プロジェクトの進捗報告で「このままだと最終的に幾らかかる?」と聞かれたとき、勘で答えるわけにはいきません。そこで使うのがEAC(完成時総コスト見積)です。本記事ではEVMの中核指標であるEACを、計算式と具体例で一気に理解できるよう整理します。

対象試験と出題頻度

EAC(完成時総コスト見積)は、応用情報技術者試験で出題されるテーマです。

EVM(アーンドバリューマネジメント)の計算問題の中で、BAC・ACEVCPIといった指標と組み合わせて出題されます。式の暗記だけでは解けず、「どの状況でどの式を使うか」の判断が求められます。

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対象試験:
応用情報技術者
出題頻度:
★★☆☆☆
ランクC(応用)余裕があれば覚える

用語の定義

情報処理試験を勉強していると、「EACってBACと何が違うの?略語ばっかりで混乱する…」となりがちです。

EAC(Estimate At Completion/完成時総コスト見積)とは、一言で言うと

 「プロジェクトが完了したときに最終的に幾らかかるかを、現時点の実績から予測した見積額

のことです。

イメージとしては、旅行の中間地点での財布チェックです。

10万円の予算で旅行に出発し、半分の行程で7万円使ってしまったら、「このペースだと最終的に14万円かかるな」と再見積もりしますよね。EACはこれをプロジェクトで行う指標です。

当初の予算(BAC)が「最初に立てた計画額」、EACが「今のペースで進めた場合の着地予測額」と覚えてください。

📊 EACの基本情報

項目 内容
英語名 Estimate At Completion
所属領域 EVM(アーンドバリューマネジメント)の予測指標
単位 金額(円・ドルなど)
関連指標 BAC、AC、EV、ETC、CPI、VAC

解説

プロジェクトは計画通りには進みません。スコープ追加、メンバーの離脱、技術的トラブルでコストが膨らむのは日常茶飯事です。

そこで、当初予算(BAC)に固執するのではなく、「今のままだと最終着地はいくらか」を定期的に見直す必要があります。この最終着地予測を表す指標がEACです。

EACを理解するための前提指標

EACの計算式に入る前に、EVMで使う4つの基本指標を整理します。

略語 正式名称 意味
BAC Budget At Completion 完成時総予算(最初に立てた総コスト計画)
AC Actual Cost 実コスト(現時点までに実際に使った金額)
EV Earned Value 出来高(完成した作業を予算換算した金額)
CPI Cost Performance Index コスト効率指数(EV ÷ AC、1未満なら赤字傾向)

EACの代表的な4つの計算式

EACには想定する状況に応じて複数の計算式があります。試験で問われやすいのは次の式です。

📐 EACの計算式パターン

想定する状況 計算式 考え方
残作業も計画通りに進む EAC = AC + (BAC − EV) 今のコスト超過は一時的なものとし、残りは計画通りの単価で進める想定
現在のコスト効率が続く EAC = BAC ÷ CPI これまでのコスト超過傾向が最後まで続く想定(最頻出)
残作業を新たに見積り直す EAC = AC + ETC 残作業を改めて見積もったETC(残作業コスト)を使う
スケジュールも考慮 EAC = AC + (BAC − EV) ÷ (CPI × SPI) コスト効率とスケジュール効率の両方を加味した予測

BAC・AC・EV・EACの関係

BACが10,000万円、現時点でAC=6,000万円、EV=4,000万円のプロジェクトをグラフで見てみます。

CPI = 4,000 ÷ 6,000 ≒ 0.67 なので、EAC = 10,000 ÷ 0.67 ≒ 15,000万円となります。

📈 コスト予測グラフ(縦軸:金額/横軸:時間)

15,000 10,000 6,000 4,000 0 金額(万円) 時間 EAC ≒ 15,000 BAC = 10,000 現在 完了予定 AC = 6,000 EV = 4,000 AC(実コスト) EV(出来高) BAC / EAC
📌 読み解き方:ACのペース(赤線)がEVのペース(緑線)より速い=コスト超過。CPI = 4,000 ÷ 6,000 ≒ 0.67 のままだと、最終着地(EAC)はBACを大きく超えて約15,000万円になる予測。

なお、BAC − EAC を VAC(完成時差異)と呼び、プラスなら予算内、マイナスなら予算超過を示します。

上記の例ではVAC = 10,000 − 15,000 = −5,000万円の赤字予測です。

では、この用語が試験でどのように出題されるか見ていきましょう。

💡 EACの核心を3行で

・プロジェクト完了時の最終コスト予測額
・最頻出の式は EAC = BAC ÷ CPI(現在の効率が続く前提)
・BAC(計画)との差がVAC(完成時差異)として超過額を示す


試験ではこう出る!

