対象試験と出題頻度

RTP(Real-time Transport Protocol)は、応用情報技術者で出題されるテーマです。

VoIP(IP電話)の仕組みを問うネットワーク分野の午後問題で繰り返し登場しており、「SIP(呼制御プロトコル)」や「UDP」との役割の違いを正確に区別できるかがポイントになります。

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対象試験:
応用情報技術者
出題頻度:
★★☆☆☆
ランクC(応用)余裕があれば覚える

用語の定義

情報処理試験を勉強していると、「RTPって何?UDPとどう違うの?」と混乱しがちです。

RTP(Real-time Transport Protocol)とは、一言で言うと

 「音声や映像などのデータを、IPネットワーク上でリアルタイムに配送するためのプロトコル」

のことです。

イメージとしては、「荷物に通し番号と発送時刻のラベルを貼る配送係」です。

 

UDPという高速だけれど雑な配送トラックに荷物を載せる前に、RTPが1つずつ「何番目の荷物か」「いつ発送したか」のラベルを貼ってくれるので、受け取り側は届いた荷物を正しい順番に並べ直して再生できます。

📊 RTPの基本情報

項目 内容
正式名称 Real-time Transport Protocol
技術規格 RFC 3550(IETF)
下位プロトコル UDP(コネクションレス型)
主な用途 VoIP(IP電話)、映像ストリーミング、Web会議
補助プロトコル RTCP(RTP Control Protocol:通信品質の統計情報をやり取りする)

解説

音声をIPネットワークで運ぶには、アナログの音声信号をデジタルデータに変換し、小さなパケットに分割して送り出す必要があります。

 

パケット転送にはTCPとUDPの2つの選択肢がありますが、TCPは再送制御を行うため遅延が大きく、通話のリアルタイム性を損ないます。そのためVoIPではUDPが採用されています。

 

しかし、UDPにはパケットの到着順序を保証する仕組みがありません。そのまま使うと「こんにちは」が「こんちはに」のようにバラバラの順番で届く可能性があります。

 

RTPが解決する問題

この弱点を補うために設計されたのがRTPです。

RTPヘッダには「シーケンス番号」と「タイムスタンプ」の2つの情報が含まれており、受信側はこれらを手がかりにパケットを正しい順番で並べ替え、適切なタイミングで再生します。

 

加えて「ペイロードタイプ」というフィールドで、音声コーデック(G.711やG.729など)の種別を通知する役割も担います。

▶ VoIPにおけるSIPとRTPの役割分担(クリックで展開)

VoIPの通信には、呼制御と音声転送という2つのフェーズがあります。

SIP(Session Initiation Protocol)は呼制御を担当するプロトコルです。発信者がSIPサーバを介して相手を呼び出し、通話セッションを確立・切断します。テキストベースのプロトコルで、HTTPに似たリクエスト/レスポンス方式で動作します。

 

RTPは通話が確立された後の音声データの転送を担当します。SIPサーバを経由せず、IP電話機同士が直接やり取りする点が特徴です。

 

整理すると、SIPは「電話をかける・切る」を制御する司令塔、RTPは「実際の声を運ぶ」配送係です。

▶ RTPヘッダの構造(クリックで展開)

RTPヘッダは12バイト(固定部分)で構成されます。主要なフィールドは以下の3つです。

フィールド名 役割
シーケンス番号 パケットの順番を示す。受信側はこの番号で並べ替えを行う
タイムスタンプ 音声データの生成時刻を示す。再生タイミングの制御に使用する
ペイロードタイプ 音声コーデック(G.711、G.729など)の種別を通知する

1パケットあたりのデータ構成は、IPヘッダ(20バイト)+UDPヘッダ(8バイト)+RTPヘッダ(12バイト)+音声ペイロードとなります。

G.711使用時の音声ペイロードは160バイトが一般的で、この場合の合計パケットサイズは200バイト(イーサネットヘッダを除く)です。

では、この用語が試験でどのように出題されるか見ていきましょう。

💡 RTPの核心を3行で

・UDPの上位で動作し、シーケンス番号とタイムスタンプでパケットの順序制御と再生タイミング制御を行う
・SIPが「通話の確立・切断」、RTPが「音声データの転送」を担当する
・RTPヘッダは12バイトで、ペイロードタイプにより使用コーデックを通知する


試験ではこう出る!

