対象試験と出題頻度

レイヤ3スイッチ(L3スイッチ)は、基本情報技術者・応用情報技術者で出題されるテーマです。

ネットワーク機器の比較問題として定番化しており、「L2スイッチ」「ルータ」「リピータハブ」との機能の違いを正確に区別できるかが問われます。

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対象試験:
基本情報技術者
応用情報技術者
出題頻度:
★★★☆☆
ランクB(標準)覚えておくと有利

用語の定義

情報処理試験を勉強していると、「L3スイッチって結局ルータと何が違うの?」と混乱しがちです。

レイヤ3スイッチ(L3スイッチ)とは、一言で言うと

 「L2スイッチのフレーム転送機能にルータのルーティング機能を統合し、ハードウェア処理で高速にパケットを中継するネットワーク機器」

のことです。

イメージとしては、「各フロアの郵便仕分け係(L2スイッチ)が、ビル間の配送ルート判断(ルーティング)もこなせるようになった”万能仕分け係”」です。

普通の仕分け係は同じフロア内の部屋番号(MACアドレス)を見て手紙を届けます。万能仕分け係はそれに加えて、宛先の住所(IPアドレス)を見て別のビル(別ネットワーク)にも高速で転送できる。

これがL3スイッチの立ち位置です。

📊 レイヤ3スイッチの基本情報

項目 内容
英語名 Layer 3 Switch
略称 L3SW(L3スイッチ)
動作する層 OSI基本参照モデルの第3層(ネットワーク層
最大の特徴 ASIC(専用ハードウェアチップ)によるルーティングの高速処理

解説

企業のネットワークが大規模化すると、部署ごとにネットワークを分割(VLAN)して管理する必要が出てきます。

分割されたネットワーク同士を接続するにはIPアドレスを使ったルーティングが必須ですが、従来のルータはソフトウェア処理のため、LAN内部の大量のトラフィックを高速にさばくには力不足でした。

この課題を解決するために登場したのがL3スイッチです。ルーティング処理をASICと呼ばれる専用チップで実行するため、ソフトウェア処理のルータと比べてはるかに高速にパケットを転送できます。

▶ L3スイッチとルータの違い(クリックで展開)

両者はどちらもネットワーク層で動作し、IPアドレスをもとにパケットを転送する点は共通しています。決定的な違いは「処理方式」と「得意な接続先」です。

比較項目 L3スイッチ ルータ
処理方式 ASIC(ハードウェア)で高速処理 ソフトウェアで処理
得意領域 LAN内のVLAN間通信など、大量のパケット転送 WAN接続、VPN、NAT、フィルタリングなど多機能な制御
インターフェース イーサネットポートが中心 シリアル回線・光回線など多種のWAN回線に対応

ここだけは確実に押さえてください。

L3スイッチは「LAN内部の高速ルーティング」が得意で、ルータは「WANとの接続や高度なネットワーク制御」が得意です。役割が重なる部分はありますが、使いどころが異なります。

▶ 関連するネットワーク機器との整理(クリックで展開)

ネットワーク機器は「OSI基本参照モデルのどの層で動作するか」で整理すると混乱しなくなります。

機器名 動作する層 中継の基準
リピータハブ 第1層(物理層) 電気信号を増幅し、全ポートに中継
L2スイッチ 第2層(データリンク層) MACアドレスを見て該当ポートのみに転送
L3スイッチ/ルータ 第3層(ネットワーク層) IPアドレスを見てルーティングテーブルに基づき転送
ゲートウェイ 第4層~第7層 異なるプロトコル間のデータ形式を変換して中継

では、この用語が試験でどのように出題されるか見ていきましょう。

💡 レイヤ3スイッチの核心を3行で

・L2スイッチにルーティング機能を統合し、ASIC(専用チップ)でパケットを高速転送するネットワーク機器
・ルータとの違いは処理方式(ハードウェア vs ソフトウェア)と得意領域(LAN内部 vs WAN接続)
・動作する層はOSI基本参照モデルの第3層(ネットワーク層)で、IPアドレスに基づいて中継する


試験ではこう出る!