EACは応用情報技術者の午前問題でEVM関連の計算問題として登場します。値を与えられ、適切な式で計算させる形式が中心です。

📊 過去問での出題実績

試験回 出題内容 問われたポイント
AP R元秋
午前 問52
PV・EV・ACの値からEACを求める計算問題。 EAC = BAC ÷ CPI の適用判断
AP H30春
午前 問52
EVMにおける各指標の定義を選ぶ問題。 EACとBAC・ETC・VACの違い
AP H27秋
午前 問52
完成時総コスト見積(EAC)の計算式として正しいものを選ぶ問題。 AC + (BAC − EV) ÷ CPI 系の式の理解

📝 IPA試験での出題パターン

パターン1:「EACの値を計算せよ」
BAC・AC・EVの3値が与えられ、EAC = BAC ÷ CPI もしくは EAC = AC + (BAC − EV) で計算させる。CPIを先に求めるステップで詰まる受験者が多い。

 

パターン2:「指標の意味を選べ」
EAC・ETC・VAC・BACの定義文が並び、EACに該当するものを選ぶ。ひっかけは「ETC(残作業コスト見積)」と「BAC(当初予算)」。EACは 完了時点の総額、ETCは 残作業分のみと区別してください。

 

ここだけは確実に押さえてください。試験では4つの式を全部暗記する必要はなく、EAC = BAC ÷ CPIEAC = AC + ETC の2つで多くの問題が解けます。


【確認テスト】理解度チェック

ここまでの内容を理解できたか、簡単なクイズで確認してみましょう。


Q. EVMにおけるEAC(完成時総コスト見積)の説明として、最も適切なものはどれでしょうか?

  • A. プロジェクトが完了したときに最終的にかかる総コストを、現時点の実績から予測した見積額。
  • B. 現時点から完了時点までの残作業に必要なコストを見積もった金額。
  • C. 当初の計画段階で立てたプロジェクト完了時の総予算額。

正解と解説を見る

正解:A

解説:
EACは「Estimate At Completion」の略で、現時点の実績(AC・EV・CPIなど)を基にプロジェクト完了時の最終コストを予測する指標です。代表式 EAC = BAC ÷ CPI から、現在のコスト効率が続く前提での着地額を求めます。

選択肢BはETC(Estimate To Complete)の説明です。ETCは「残作業分のみ」のコスト見積であり、完了時点の総額を示すEACとは対象範囲が異なります。選択肢CはBAC(Budget At Completion)の説明です。BACは計画時に確定する固定値で、実績を反映して動くEACとは性質が異なります。


よくある質問(FAQ)

Q. EACとETCの違いは何ですか?

対象範囲が異なります。ETC(Estimate To Complete)は「今から完了までに追加で必要なコスト」、EACは「プロジェクト開始から完了までの総コスト」です。両者には EAC = AC + ETC の関係があり、現時点までの実コスト(AC)にETCを足すとEACになります。応用情報ではこの区別を狙ったひっかけ問題が出るので、「総額か残作業分か」で必ず区別してください。

Q. なぜEACの計算式が複数あるのですか?

残作業の進み方に対する前提が異なるためです。PMBOKでは「残りが計画通りに進む」「現在のコスト効率が続く」「スケジュールも遅延が続く」など、複数のシナリオが想定されています。プロジェクトの状況に応じてマネージャーが選択しますが、IPA試験では EAC = BAC ÷ CPI が圧倒的に頻出です。

Q. 実務でEACはどのタイミングで報告しますか?

月次のプロジェクトレビューやステアリングコミッティで報告するのが一般的です。経営層やスポンサーは「結局いくらかかるのか」を最も気にするため、BACとEACの差(VAC)を提示し、超過が予測される場合は対策案とセットで報告します。週次の進捗会議では細かな数値変動より傾向(EACが増え続けているか)に注目します。

Q. CPIが1を超えているとEACはどうなりますか?

CPI > 1 は「予算より少ないコストで出来高を上げている」状態なので、EAC = BAC ÷ CPI で計算するとEACはBACより小さくなります。つまり予算内で完了する予測です。ただし、序盤の好調がそのまま続くとは限らないため、現場では楽観視せず複数の式で検算するのが定石です。