負荷分散クラスタは、基本情報技術者試験・応用情報技術者試験のシステム構成分野で問われるテーマです。HAクラスタ(ホットスタンバイ)との比較問題が定番化しているため、両者の違いを正確に押さえることが得点のカギになります。
対象試験と出題頻度
負荷分散クラスタは、基本情報技術者・応用情報技術者で出題されるテーマです。
システム構成要素の分野で登場し、HAクラスタ(フェールオーバクラスタ)やデュアルシステム・デュプレックスシステムとの違いを正確に区別できるかが問われます。
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基本情報技術者
応用情報技術者
★★★☆☆
ランクB(標準)覚えておくと有利
用語の定義
情報処理試験を勉強していると、「負荷分散クラスタとHAクラスタって何が違うの?」と混乱しがちです。
負荷分散クラスタ(Load Balancing Cluster)とは、一言で言うと
「複数のサーバを同時に稼働させ、ロードバランサでリクエストを振り分けることで、処理性能を向上させるクラスタ構成」
のことです。
イメージとしては、「ファミレスのウェイティングボード」です。
入口のスタッフが空いている席を見て「3番テーブルへどうぞ」「5番テーブルへどうぞ」と案内すれば、特定のテーブルだけに客が集中しません。全テーブルを均等に使うことで回転率が上がり、お店全体の処理能力が最大化されます。
負荷分散クラスタも同じで、ロードバランサが「入口のスタッフ」、各サーバが「テーブル」に相当します。
📊 負荷分散クラスタの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 英語名 | Load Balancing Cluster |
| 分類 | クラスタシステムの一種(性能向上型) |
| 主な構成要素 | ロードバランサ(LB)+ 複数の実サーバ |
| 最大の目的 | 処理負荷の分散によるスループット向上・拡張性の確保 |
解説
Webサービスの利用者が増えると、1台のサーバでは処理が追いつかなくなります。
サーバのスペックを上げる「スケールアップ」には物理的な上限があるため、サーバの台数を増やして処理を分散する「スケールアウト」が現実的な解決策です。
負荷分散クラスタは、このスケールアウトを実現するための代表的なシステム構成です。
負荷分散クラスタの構成と動作
クライアントからのリクエストはまずロードバランサが受け取り、あらかじめ設定された振り分けアルゴリズム(ラウンドロビン、最小コネクション数など)に従って各サーバへ転送します。
すべてのサーバが通常時から同時に稼働している点がポイントです。
負荷分散クラスタの構成図
クライアントA
クライアントB
クライアントC
ロードバランサ(LB)
リクエストを各サーバへ振り分け
サーバ1
● 稼働中
サーバ2
● 稼働中
サーバ3
● 稼働中
▲ 全サーバが通常時から同時に稼働し、LBがリクエストを均等に配分する
HAクラスタとの決定的な違い
クラスタ構成には大きく「負荷分散クラスタ」と「HA(High Availability)クラスタ」の2種類があります。
最大の違いは「待機系サーバの扱い」です。
| 比較項目 | 負荷分散クラスタ | HAクラスタ(ホットスタンバイ) |
|---|---|---|
| 目的 | 処理性能(スループット)の向上 | 可用性の確保(障害時も止まらない) |
| 通常時の サーバ状態 |
全サーバが同時に処理を実行 | 現用系のみ稼働、待機系はスタンバイ |
| 障害発生時 | 残りのサーバに負荷が集中し、スループットが低下する | 待機系に切り替え(フェールオーバー)し、スループットを維持 |
| 拡張性 | サーバ追加でスケールアウトが容易 | 同一仕様の待機系が必要でコストが高い |
| キーワード | ロードバランサ、振り分け、スケールアウト | フェールオーバー、待機系、冗長化 |
負荷分散クラスタ vs HAクラスタ(ホットスタンバイ)の構成比較
負荷分散クラスタ
全台が同時に処理を担当
HAクラスタ(ホットスタンバイ)
待機系は障害発生まで処理しない
関連するシステム構成との位置づけ
負荷分散クラスタを正確に理解するには、他のシステム構成方式と「目的」で整理するのが近道です。
| 構成方式 | 目的 | 見分けキーワード |
|---|---|---|
| 負荷分散クラスタ | 処理性能の向上(スケールアウト) | LB、振り分け、全台同時稼働 |
| HAクラスタ | 可用性の確保(障害時も継続) | フェールオーバー、待機系、切替え |
| デュアルシステム | 信頼性の向上(結果照合) | 同一処理、照合、二重化 |
| デュプレックスシステム | コストを抑えた冗長化 | 現用系・待機系、異なる処理を並行 |
では、この用語が試験でどのように出題されるか見ていきましょう。
💡 負荷分散クラスタの核心を3行で
・ロードバランサで全サーバにリクエストを振り分け、処理性能を向上させる構成
・HAクラスタとの違いは「通常時から全台稼働か、障害時に待機系へ切り替えか」
・障害時にはスループットが低下する(HAクラスタは待機系への切替えで維持する)
試験ではこう出る!
