午前・午後で出題のされ方が大きく異なるため、それぞれ分けて整理します。

📊 過去問での出題実績(クリックして表示)
試験回 出題内容 問われたポイント
AP H31春
午前 問32
複数のISP回線を使用した冗長化構成を表す用語を選ぶ問題。広域イーサネットは誤りの選択肢として登場。 ・正解はマルチホーミング
・広域イーサネット、IP-VPN、インターネットVPNの定義を区別できるか
AP H27秋
午後 問5
広域イーサネット網とインターネットVPNを併用した拠点間ネットワーク設計。冗長化方式の選定を問う。 ・帯域保証がテレビ会議に適する根拠
・インターネットVPNとの使い分け
AP H28秋
午後 問5
本社と支社を広域イーサネットで接続した構成で、必要帯域の計算を求める問題。 ・LANと広域イーサネットの接続箇所で帯域が狭くなる
・輻輳発生条件の理解
AP R7秋
午後 問5
クラウドサービス移行に伴うネットワーク構成変更。広域イーサネット網を含む拠点間接続を題材とした設計問題。 ・閉域網と公衆回線の特性の違い
・拠点追加時のアドレス設計

📝 IPA試験での出題パターン

パターン1:午前のWANサービス区別問題
「広域イーサネット」「IP-VPN」「インターネットVPN」「マルチホーミング」などの用語の定義を正確に選ばせる形式。「レイヤ2」「閉域網」「イーサネットフレームをそのまま転送」がキーワード。

 

パターン2:午後のネットワーク設計問題
応用情報の午後問5(ネットワーク)では、広域イーサネット網を使った複数拠点の接続構成がほぼ定番のシナリオになっている。帯域計算、ルーティングテーブルの穴埋め、冗長化方式の選定と理由記述が頻出。

 

午前対策としては「レイヤ2の閉域WANサービス」という一言で即答できる状態にしておけば十分です。午後対策まで踏み込む場合は、IP-VPNやインターネットVPNとの帯域保証の有無まで押さえてください。


【確認テスト】理解度チェック

ここまでの内容を理解できたか、簡単なクイズで確認してみましょう。


Q. 広域イーサネットの説明として、最も適切なものはどれでしょうか?

  • A. 通信事業者が提供する閉域IP網にレイヤ3で接続し、事業者側がルーティングを行うWANサービスである。
  • B. 通信事業者の閉域網を利用して、離れた拠点のLAN同士をレイヤ2で接続し、イーサネットフレームをそのまま転送できるWANサービスである。
  • C. IPsec等の暗号化プロトコルを利用し、インターネット回線上に仮想的な専用線を構築するWANサービスである。

正解と解説を見る

正解:B

解説:
広域イーサネットは、通信事業者の閉域網を介して拠点間をレイヤ2(データリンク層)で接続し、イーサネットフレームをそのまま伝送できるWANサービスです。

選択肢AはIP-VPNの説明です。IP-VPNはレイヤ3で動作し、通信事業者側がMPLSを用いたルーティングを行います。利用可能なプロトコルがIPに限定される点も広域イーサネットとは異なります。選択肢CはインターネットVPNの説明です。公衆回線(インターネット)を利用するためコストは低いですが、帯域は保証されずベストエフォート型となります。


よくある質問(FAQ)

Q. 広域イーサネットとインターネットVPNはどちらが安いですか?

一般的にインターネットVPNのほうが安価です。インターネットVPNは公衆回線を利用するため回線コストが低く抑えられます。一方、広域イーサネットは通信事業者の閉域網を専用的に利用するため、帯域保証や通信品質が安定する分、月額費用は高くなります。コストと品質のトレードオフで選択するのが実務の基本です。

Q. 広域イーサネットはSD-WANに置き換わりつつあるのですか?

SD-WAN(Software Defined WAN)は、広域イーサネットやインターネットVPNといった複数のWAN回線をソフトウェアで統合管理する技術です。広域イーサネットそのものを「置き換える」というより、広域イーサネットをSD-WANの一部として組み込んで活用するケースが増えています。試験範囲ではSD-WANの深い知識は問われないため、「WANの管理を自動化・最適化する仕組み」程度の理解で構いません。

Q. 広域イーサネットでは本当にIP以外のプロトコルが使われていますか?

現在の企業ネットワークはほぼIP一色であり、IPX/SPXなど非IPプロトコルを実運用で使うケースはほとんどありません。ただし、製造業のFA(ファクトリーオートメーション)分野では独自プロトコルが稼働している現場もあり、こうした環境で広域イーサネットが選ばれることがあります。試験では「IP以外も使える=レイヤ2だから」という理屈を押さえておけば十分です。