デザイン思考の対象試験と出題頻度

「デザイン思考って、試験に出るの?」と疑問に感じる受験生は少なくありません。

結論として、デザイン思考はITパスポート・基本情報技術者・応用情報技術者のすべてで出題範囲に含まれている用語です。

ITパスポートでは令和元年秋期に直接出題された実績があり、FE・APのシラバスにも「デザイン思考」は明記済み。

さらにシステムアーキテクト(SA)やITストラテジスト(ST)といった高度試験でも令和6年春期に出題されており、今後AP午前への転用が見込まれる重要キーワードです。

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対象試験:
ITパスポート(IP)
基本情報技術者(FE)
応用情報技術者(AP)
出題頻度:
★★★☆☆
頻出度B:シラバスに明記+出題実績あり。今後の出題増が見込まれる

デザイン思考(Design Thinking)とは?

「ユーザー目線が大事」と言われても、具体的に何から始めればよいのか迷った経験はないでしょうか。

デザイン思考は、その「ユーザー目線」を体系化した方法論として注目されています。

もともと米国スタンフォード大学の「d.school(ハッソ・プラットナー・デザイン研究所)」が体系化した手法であり、デザイナーが製品をデザインするときの思考プロセスを、ビジネスやIT分野の問題解決にも応用できるようにしたものです。

デザイン思考とは、

利用者への共感を起点に、共感・問題定義・創造・プロトタイプ・テストの5つのステップを反復して革新的な問題解決を図るイノベーション手法

です。

料理番組の試作プロセスを思い浮かべてみてください。

シェフはまず「食べる人の好み」を徹底的にリサーチし、試作品を何度も作っては味見してもらい、フィードバックをもとに改良を繰り返します。

いきなり完成品を作るのではなく、「相手の立場に立つ → 試す → 改善する」を何度も回す。デザイン思考が目指すのは、まさにこのサイクルをビジネスやシステム開発に持ち込むことです。

📊 デザイン思考の基本情報

項目 内容
英語名 Design Thinking
提唱・体系化 スタンフォード大学 d.school(ハッソ・プラットナー・デザイン研究所)
5つのステップ 共感 → 問題定義 → 創造 → プロトタイプ → テスト
分類 ストラテジ系 > 技術戦略マネジメント > 技術開発戦略の立案・技術開発計画
キーワード イノベーション、人間中心設計、DX推進、ペルソナ、PoC

デザイン思考の5つのステップを図解で理解する

デザイン思考の核心は、5つのステップを順番に進めつつ、必要に応じて前のステップに戻る「反復プロセス」にあります。以下のフロー図で全体像を把握してください。

📊 デザイン思考の5つのステップ

①共感
Empathize
ユーザーを観察し理解する
②問題定義
Define
本当の課題を言語化する
③創造
Ideate
アイデアを大量に出す
④プロトタイプ
Prototype
簡易な試作品を作る
⑤テスト
Test
利用者に試してもらう

