プロジェクトマネジメントを勉強していると、「資源マネジメントって結局、人の管理のこと?それともサーバーや備品の管理?」と混乱しがちです。本記事では、PMBOKの知識エリアの一つ「資源マネジメント」を、人的資源の観点から噛み砕いて解説します。
対象試験と出題頻度
資源マネジメント(人的資源管理)は、基本情報技術者・応用情報技術者の午前問題で出題されるテーマです。
プロジェクトマネジメントの知識エリアの一つとして、「コミュニケーション・マネジメント」「ステークホルダ・マネジメント」「コスト・マネジメント」との違いを正確に区別できるかが問われます。
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基本情報技術者
応用情報技術者
★★★☆☆
ランクB(標準)覚えておくと有利
用語の定義
資源マネジメント(人的資源管理/Resource Management)とは、一言で言うと
「プロジェクトを完遂するために必要な人材・物的資源を、計画的に確保・配置・育成・解放する管理活動」
のことです。
とりわけPMBOK第6版までは「人的資源マネジメント」と呼ばれ、メンバーの調達・育成・モチベーション維持が中心でした。第7版以降は物的資源も含めた「資源マネジメント」に拡張されています。
イメージとしては、「部活の監督業」です。
監督は、試合に勝つために必要なポジションを洗い出し、部員を集め、ポジションを割り当て、練習でスキルを伸ばし、引退まで面倒を見ます。
プロジェクトマネージャの仕事もこれと同じ構造で、必要な役割を定義し、メンバーを集め、配置し、育て、プロジェクト終了とともに送り出す、という一連の流れを担います。
📊 資源マネジメントの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 英語名 | Resource Management / Human Resource Management |
| 所属 | PMBOKの知識エリアの一つ |
| 対象 | 人的資源(チームメンバー)・物的資源(設備・材料) |
| 代表的なプロセス | 資源計画、要員の獲得、チームの育成・マネジメント |
解説
プロジェクトは「人がいて初めて回る」活動です。どれだけ予算とスケジュールが立派でも、適切なスキルを持つメンバーが揃わなければ動きません。
逆に、優秀な人材を集めても役割が不明確だと衝突が起き、生産性が落ちます。この「人の調達と運用」を体系化したのが本知識エリアの中核です。
4つの主要プロセス
PMBOKでは、人的資源に関する活動は大きく4段階に整理されます。
| プロセス | やること |
|---|---|
| ① 資源計画 | 必要な役割・スキル・人数を洗い出し、責任分担表(RACI/RAM)を作成する |
| ② 要員の獲得 | 社内アサインや外部調達でメンバーを確保する |
| ③ チームの育成 | 教育・OJTでスキル向上を図り、チームの結束を高める |
| ④ チームのマネジメント | パフォーマンスを追跡し、コンフリクトを解決する |
チーム編成のライフサイクル
プロジェクトのメンバーは、最初から最後まで同じ状態で関わるわけではありません。
「集める→育てる→働いてもらう→送り出す」という流れがあり、PM(プロジェクトマネージャ)はこのライフサイクル全体に責任を持ちます。下の図で各段階のインプット・アウトプットを整理します。
プロジェクトメンバーの流れ(5段階)
① 資源計画
② 要員の獲得
③ チームの育成
④ チーム運営
⑤ 資源の解放
| 段階 | PMの主な作業 |
|---|---|
| ① 資源計画 | 必要な役割・スキル・人数を洗い出し、責任分担表(RACI)を作る |
| ② 要員の獲得 | 事前任命やネゴシエーションで社内外からメンバーを集める |
| ③ チームの育成 | 研修・OJTで個人スキルを伸ばし、チームの結束を高める |
| ④ チーム運営 | 進捗確認、モチベーション管理、コンフリクト解決を行う |
| ⑤ 資源の解放 | プロジェクト完了後、メンバーを元部署や次案件へ送り出す |
図解:チーム編成のライフサイクル
プロジェクトのメンバーは、最初から最後まで同じ状態で関わるわけではありません。
PM(プロジェクトマネージャ)は「集める→育てる→働いてもらう→送り出す」というライフサイクル全体に責任を持ちます。
