情報処理試験を勉強していると、「HAクラスタって結局どういう仕組み?負荷分散クラスタと何が違うの?」と混乱しがちです。この記事では、HAクラスタの仕組みを図解で整理し、試験で得点できるレベルまで一気に引き上げます。
対象試験と出題頻度
HAクラスタは、基本情報技術者・応用情報技術者で出題されるテーマです。
高可用性(High Availability)の中核を成す構成であり、負荷分散クラスタとの違いやフェールオーバーの仕組みを正確に区別できるかが問われます。
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基本情報技術者
応用情報技術者
★★★☆☆
ランクB(標準)覚えておくと有利
用語の定義
HAクラスタ(High Availability Cluster)とは、一言で言うと
「複数のサーバを組み合わせ、障害時に自動で処理を引き継ぐことでシステム停止を防ぐクラスタ構成」
のことです。
イメージとしては、「控えの選手付きのサッカーチーム」です。
スタメンの選手がケガで動けなくなったら、ベンチにいた控え選手がすぐにピッチへ入って試合を続行する。観客から見れば試合は止まっていません。
HAクラスタもこれと同じで、主役のサーバが壊れても控えのサーバが瞬時に処理を引き受け、利用者には「止まった」と感じさせません。
HAクラスタの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 英語名 | High Availability Cluster |
| 分類 | システムの信頼性設計(コンピュータシステム) |
| 代表的な形式 | ホットスタンバイ(アクティブ/スタンバイ)構成 |
| 主な構成要素 | 主系(現用系)サーバ、待機系(予備系)サーバ、ハートビート監視 |
| 目的 | 可用性の向上(サービス停止時間の最小化) |
解説
サーバが1台しかないシステムでは、その1台が故障した瞬間にサービスが全面停止します。銀行のATMやECサイトの決済処理のように「数秒でも止まると大損害」になるシステムでは、この構成では許されません。
この「1台だけに依存する危うさ」を排除するために生まれたのがHAクラスタです。
フェールオーバーとハートビート
HAクラスタの基本動作は、「主系サーバ(現用系)」と「待機系サーバ(予備系)」の2台構成で成り立ちます。主系は通常どおり業務処理を行い、待機系は同一仕様のまま起動状態で控えています。
主系は一定間隔でハートビート(心拍信号)を待機系へ送信し続けます。
待機系はこのパケットを監視し、一定時間途絶えると「主系に障害が発生した」と判断して自動的に処理を引き継ぎます。この自動切替えがフェールオーバーです。
障害から復旧した後に、処理を主系へ戻す操作はフェールバックと呼ばれます。
HAクラスタの動作フロー
① 正常時
稼働中
← ハートビート →
スタンバイ中
② 障害発生 → フェールオーバー
✕ 障害発生
✓ 自動で稼働開始
③ 復旧後 → フェールバック
復旧完了
再びスタンバイへ
フェールオーバー=障害時の自動切替え / フェールバック=復旧後に主系へ戻す操作
負荷分散クラスタとの比較
同じ「クラスタ構成」でも、HAクラスタと負荷分散クラスタは目的がまるで異なります。
ここだけは確実に押さえてください。
| 比較項目 | HAクラスタ (アクティブ/スタンバイ) |
負荷分散クラスタ (アクティブ/アクティブ) |
|---|---|---|
| 目的 | サービスを止めない(可用性重視) | 処理能力を上げる(性能重視) |
| サーバの動き | 主系1台が稼働、待機系は控えで待つ | 全サーバが同時稼働し、ロードバランサで処理を振分け |
| 障害時 | 待機系が丸ごと引き継ぎ → スループット維持 | 残りのサーバに処理が集中 → スループット低下 |
| 拡張性 | サーバ追加で性能は上がらない | サーバ追加で処理能力を拡張できる |
もう少し詳しく知りたい方はクリック
HAクラスタの待機方式にはホットスタンバイとコールドスタンバイがあります。ホットスタンバイは待機系の電源を入れたまま同期を取り続ける方式で、切替えは数秒〜数十秒で完了します。コールドスタンバイは待機系の電源を落とした状態で保管する方式で、復旧にはOS起動やアプリ設定の時間が加わり、数分〜数十分かかります。
HAクラスタとは別にHPCクラスタ(High Performance Computing Cluster)という分類もあります。こちらは可用性ではなく計算性能を高めるための構成で、スーパーコンピュータのように複数台を束ねて膨大な演算処理を実行する用途で使われます。
また、障害復旧後に処理を主系へ戻す操作はフェールバックと呼ばれます。フェールオーバーとフェールバックは対になる概念なので、セットで覚えておくと便利です。
では、この用語が試験でどのように出題されるか見ていきましょう。
HAクラスタの核心を3行で
・主系+待機系の構成で、障害時にフェールオーバーで自動切替えする
・ハートビートで主系の死活を監視し、途絶えたら待機系が即座に処理を引き継ぐ
・負荷分散クラスタとは「目的」「障害時のスループット変化」が根本的に異なる
試験ではこう出る!
