対象試験と出題頻度

コストマネジメントは、基本情報技術者(FE)・応用情報技術者(AP)の午前問題で出題されるテーマです。

プロジェクトマネジメントの知識エリアの1つで、特にEVM(アーンドバリューマネジメント)の指標計算が午前問題の定番として繰り返し出題されています。

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対象試験:
基本情報技術者
応用情報技術者
出題頻度:
★★★☆☆
ランクB(標準)覚えておくと有利

用語の定義

情報処理試験を勉強していると、「コストマネジメントって結局、見積りのこと?それとも予算管理のこと?」と混乱しがちです。

コストマネジメント(Cost Management)とは、一言で言うと

 「プロジェクトを承認された予算内で完了させるために、コストを見積り・予算化・統制する一連の活動

のことです。

イメージとしては、家のリフォーム計画と家計簿です。

リフォームでは、まず工務店に「キッチン交換いくら、壁紙張替えいくら」と見積りを取り、合計300万円の予算を組みます。工事が始まったら、毎月「予定より使い過ぎていないか」を家計簿で確認し、超過しそうなら工事内容を調整します。

コストマネジメントも同じで、「見積り → 予算化 → 進捗にあわせた監視と調整」という流れでお金の流れを管理する活動です。

📊 コストマネジメントの基本情報

項目 内容
英語名 Project Cost Management
所属 PMBOKの10知識エリアの1つ
主なプロセス コストの見積り/予算の設定/コストのコントロール
代表的な技法 類推見積り、パラメトリック見積り、ボトムアップ見積り、EVM

解説

プロジェクトは「予算」「納期」「品質」の3つの制約の中で進められます。このうち「予算」の制約を扱うのがコストマネジメントです。

PMBOKガイド(プロジェクトマネジメントの国際的なガイドライン)では、コストマネジメントを3つのプロセスに分けて整理しています。

3つのプロセス

プロセス タイミング 何をするか
コストの見積り 計画時 作業(WBSの各要素)に必要な金額を算出する
予算の設定 計画時 見積りを集約し、時間軸に沿った予算(コストベースライン)を策定する
コストのコントロール 実行・監視時 実績と予算の差異を測定し、必要に応じて是正処置を取る

3プロセスの流れ

①見積り

各作業の
金額を算出

②予算の設定

合計し
ベースライン化

③コントロール

実績と比較し
差異を是正

▲ 計画フェーズ(①②)と実行フェーズ(③)で役割が分かれる

見積り技法の代表3種

「コストの見積り」プロセスで使う代表的な技法は3つあります。精度と必要情報量にトレードオフがあります。

技法 考え方 精度
類推見積り 過去の類似プロジェクトの実績から推定する(トップダウン)
パラメトリック見積り 「1画面あたり◯人日」のような単価×数量で算出する
ボトムアップ見積り WBSの最小単位ごとに積み上げて合計する

EVM(アーンドバリューマネジメント)

「コストのコントロール」で使う代表的な技法がEVMです。出来高(成果)を金額換算することで、「進捗の遅れ」と「コストの超過」を同じ物差しで測ります。

覚えるべき指標は3つだけです。

略号 名称 意味
PV Planned Value
(計画価値)
「ここまで作っているはず」という計画上の金額
EV Earned Value
(出来高)
「実際にここまで作れた」分を金額換算した値
AC Actual Cost
(実コスト)
「実際に使ってしまった」金額

この3つから、コスト差異と進捗差異が計算できます。

📐 EVMの基本計算式

指標 計算式 判定
CV(コスト差異) EV − AC プラス:予算内/マイナス:超過
SV(スケジュール差異) EV − PV プラス:進んでいる/マイナス:遅延
CPI(コスト効率) EV ÷ AC 1超:効率良/1未満:非効率
SPI(スケジュール効率) EV ÷ PV 1超:先行/1未満:遅延

※ 覚え方:差異は「引き算」、効率は「割り算」。基準は常にEV(出来高)。

EVMのグラフイメージ

時間とコストの関係(典型的な遅延・超過パターン)

コスト 時間 現時点 AC(実コスト) PV(計画) EV(出来高) CV = EV − AC (コスト超過) SV = EV − PV (進捗遅延)

▲ 現時点で AC > EV ならコスト超過(CVマイナス)/ PV > EV なら進捗遅延(SVマイナス)

では、この用語が試験でどのように出題されるか見ていきましょう。

💡 コストマネジメントの核心を3行で

・プロジェクトを承認された予算内で完了させるための知識エリア
・「見積り → 予算の設定 → コントロール」の3プロセスで構成される
・コントロールではEVMを使い、PV・EV・ACの3指標で進捗とコストを同時に評価する


試験ではこう出る!