プロジェクトメンバーの流れ(5段階)
① 資源計画
② 要員の獲得
③ チームの育成
④ チーム運営
⑤ 資源の解放
| 段階 | PMの主な作業 |
|---|---|
| ① 資源計画 | 必要な役割・スキル・人数を洗い出し、責任分担表(RACI)を作る |
| ② 要員の獲得 | 事前任命やネゴシエーションで社内外からメンバーを集める |
| ③ チームの育成 | 研修・OJTで個人スキルを伸ばし、チームの結束を高める |
| ④ チーム運営 | 進捗確認、モチベーション管理、コンフリクト解決を行う |
| ⑤ 資源の解放 | プロジェクト完了後、メンバーを元部署や次案件へ送り出す |
試験対策としては「計画で役割を決め、獲得で人を集め、育成でスキルを伸ばし、運営で動かす」という順序を押さえれば十分です。
⑤の「解放」はオレンジで強調しています。これは「メンバーを抱え込まず次の現場へ送り出す」というPMの責務を表しており、忘れがちですがPMBOKに明確に位置付けられた工程です。
タックマンモデル(チーム発達の5段階)
チームの育成プロセスを語るうえで欠かせないのが、心理学者タックマンが提唱したチーム発達モデルです。
チームは結成直後から成果を出せるわけではなく、5段階を経て成熟します。
| 段階 | 英語 | 状態 |
|---|---|---|
| 成立期 | Forming | 顔合わせ。お互い様子見 |
| 動乱期 | Storming | 意見が衝突しコンフリクトが起きる |
| 安定期 | Norming | ルールや役割が定着 |
| 遂行期 | Performing | 高い生産性で成果を出す |
| 解散期 | Adjourning | プロジェクト完了に伴いチームを解散 |
責任分担表(RACIチャート)
「誰が何の責任を持つか」を一枚で表すツールがRACIチャートです。
R(実行責任)、A(説明責任)、C(相談)、I(報告)の頭文字を取っています。
| 作業 | PM | 設計者 | 開発者 | 顧客 |
|---|---|---|---|---|
| 要件定義 | A | R | C | C |
| 基本設計 | A | R | C | I |
| 実装 | A | C | R | I |
R=Responsible(実行)/A=Accountable(最終責任)/C=Consulted(相談)/I=Informed(報告)
では、この用語が試験でどのように出題されるか見ていきましょう。
💡 ここだけは押さえる!3行まとめ
・プロジェクトに必要な人材・物的資源の確保~解放までを管理する知識エリア
・主要プロセスは「計画→獲得→育成→運営」の4段階
・タックマンモデル(成立→動乱→安定→遂行→解散)とRACIチャートが代表ツール
試験ではこう出る!
本テーマは、FE・APの午前問題でPMBOKの知識エリアを問う形式と、付随ツール(タックマンモデル・RACIチャートなど)を問う形式で繰り返し登場しています。
📊 過去問での出題実績
| 試験回 | 出題内容 | 問われたポイント |
|---|---|---|
| AP R元秋 午前 問52 |
プロジェクト要員の調達に関する説明として適切なものを選ぶ。 | 「事前任命」「ネゴシエーション」「バーチャルチーム」などの調達手段の理解 |
| AP H30秋 午前 問51 |
タックマンモデルの「動乱期(Storming)」の特徴を選ぶ。 | 5段階の順序と各段階の特徴の対応 |
| FE H29春 午前 問52 |
RACIチャートで「A(Accountable)」の意味を選ぶ。 | RとAの違い(実行責任と説明責任)の区別 |
| AP H27春 午前 問51 |
プロジェクトマネージャの責務として適切なものを選ぶ。 | 他の知識エリア(コスト・スコープ)との切り分け |
📝 IPA試験での出題パターン
パターン1:「知識エリアの切り分け」
選択肢に「ステークホルダの期待調整」「コスト見積もり」「品質基準の定義」などが並び、人的資源に該当する記述(要員配置・チームビルディング)を選ばせる形式。キーワードは「メンバー」「役割」「責任分担」。
パターン2:「タックマンモデルの段階」
「メンバー間で意見がぶつかり始める段階はどれか」のような問いで動乱期(Storming)を選ばせる形式が定番。順序(成立→動乱→安定→遂行→解散)と各段階の特徴をセットで覚えれば失点しません。