🔁 テストの結果をもとに「共感」や「問題定義」へ戻り、何度でも繰り返す

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共感(Empathize)― ユーザーの世界に飛び込む

最初のステップは「共感」。

ユーザーへのインタビューや行動観察を通じて、本人すら気づいていない潜在的な不満やニーズを探ります。ここでのポイントは「自分の思い込みを外すこと」。

開発者やマーケターの仮説ではなく、ユーザーの実際の行動と感情に徹底的に寄り添う姿勢が求められます。

筆者が過去に参加した社内ワークショップでは、いきなりアイデア出しから始めてしまい、「誰のために作っているのか」が曖昧なまま議論が空転した経験があります。

デザイン思考の「共感」ステップを最初に置く意味は、まさにこの失敗を防ぐため。

現場では「ペルソナシート」を全員で共有してから議論を始めるだけで、会議の質が劇的に変わりました。

問題定義(Define)― 本当の課題を言語化する

共感ステップで集めた情報を分析し、「このユーザーは○○という状況で、△△に困っている」という形で課題を明文化します。

ここで定義された課題文が、以降のすべてのステップの方向性を決定づけるため、焦らず時間をかけるべきフェーズといえるでしょう。

表面的な不満(「画面が見にくい」)ではなく、根本原因(「作業中に必要な情報が分散していて集約できない」)まで掘り下げるのがコツです。

創造(Ideate)― 発散思考でアイデアを量産する

問題定義ができたら、ブレインストーミングなどの手法で解決策のアイデアを大量に出します。

この段階では質より量を重視し、批判を一切挟まないのがルール。突飛に見えるアイデアほど、後のステップで意外な価値を生むことがあるためです。

プロトタイプ(Prototype)& テスト(Test)― 作って試して学ぶ

有望なアイデアを簡易な試作品(プロトタイプ)に落とし込み、実際のユーザーに触ってもらいます。

紙やダンボールで作ったモックアップでも十分で、完成度は求めません。テストの結果、新たな発見があれば「共感」や「問題定義」に戻って繰り返す。

この反復こそがデザイン思考の最大の特徴です。

なお、ここでいう「プロトタイプ」は、ソフトウェア開発手法のプロトタイピングモデルとは別の概念。

試験でも両者の混同を狙った問題が出るため、「デザイン思考のプロトタイプ=思考法の一ステップ」「プロトタイピングモデル=開発プロセスの一種」という区別を押さえておきましょう。

📝 ポイント整理

・デザイン思考は「共感→問題定義→創造→プロトタイプ→テスト」の5ステップで構成される
・最初のステップ「共感」でユーザーの潜在ニーズを把握することが最重要
・テスト結果をもとに前のステップへ戻る「反復プロセス」が最大の特徴
・開発手法の「プロトタイピングモデル」とは別物。試験での混同に注意

試験ではこう出る!

出題パターン分析

IPA試験におけるデザイン思考の出題は、大きく2つのパターンに分かれます。

どちらのパターンで出題されても対応できるよう、定義と具体例の両方を押さえておくことが重要です。

📝 IPA試験での出題パターン

パターン1:定義選択型
「デザイン思考の説明として適切なものはどれか」という形式。5つのステップ(共感→問題定義→創造→プロトタイプ→テスト)の流れや、d.schoolが体系化した手法であることを正確に記述した選択肢を選ぶ問題。SA・STの令和6年出題がこのタイプ。

 

パターン2:事例選択型
「デザイン思考の例として最も適切なものはどれか」という形式。利用者への共感・ニーズ起点で問題解決する具体的事例を選ぶ問題。IPの令和元年出題がこのタイプ。

 

いずれのパターンでも、「利用者中心」「共感を起点とする」というキーワードが正解選択肢に含まれる傾向があります。

📊 デザイン思考の出題実績

試験回 出題内容 問われたポイント
IP 令和元年秋 問30 デザイン思考の例として最も適切なものはどれか 事例の識別
SA 令和6年春 問13 スタンフォード大学d.schoolによるデザイン思考の説明はどれか 定義・5ステップ
ST 令和6年春 問4 SA令和6年春問13と同一問題 定義・5ステップ

ひっかけポイントと対策

デザイン思考の問題で不正解になりやすいのは、「デザイン」という言葉に引きずられて別の概念と混同するケースです。以下の4つの紛らわしい選択肢パターンを覚えておけば、消去法でも正解にたどり着けます。

BPR(業務プロセスの再設計)との混同は、「再デザイン」という言葉に引っ張られるパターン。

BPRは既存業務の抜本的な見直しであり、ユーザーへの共感を起点とするデザイン思考とはアプローチが異なります。

CSS(スタイルシート)との混同は、「デザイン」の字面に反応してしまう初歩的なミス。

オブジェクト指向設計との混同は「システム全体をデザインする」という記述に惑わされるケース。

ナレッジマネジメントとの混同は「過去の問題と解決策をDBに蓄積する」という記述をデザイン思考と誤認するパターンです。

試験区分別に整理すると、IPでは「利用者中心」「ニーズに基づく」というキーワードさえ押さえれば正解できる問題がほとんど。

FEでは5つのステップの名称と順序を正確に暗記しておくことが不可欠です。APでは高度試験(SA・ST)で出題された問題がそのまま午前問題に転用される傾向があるため、令和6年春期の出題内容を確認しておくと有利でしょう。