FE・APの午前問題では、HAクラスタは「構成の特徴を選ばせる」「障害時に働く機能名を選ばせる」の2パターンで繰り返し出題されています。
過去問での出題実績
| 試験回 | 出題内容 | 問われたポイント |
|---|---|---|
| FE H28秋 午前 問14 |
ホットスタンバイ形式のHAクラスタ構成の特徴を、負荷分散クラスタと比較して選ぶ。 | ・「待機系に処理を引き継ぎ、スループット維持」が正解 ・負荷分散側の特徴3つがひっかけ |
| AP H27秋 午前 問12 |
クラスタリングシステムでノード障害時に信頼性を向上させる機能を選ぶ。 | ・「フェールオーバー」が正解 ・ホットプラグ・再起動・フェールバックがひっかけ |
| AP H23特別 午前 問16 |
フェールオーバーの説明として正しいものを選ぶ。 | ・「処理やデータを他の処理装置に自動的に引き継ぐ」が正解 ・フェールセーフ・フールプルーフ・フォールトアボイダンスの説明がひっかけ |
IPA試験での出題パターン
パターン1:「HAクラスタ vs 負荷分散クラスタの特徴を選べ」
負荷分散クラスタの特徴(「処理を均等に分散」「拡張性が高い」「データベース共有が必要」)がひっかけとして並び、HAクラスタのホットスタンバイ形式の特徴を選ばせる。「待機系サーバ」「スループット維持」が正解の目印。
パターン2:「障害時に働く機能名を選べ」
フェールオーバー・フェールバック・ホットプラグ・フェールセーフを混ぜて出す。フェールオーバーは「障害時の自動切替え」、フェールバックは「復旧後に主系へ戻す」。この区別さえできれば確実に取れる。
試験ではここまででOK。ハートビートの具体的なプロトコルやクラスタソフトウェアの製品名までは問われないので、深追いは不要です。
【確認テスト】理解度チェック
ここまでの内容が頭に入っているか、1問で確認しておきましょう。
Q. ロードバランサを使用した負荷分散クラスタ構成と比較した場合の、ホットスタンバイ形式によるHAクラスタ構成の特徴として、最も適切なものはどれか。
- A. 待機系サーバとして同一仕様のサーバが必要になるが、障害発生時には待機系に処理を引き継ぐので、スループットを維持することができる。
- B. 処理を均等にサーバへ分散できるので、サーバマシンが有効に活用でき、将来の処理量増大に対して拡張性が確保できる。
- C. 障害が発生すると稼働中の他のサーバに処理を分散させるので、稼働中のサーバの負荷が高くなり、スループットが低下する。
正解と解説を見る
正解:A
解説:
ホットスタンバイ形式では、主系と同じ仕様の待機系サーバを常時起動した状態で控えさせておき、主系に障害が起きた瞬間に待機系が丸ごと処理を引き継ぎます。待機系は主系と同等の処理能力を持つため、切替え後もスループットは低下しません。FE H28秋 午前 問14で実際に出題された論点です。
選択肢Bは負荷分散クラスタの利点です。ロードバランサで複数サーバに処理を均等に振り分ける構成であり、HAクラスタのホットスタンバイとは目的が異なります。選択肢Cも負荷分散クラスタで障害が起きた場合の現象です。HAクラスタでは「残りのサーバに負荷が集中する」状況は発生しません。
よくある質問(FAQ)
Q. HAクラスタとデュアルシステムは何が違いますか?
HAクラスタは主系1台+待機系1台の構成で、通常は主系だけが処理を行います。待機系は主系が壊れたときに初めて稼働する「控え」です。一方、デュアルシステムは2台のコンピュータが常に同じ処理を同時実行し、結果を照合(クロスチェック)することで信頼性を高めます。HAクラスタは「止めない」が目的、デュアルシステムは「間違えない」が目的という点が根本的な違いです。
Q. HAクラスタで主系と待機系の両方が同時に壊れたらどうなりますか?
2台同時に障害が発生すればサービスは停止します。この「両系統同時障害」のリスクを下げるため、実務では主系と待機系を物理的に離れたデータセンター(異なるアベイラビリティゾーン)に配置する設計が一般的です。同一ラック・同一電源に2台を置くと、電源障害や空調故障で共倒れになるため、物理的な分離が重要になります。
Q. HPCクラスタとHAクラスタの違いは何ですか?
HPCクラスタ(High Performance Computing Cluster)は「計算性能を高める」ための構成で、複数のマシンを束ねて1台のスーパーコンピュータのように使います。数値解析やシミュレーションなど科学技術計算の分野で活用されます。対してHAクラスタは「可用性を高める」ための構成です。目的が「速さ」なのか「止めないこと」なのかで使い分けます。
Q. 実務ではHAクラスタをどうやって構築しますか?
オンプレミス環境では、LinuxのPacemaker+Corosyncや、Windows Server Failover Clusteringなどのクラスタソフトウェアを導入して構築します。クラウド環境では、AWSのマルチAZ構成やAzureの可用性セット(Availability Set)を使うことで、クラスタソフトウェアを自前で用意せずともHAクラスタ相当の冗長構成が実現できます。ただし、IPA試験の範囲では具体的な製品名やサービス名は問われません。