パターン3:「RACIチャート」
Aは「説明責任を負う唯一の人」、Rは「実際の作業を行う人」。一つのタスクに対してAは1人だけ、Rは複数いてもよい、という点がひっかけポイントです。
FE・APではここまでで十分得点できます。PMBOK第6版と第7版の名称変更(人的資源→資源)まで深追いする必要はありません。
【確認テスト】理解度チェック
ここまでの内容を理解できたか、簡単なクイズで確認してみましょう。
Q. PMBOKにおける資源マネジメント(人的資源管理)の説明として、最も適切なものはどれでしょうか?
- A. プロジェクトに関わる利害関係者を特定し、その期待と関心を分析・調整することで、関係者の協力を得る活動である。
- B. プロジェクト遂行に必要な人材や物的資源を計画的に確保・配置・育成し、チームを運営する活動である。
- C. プロジェクトの予算を見積もり、コストベースラインを設定して、支出を監視・コントロールする活動である。
正解と解説を見る
正解:B
解説:
選択肢Bは、必要な人材・物的資源を集めてチームを動かす活動を述べており、本知識エリアの定義そのものです。「確保・配置・育成・運営」というキーワードの組み合わせが決め手になります。
選択肢Aはステークホルダ・マネジメントの説明です。「利害関係者の期待と関心の調整」はステークホルダ分析の中心テーマであり、人材の確保や育成とは目的が異なります。選択肢Cはコスト・マネジメントの説明です。「予算見積もり」「コストベースライン」「支出の監視」はすべて費用管理の活動であり、人や物の調達とは別の知識エリアに属します。
よくある質問(FAQ)
Q. 「人的資源マネジメント」と「資源マネジメント」は別物ですか?
同じ知識エリアの呼び名が変わったものです。PMBOK第6版までは「人的資源マネジメント(Human Resource Management)」と呼ばれ人だけを対象にしていました。第7版以降は設備・材料・ソフトウェアライセンスなどの物的資源も含めて扱うため「資源マネジメント(Resource Management)」に名称が変更されています。IPA試験では旧名称・新名称のどちらも出題実績があるため、両方の呼び方を覚えておくと安心です。
Q. ラインマネージャと混同しがちですが、何が違いますか?
ラインマネージャは社員の所属部署の上長で、評価・育成・配属を恒常的に担当します。プロジェクトマネージャは特定のプロジェクト期間中だけ、メンバーをまとめて成果を出す役割です。マトリックス組織では一人のエンジニアが「ラインマネージャ=部長」「プロジェクトマネージャ=案件のリーダー」の二人の上司を持つ形になり、この調整自体が本知識エリアの重要なテーマになります。
Q. メンバー間の衝突(コンフリクト)はどう解決するのが正解ですか?
PMBOKでは5つの解決技法が示されています。撤退/回避、鎮静/適応、妥協/和解、強制/指示、対峙/問題解決の5つです。試験で最も望ましいとされるのは「対峙/問題解決(Confronting/Problem Solving)」で、根本原因を直視して双方が納得する解を作る方法です。逆に「強制」や「撤退」は短期的には収まっても遺恨が残るため、原則は推奨されません。
Q. リモートワーク前提のチームでも同じ考え方で運用できますか?
基本的な枠組みは変わりませんが、地理的に分散したメンバーで構成される「バーチャルチーム」では、コミュニケーション頻度の設計とツール選定が成否を決めます。対面で自然に起きる雑談的な情報共有が失われやすいため、定例ミーティングやチャットでの可視化を意図的に組み込むのが定石です。AP R元秋 午前問52でも「バーチャルチーム」が選択肢に登場しています。