RTPは、応用情報技術者の午後問題(ネットワーク分野)でVoIPシステムの導入を題材にした出題の中に繰り返し登場しています。

午前問題で単独に問われることは少なく、VoIP関連の午後問題の問題文中に「RTPを使用して通話する」と記述され、その仕組みを前提にした帯域計算やQoS設計が問われるパターンが中心です。

📊 過去問での出題実績(クリックして表示)
試験回 出題内容 問われたポイント
AP H28秋
午後 問5
IP電話導入に伴う帯域計算とQoS設計。RTPパケットのサイズ(IPヘッダ+UDPヘッダ+RTPヘッダ+音声データ)から必要帯域を算出する。 ・ヘッダサイズの合算(IP20+UDP8+RTP12+音声160=200バイト+イーサネット18バイト)
・RTPポート番号は動的に割り当てられるためIPアドレスでQoS制御する
AP H25春
午後 問4
VoIPシステム導入におけるコールセンタ構成。SIPサーバと音声GW間のRTP通信が題材。 ・SIPは呼制御、RTPは音声データ転送という役割分担
・音声GWの配置とプロトコルの対応関係
NW H22秋
午前II 問16
SDP(Session Description Protocol)の説明を選ぶ問題。RTPの説明が不正解選択肢として登場。 ・「ペイロード種別、シーケンス番号、タイムスタンプを記述」はRTPの説明
・SDPとRTPの役割の違い

📝 IPA試験での出題パターン

パターン1:「VoIPの帯域計算」
AP H28秋のように、RTPパケットのヘッダサイズと音声ペイロードから1通話あたりの必要帯域を計算させる問題。各ヘッダのバイト数(IP:20、UDP:8、RTP:12)は問題文中に与えられるが、構造を理解していないと合算でミスをする。

 

パターン2:「VoIPのプロトコル構成」
SIP・RTP・RTCP・SDPなど複数のプロトコルの役割を正しく対応付ける問題。「呼制御=SIP」「音声転送=RTP」「品質監視=RTCP」「セッション記述=SDP」の4つを整理しておけば対処できる。

 

試験ではここまででOKです。RTPヘッダの各ビットフィールドの詳細やRFC 3550の仕様まで問われることはないので、深追いは不要です。


【確認テスト】理解度チェック

ここまでの内容を理解できたか、簡単なクイズで確認してみましょう。


Q. VoIP(IP電話)で使用されるRTP(Real-time Transport Protocol)の説明として、最も適切なものはどれでしょうか?

  • A. UDPの上位で動作し、シーケンス番号やタイムスタンプを付与して音声・映像データをリアルタイムに配送する。
  • B. ユーザエージェント間でセッションの確立・変更・切断を行い、通話相手のIPアドレスを解決する。
  • C. パケットの欠落数や到着間隔のばらつきなどの統計情報を通信相手と交換し、通話品質を監視する。

正解と解説を見る

正解:A

解説:
RTPは、UDPの上位で動作し、ヘッダにシーケンス番号とタイムスタンプを含めることで、音声や映像をリアルタイムに配送するプロトコルです。H22秋NW午前II問16でもこの特徴が選択肢として出題されています。

選択肢BはSIP(Session Initiation Protocol)の説明です。SIPは通話セッションの確立・切断を行う呼制御プロトコルであり、音声データの転送は行いません。選択肢CはRTCP(RTP Control Protocol)の説明です。RTCPはRTPの補助プロトコルとしてパケットロスやジッタなどの品質統計情報を交換しますが、音声データ自体の転送は担いません。


よくある質問(FAQ)

Q. RTPはなぜTCPではなくUDPを使うのですか?

音声通話では、多少のパケット欠落よりも遅延の方が致命的です。TCPは欠落パケットを再送するため、再送が完了するまで後続のデータが待たされ、通話中に不自然な沈黙や大きな遅延が発生します。UDPは再送を行わない代わりに遅延が小さく、RTPのシーケンス番号で順序制御を補えば音声通話に十分な品質を確保できます。

Q. RTPのポート番号は固定ですか?

固定ではありません。RTPが使用するポート番号は、SIPによる呼制御の過程で動的に割り当てられます。AP H28秋 午後問5では、この仕様が設問の核心になりました。ポート番号が動的なため、ルータでQoS(優先制御)を設定する際にポート番号ではなくIPアドレスを使う必要がある、という流れで出題されています。

Q. RTCPとRTPはどう違いますか?

RTPが音声・映像データそのものを運ぶのに対し、RTCP(RTP Control Protocol)はRTP通信の品質を監視・報告するためのプロトコルです。パケットの欠落数、到着間隔のばらつき(ジッタ)、往復遅延時間などの統計情報を送受信者間で定期的にやり取りします。NW H22秋 午前II問16ではRTCPの説明文が選択肢の1つとして出題されました。

Q. RTPはVoIP以外にも使われますか?

使われます。Web会議システム(Zoom、Microsoft Teamsなど)の音声・映像配信、IPTVのストリーミング、監視カメラの映像伝送などでもRTPが利用されています。WebRTC(Web Real-Time Communication)でもRTPをベースにしたSRTP(Secure RTP)が音声・映像の暗号化転送に使われており、ブラウザ間のリアルタイム通信の基盤技術となっています。