FE・APの午前問題では、EVMの指標計算が圧倒的な頻度で問われます。3プロセスそのものよりも、PV・EV・ACから差異や効率を算出させる計算問題が中心です。

📊 過去問での出題実績

試験回 出題内容 問われたポイント
AP R5春
午前 問51
EVMで進捗状況を評価する指標を選ぶ問題。 ・SV(EV−PV)が正解
・CV・CPI等がひっかけ
AP R3秋
午前 問52
PV・EV・ACの数値からコスト効率(CPI)を計算させる問題。 ・CPI=EV÷AC
・1未満ならコスト超過と判定
FE R元秋
午前 問52
プロジェクトのコスト見積り技法を選ぶ問題。 ・類推・パラメトリック・ボトムアップの区別
・「過去の類似プロジェクトから」が類推見積りのキー
AP H30春
午前 問52
EVMでスケジュール遅延と予算超過を同時に表す状態を選ぶ問題。 ・EV<PV かつ AC>EV
・グラフ読み取り型のひっかけに注意

📝 IPA試験での出題パターン

パターン1:「EVMの計算問題」
PV・EV・ACの数値が与えられ、CV・SV・CPI・SPIのいずれかを計算させる形式。覚えるべき式は4本のみ。差異は「EV − ◯◯」、効率は「EV ÷ ◯◯」。引き算と割り算の使い分けがひっかけポイントです。

 

パターン2:「見積り技法の選択」
シナリオに対して適切な見積り技法を選ばせる形式。「過去の類似案件から」→類推、「単価×規模」→パラメトリック、「WBS要素を積上げ」→ボトムアップで即答できます。

 

パターン3:「プロセスの順序」
計画段階のプロセス順序を問う形式。「見積り→予算の設定」の順序が逆になっている選択肢がひっかけとして混ざります。ここだけは確実に押さえてください。


【確認テスト】理解度チェック

ここまでの内容を理解できたか、簡単なクイズで確認してみましょう。


Q. PMBOKにおけるコストマネジメントの説明として、最も適切なものはどれでしょうか?

  • A. プロジェクトに関わるステークホルダーを特定し、要求や期待を分析して合意形成を図る活動である。
  • B. プロジェクトを承認された予算内で完了させるために、コストの見積り・予算の設定・コストのコントロールを行う活動である。
  • C. プロジェクトの作業を期限内に完了させるために、アクティビティの定義・順序設定・所要期間の見積りを行う活動である。

正解と解説を見る

正解:B

解説:
選択肢Bは、PMBOKで定義されたコストマネジメントの目的(予算内完了)と、それを実現する3プロセス(見積り・予算の設定・コントロール)を正確に述べているため正解です。

選択肢Aはステークホルダーマネジメントの説明です。利害関係者の特定と合意形成を扱う知識エリアであり、お金の管理ではありません。選択肢Cはスケジュールマネジメントの説明です。アクティビティの定義や所要期間の見積りといったキーワードは、時間(納期)を管理する知識エリアに属するものであり、コストを扱う知識エリアの説明としては不適切です。


よくある質問(FAQ)

Q. EVMのEV(出来高)はどうやって測るのですか?

最も一般的なのは「完了したWBS要素の予算合計」で測る方法です。例えば予算100万円のタスクが完了したらEVに100万円が加算されます。進行中の作業は「50%完了したから50万円分」のように按分するか、開始時0%・完了時100%とする0/100ルールで扱います。プロジェクトの性質に応じて測定ルールを事前に決めておくのが実務のコツです。

Q. コストベースラインと予算は何が違うのですか?

コストベースラインは「時間軸に沿って積み上げた承認済みコスト計画」で、進捗管理の基準値として使われます。一方、総予算(BAC:Budget At Completion)はコストベースラインに「マネジメント予備」(想定外リスクへの備え)を加えた金額です。EVMの計算ではコストベースラインから導かれるPVが基準となり、マネジメント予備は通常含めません。

Q. ファンクションポイント法はコストマネジメントの技法ですか?

ファンクションポイント法はソフトウェアの「規模」を測る技法であり、直接的にはコスト見積りそのものではありません。ただし、算出した規模に単価を掛けることでパラメトリック見積りの入力として利用されます。試験では「ソフトウェア規模を機能の数と複雑さから求める」というキーワードがあればファンクションポイント法、と覚えれば十分です。

Q. CPIが0.8だったら、プロジェクトは続けるべきですか?

CPIが0.8ということは、1円分の価値を生むのに1.25円使っている計算になり、25%のコスト超過状態です。即中止という判断ではなく、原因分析(見積り誤り/生産性低下/スコープ膨張など)を行い、是正処置を取るのが定石です。残作業を現状の効率で完了した場合の総コスト予測(EAC=BAC÷CPI)を算出し、ステークホルダーと再合意するのが実務での標準的な対応です。