情報処理試験を勉強していると、「機能要件と非機能要件って何が違うの?」「非機能要件って具体的に何を書くの?」と迷う場面が必ず出てきます。

ここでは、両者の違いとIPAが定める6大項目を、日常の例え話と図解で一気に整理します。

対象試験と出題頻度

機能要件・非機能要件は、ITパスポート・基本情報技術者・応用情報技術者のいずれでも出題されるテーマです。

可用性や性能といった非機能要件の具体項目を絡めた問題が定番化しており、「どの選択肢が機能要件で、どれが非機能要件か」を正確に仕分けできるかが得点の分かれ目になります。

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対象試験:
ITパスポート
基本情報技術者
応用情報技術者
出題頻度:
★★★★☆
ランクA(重要)必ず覚えておくべき

用語の定義

まず、機能要件と非機能要件それぞれの意味を押さえましょう。

機能要件(Functional Requirements)とは、一言で言うと

 「システムが”何をするか”を定めた要件

のことです。

一方、非機能要件(Non-Functional Requirements)とは

 「システムが”どのレベルで動くか”を定めた、機能以外のすべての要件

のことです。

イメージとしては、レストランの注文で考えると分かりやすいです。

「カレーを作ってほしい」は機能要件です。「何を作るか」という依頼そのものだからです。

一方、「注文から10分以内に提供してほしい」「アレルギー対応で安全に作ってほしい」は非機能要件です。料理の「品質・速度・安全性」といった条件だからです。

📊 機能要件 / 非機能要件の基本情報

項目 機能要件 非機能要件
英語名 Functional Requirements Non-Functional Requirements
一言で システムが「何をするか」 システムが「どのレベルで動くか」
具体例 注文入力、在庫照会、帳票出力 応答速度、稼働率、セキュリティ強度
参照規格 共通フレーム2013 IPA 非機能要求グレード / JIS X 25010

解説

システム開発の要件定義では、まず「このシステムで実現すべき業務処理」を洗い出します。これが機能要件です。

しかし、業務処理が動くだけでは不十分で、「どの程度の応答速度が必要か」「障害時に何時間以内に復旧するか」といった品質や制約条件も決めなければなりません。この”機能以外のすべて”が非機能要件にあたります。

非機能要件を曖昧にしたままプロジェクトを進めると、本番稼働後に「遅い」「止まる」「セキュリティが甘い」といったトラブルが噴出します。

IPAはこの問題を解消するため、「非機能要求グレード」という指標を公開し、ユーザとベンダの間で認識を合わせるための枠組みを整備しました。

非機能要求グレードの6大項目

IPAの非機能要求グレードでは、非機能要件を以下の6カテゴリに整理しています。ここだけは確実に押さえてください。

項目 内容 身近なイメージ
可用性 サービスを継続的に利用できる度合い(稼働率、障害復旧時間など) 24時間営業のコンビニ
性能・拡張性 応答速度、処理量、将来的なユーザ増加への耐性 高速道路の車線数
運用・保守性 監視体制、バックアップ頻度、障害対応手順 ビルの管理人室
移行性 旧システムから新システムへの切替手順・期間 引っ越しの段取り
セキュリティ 認証・認可、暗号化、不正アクセス対策 家の鍵と防犯カメラ
システム環境・エコロジー 設置場所の制約、消費電力、CO2排出量 サーバルームの空調管理

図解:機能要件と非機能要件の関係

両者がシステム全体のどこに位置づけられるかを図で整理します。

システム要件の全体像
業務要件
業務の在り方・手順・ルール・制約
⚙️ 機能要件
・注文を受け付ける
・在庫を照会する
・帳票を出力する
→「何をするか」
📐 非機能要件
稼働率 99.9%以上
・応答3秒以内
・障害時は半日で復旧
→「どのレベルで動くか」

▲ 業務要件の下に機能要件・非機能要件が並列する構造

機能要件と非機能要件の見分け方

迷ったときは「その要件がなくなると業務処理そのものが成立しないか」で判断します。

成立しないなら機能要件、処理は動くが品質やスピードが落ちるなら非機能要件です。

✅ 見分け練習:受注管理システムの例

要件の記述例 分類 理由
注文受付時に与信残金額を計算し、マイナスなら警告を表示する 機能要件 業務処理そのもの
障害発生時に半日以内でシステムを復旧できる 非機能要件 信頼性(復旧速度)の品質要求
開発言語にJavaを使用する 非機能要件 技術的な制約条件
受注情報を入力し、営業管理者が承認したものだけ出荷可能にする 機能要件 業務ルールとしての処理仕様

では、この用語が試験でどのように出題されるか見ていきましょう。

💡 機能要件 / 非機能要件の核心を3行で

・機能要件=「何をするか」、非機能要件=「どのレベルで動くか」
・IPAの非機能要求グレードは「可用性・性能/拡張性・運用/保守性・移行性・セキュリティ・システム環境/エコロジー」の6項目
・迷ったら「業務処理そのものか、品質・制約か」で判断する


試験ではこう出る!