負荷分散クラスタは、FE・APの午前問題でシステム構成の比較問題として出題されています。
出題パターンは「HAクラスタとの特徴比較」が中心です。
📊 過去問での出題実績
| 試験回 | 出題内容 | 問われたポイント |
|---|---|---|
| FE H28秋 午前 問14 |
ロードバランサを使用した負荷分散クラスタ構成と比較した場合の、ホットスタンバイ形式によるHAクラスタ構成の特徴を選ぶ問題。 | ・HAクラスタは「待機系に切替えてスループット維持」が正解 ・「処理を分散」「拡張性を確保」は負荷分散クラスタ側の特徴(ひっかけ) |
| AP H24秋 午後 問5 |
ロードバランサを用いたWebシステムのネットワーク構成に関する問題。 | ・L4/L7スイッチの役割 ・セッション維持(スティッキーセッション)の考え方 |
📝 IPA試験での出題パターン
パターン:「HAクラスタとの特徴比較」
FE H28秋 問14がまさにこのパターンです。4つの選択肢それぞれが異なるシステム構成の特徴を述べており、「ホットスタンバイ形式のHAクラスタ構成の特徴はどれか」を問います。ひっかけとして「処理を均等に分散できる」「拡張性が確保できる」など、負荷分散クラスタ側の特徴が混ぜ込まれます。
ここだけは確実に押さえてください。試験で問われるのは「負荷分散クラスタ=全台同時稼働で性能向上」「HAクラスタ=待機系に切り替えて可用性確保」という対比です。両者の障害時の挙動の違いまで答えられれば試験ではここまででOKです。
【確認テスト】理解度チェック
ここまでの内容を理解できたか、簡単なクイズで確認してみましょう。
Q. ロードバランサを使用した負荷分散クラスタ構成の特徴として、最も適切なものはどれでしょうか?
- A. 同一仕様の待機系サーバを用意し、現用系に障害が発生した場合に待機系へ処理を引き継ぐことで、障害発生後もスループットを維持できる。
- B. 2系統のシステムで同一の処理を独立に実行し、処理結果を定期的に照合することで信頼性を高める。
- C. 複数のサーバに処理を振り分けて各サーバの負荷を軽減し、将来の処理量の増大に対して拡張性を確保できる。
正解と解説を見る
正解:C
解説:
負荷分散クラスタ構成は、ロードバランサが複数サーバにリクエストを振り分けることで処理負荷を分散し、サーバ追加による拡張性を確保できるシステム構成です。
選択肢Aはホットスタンバイ形式のHAクラスタ構成の特徴です。待機系への切替えで障害後のスループットを維持する点が負荷分散クラスタとは異なります。選択肢Bはデュアルシステムの特徴です。同一処理を二重実行して結果を照合する仕組みであり、リクエストの振り分けは行いません。
よくある質問(FAQ)
Q. 負荷分散クラスタでサーバが1台故障したらどうなりますか?
ロードバランサのヘルスチェック機能により、故障したサーバは振り分け対象から自動的に除外されます。残りのサーバで処理を継続するため、サービスが完全停止することはありません。ただし、処理を担うサーバの台数が減るため、1台あたりの負荷が増加し、全体のスループットは低下します。これが、HAクラスタ(待機系への切替えでスループットを維持)との違いとしてFE H28秋 問14で出題されたポイントです。
Q. 負荷分散クラスタとDNSラウンドロビンはどう違いますか?
DNSラウンドロビンは、DNSサーバが名前解決時に複数のIPアドレスを順番に返すことでアクセスを分散する方式です。導入コストが低い反面、DNSにはサーバの死活監視機能がないため、故障したサーバにもリクエストが飛び続けるリスクがあります。一方、ロードバランサを用いた負荷分散クラスタはヘルスチェックで障害サーバを除外できるうえ、セッション維持や重み付けなど高度な制御が可能です。
Q. 実務で負荷分散クラスタはどのような場面で使われていますか?
ECサイトやSNSなど、大量の同時アクセスが発生するWebサービスで広く使われています。クラウド環境ではAWSのELB(Elastic Load Balancing)やAzure Load Balancerといったマネージドサービスが提供されており、トラフィックの増減に応じてサーバ台数を自動で増減する「オートスケーリング」と組み合わせるのが一般的です。
Q. 負荷分散クラスタとHAクラスタを組み合わせることはできますか?
できます。実務では両方を併用する構成が一般的です。通常時はロードバランサで複数サーバに処理を分散しつつ、ロードバランサ自体を二重化してフェールオーバー構成にする、という設計がよく採用されます。ただし、IPA試験では「負荷分散クラスタ」と「HAクラスタ」を対比的に問う出題が中心なので、まずは両者を別物として整理するのが得点への近道です。