L3スイッチは、ネットワーク機器の機能比較問題として基本情報技術者・応用情報技術者の双方で繰り返し出題されています。

📊 過去問での出題実績(クリックして表示)
試験回 出題内容 問われたポイント
FE R1秋
午前 問32
メディアコンバータ・リピータハブ・L2スイッチ・L3スイッチのうち、L3スイッチだけがもつ機能を選ぶ問題。 ・「ネットワーク層でパケットを中継する」がL3スイッチ固有の機能
・データリンク層の説明(L2スイッチ)がひっかけ選択肢
FE H27春
午前 問33
LAN間接続装置の説明として適切なものを選ぶ問題。ルータ・ブリッジ・リピータ・ゲートウェイの機能が並ぶ。 ・各機器が動作するOSI層と中継の基準を正確に知っているかが勝負
・「ルータはMACアドレスで中継」はひっかけ
AP H29春
午後 問5
L3スイッチの故障対策をテーマにしたネットワーク構成の長文問題。VLANとルーティングの設計が問われた。 ・午後問題ではVRRP(冗長化プロトコル)やスタティックルーティングとの組み合わせで出題
・午前問題の知識だけでは解けない応用問題

📝 IPA試験での出題パターン

パターン1:「L3スイッチだけがもつ機能を選べ」
リピータハブ・L2スイッチ・L3スイッチなどの機能説明が4択で並び、L3スイッチ固有のものを選ばせる形式。キーワードは「ネットワーク層」「IPアドレスに基づく中継」。L2スイッチの説明(データリンク層・MACアドレス)と混同させる選択肢が定番のひっかけです。

 

パターン2:「LAN間接続装置の説明として正しいものを選べ」
ルータ・ブリッジ・ゲートウェイ・リピータなどの説明が並び、正しいものを選ぶ形式。各機器の動作層と中継基準の正確な知識が必要です。

 

試験ではここまででOKです。「L3スイッチ=ネットワーク層で動作し、IPアドレスでパケットを中継する」「L2スイッチ=データリンク層で動作し、MACアドレスでフレームを転送する」という対比を押さえれば得点できます。ASICやVRRPの詳細まで深追いは不要です。


【確認テスト】理解度チェック

ここまでの内容を理解できたか、簡単なクイズで確認してみましょう。


Q. メディアコンバータ、リピータハブ、レイヤ2スイッチ、レイヤ3スイッチのうち、レイヤ3スイッチだけがもつ機能として最も適切なものはどれでしょうか?

  • A. ネットワーク層において、宛先IPアドレスに従って適切なLANポートにパケットを中継する機能。
  • B. データリンク層において、宛先MACアドレスに従って適切なLANポートにフレームを中継する機能。
  • C. 物理層において、入力信号を増幅し全てのLANポートに対して中継する機能。

正解と解説を見る

正解:A

解説:
L3スイッチはOSI基本参照モデルの第3層(ネットワーク層)で動作し、IPアドレスに基づいてパケットを中継する機能をもちます。他の3つの機器にはこの機能がありません。

選択肢BはL2スイッチ(レイヤ2スイッチ)の説明です。データリンク層でMACアドレスを参照してフレームを適切なポートに転送する機器であり、IPアドレスによるルーティングは行いません。選択肢Cはリピータハブの説明です。物理層で電気信号を増幅して全ポートに中継する機器であり、宛先を識別する機能をもちません。


よくある質問(FAQ)

Q. L3スイッチがあればルータは不要ですか?

不要にはなりません。L3スイッチはLAN内部のVLAN間ルーティングに特化しており、インターネットや拠点間をつなぐWAN回線への接続にはルータが必要です。ルータはNAT(アドレス変換)やVPN、PPPoEなどWAN固有のプロトコルに対応しており、L3スイッチでは代替できない機能を数多くもっています。実務では両者を併用する構成が一般的です。

Q. 「L4スイッチ」「L7スイッチ」という言葉も聞きますが、違いは何ですか?

L4スイッチはトランスポート層(第4層)で動作し、TCP/UDPのポート番号を見てトラフィックを振り分けます。L7スイッチはアプリケーション層(第7層)で動作し、HTTPのURLやCookieなどの情報を基に振り分けるロードバランサの一種です。L3スイッチとは動作する層と用途が異なり、IPA試験の午前問題で直接問われることはほとんどありません。参考程度で構いません。

Q. L3スイッチの「ASIC」とは具体的に何ですか?

ASIC(Application Specific Integrated Circuit)は「特定用途向け集積回路」のことです。ルーティングやフレーム転送といった特定の処理に最適化して設計された専用チップであり、汎用CPUでソフトウェア的に処理するルータよりも圧倒的に高速な転送性能を実現します。L3スイッチが「ルータの高速版」と呼ばれる理由はこのASICの存在にあります。