機能要件・非機能要件の問題は、IP・FE・APのいずれでも午前の定番テーマです。出題パターンは大きく3つに分かれます。

📊 過去問での出題実績

試験回 出題内容 問われたポイント
AP R4春
問65
非機能要件の「使用性」に該当するものを選ぶ問題。 ・品質特性の副分類(習得性、時間効率性、回復性、移植性)の識別
・「4時間以内のトレーニングで操作可能」が使用性
FE R3免除
問64
受注管理システムで非機能要件に該当するものを選ぶ問題。 ・「障害時に半日以内で復旧」が非機能要件
・与信計算や承認フローは機能要件
AP H28秋
問65
非機能要件項目はどれかを選ぶ問題。 ・「可用性、性能、拡張性、運用性、保守性、移行性、セキュリティ、システム環境」が正解
・業務手順やシステム機能範囲は別の要件区分
FE H29春
問65
非機能要件の定義で行う作業を選ぶ問題。 ・「開発言語の技術要件を作成」が非機能要件の作業
・データの流れやインタフェースは別工程
IP H30春
問6
3つの要件から非機能要件だけを全て選ぶ問題。 ・「監視サイクル」「許容復旧時間」が非機能要件
・「データの流れ」は機能要件

📝 IPA試験での出題パターン

パターン1:「非機能要件に該当するものを選べ」
4つの要件記述が並び、非機能要件だけを選ばせる形式。ひっかけは「注文処理」「承認フロー」など業務処理そのものの記述。キーワードは「障害復旧」「稼働率」「応答時間」。

 

パターン2:「非機能要件項目を選べ」
業務要件・機能要件・システム化方針・非機能要件の4つの説明文が並び、非機能要件の定義に合致するものを選ぶ形式。「可用性、性能、セキュリティ」といった品質要素が列挙された選択肢が正解になる。

 

パターン3:「非機能要件の定義で行う作業を選べ」
開発工程の各作業内容が並び、非機能要件の定義に含まれるものを選ぶ形式。「技術要件の策定」「開発基準の作成」が該当し、「機能間のデータの流れの明確化」は機能要件の作業。

 

試験ではここまででOKです。6大項目をすべて暗記する必要はなく、「品質・制約=非機能要件」の判断軸を持っていれば得点できます。


【確認テスト】理解度チェック

ここまでの内容を理解できたか、簡単なクイズで確認してみましょう。


Q. システム開発の要件定義において、非機能要件に該当するものはどれでしょうか?

  • A. システム基盤に関わる可用性、性能、セキュリティ、運用・保守性などの品質や制約に関する項目。
  • B. 業務を遂行するために必要なアプリケーションの機能範囲や、機能間の情報の流れに関する項目。
  • C. 経営戦略や情報戦略に基づく、システム化が必要な業務課題や達成すべき目標に関する項目。

正解と解説を見る

正解:A

解説:
非機能要件は、システムに求められる品質要求や制約条件など、機能以外の要件を指します。可用性・性能・セキュリティ・運用保守性などが代表的な項目です。

選択肢Bは機能要件の説明です。アプリケーションが備えるべき機能や情報の流れは「システムが何をするか」に該当します。選択肢Cはシステム化方針(経営要件)の説明です。業務課題の特定や目標設定は要件定義の前段にあたる企画段階の活動であり、非機能要件には含まれません。


よくある質問(FAQ)

Q. 非機能要求グレードは誰が作ったものですか?

IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が策定・公開しています。ユーザ企業とベンダ企業の間で非機能要件の認識ズレを防ぐことを目的としたツールで、6大項目ごとにレベル分けされた「活用シート」や「樹系図」が無料で提供されています。実務で要件定義書を作成する際の参考資料として、SIer(システムインテグレーター)で広く使われています。

Q. 「業務要件」と「機能要件」は違うものですか?

違います。業務要件は「業務そのものの在り方・手順・ルール」を指し、必ずしもシステム化の話ではありません。業務要件を踏まえて「では、それをシステムの機能としてどう実現するか」を定めたものが機能要件です。共通フレーム2013では、業務要件→システム要件(機能要件+非機能要件)という階層構造が明示されています。過去問でもこの3区分を混同させるひっかけ選択肢がよく登場します。

Q. JIS X 25010の品質特性と非機能要求グレードの6大項目は同じものですか?

別のものです。JIS X 25010(ISO/IEC 25010)は「製品品質モデル」として、機能適合性・性能効率性・互換性・使用性・信頼性・セキュリティ・保守性・移植性の8つの品質特性を定義しています。一方、IPAの非機能要求グレードの6大項目は、JIS規格をベースにしつつも日本のシステム開発実務に合わせて再編成した分類です。試験ではどちらの切り口でも出題されるため、「品質・制約は非機能要件」という大原則で判断すれば対応できます。

Q. SLA(サービスレベル契約)と非機能要件の関係は?

SLAは、非機能要件で定めた品質目標をサービス提供者と利用者の間で契約として明文化したものです。例えば非機能要件で「稼働率99.9%以上」と定めた場合、SLAでは「99.9%を下回ったら月額料金の○%を返金」のように具体的なペナルティ条件まで記載します。つまり、非機能要件が”目標”で、SLAが”契約上の約束”という関係です。