【混同注意】デザイン思考 vs リーンスタートアップ vs アジャイル開発

試験で最も狙われるのが、「似て非なる3つの手法」の区別です。

デザイン思考・リーンスタートアップ・アジャイル開発はいずれも「反復的なプロセス」を重視する点では共通していますが、使う場面と目的がまったく異なります。以下の比較表で違いを整理してみましょう。

📊 デザイン思考 vs リーンスタートアップ vs アジャイル開発

比較軸 デザイン思考 リーンスタートアップ アジャイル開発
起点 ユーザーへの共感 ビジネス仮説 顧客の要求
反復単位 5ステップ全体 構築→計測→学習 スプリント(1〜4週間)
主眼 ユーザーの潜在ニーズ発見 ビジネスモデルの検証(MVP) 動くソフトウェアの早期提供
提唱者・由来 スタンフォード大学 d.school エリック・リース アジャイルマニフェスト(2001年)
試験での出題頻度 B(増加傾向) B A(頻出)

この3手法の使い分けを端的に整理すると、デザイン思考は「何を作るべきか」を探る段階で使い、リーンスタートアップは「それをビジネスとして成立させられるか」を検証する段階で使い、アジャイル開発は「決まったものをどう効率よく作るか」の段階で使う手法です。

この位置づけの違いが試験で狙われる頻出ポイントとなります。

アジャイル開発の代表的なフレームワークであるスクラムのスプリントとデザイン思考の反復は、一見似ていますが目的と粒度が異なる点にも注意してください。

スクラムは「動作するソフトウェアを段階的に完成させる」ための反復であり、デザイン思考は「解くべき問題そのものを見つけ出す」ための反復です。

【確認テスト】デザイン思考の理解度チェック

ここまでの内容が身についているか、1問で確認してみましょう。

Q. デザイン思考のプロセスにおいて、最初に行うステップとして最も適切なものはどれか。

  • A. 利用者の行動を観察し、インタビューを通じて利用者に共感する
  • B. チームでブレインストーミングを行い、できるだけ多くのアイデアを出す
  • C. 簡易な試作品を作成し、利用者にテストしてもらいフィードバックを得る
正解と解説を見る

正解:A

解説:
デザイン思考の5つのステップは「共感(Empathize)→ 問題定義(Define)→ 創造(Ideate)→ プロトタイプ(Prototype)→ テスト(Test)」の順番で進みます。最初に行うのは「共感」であり、利用者の行動観察やインタビューを通じてユーザーの立場に立つことから始まります。

Bが不正解の理由:ブレインストーミングでアイデアを大量に出すのは第3ステップ「創造(Ideate)」に該当します。共感と問題定義を経てから行うステップであり、最初ではありません。

Cが不正解の理由:試作品を作ってテストするのは第4・第5ステップ「プロトタイプ(Prototype)&テスト(Test)」に該当します。プロセスの後半で行うステップです。

デザイン思考の関連用語ネットワーク

デザイン思考の理解をさらに深めるために、関連する用語を「前提知識」「関連用語」「発展学習」の3つのカテゴリに整理しました。

次に学ぶべき用語の参考にしてください。

📊 関連用語マップ

カテゴリ 関連用語
前提知識 プロトタイピングモデル(開発手法との違いを理解)、ペルソナ法、人間中心設計(HCD)
関連用語 スクラム(アジャイル開発の代表的フレームワーク)、リーンスタートアップ、PoC(概念実証)、UXデザイン
発展学習 イノベーター理論(技術普及の分析枠組み)、キャズム(普及過程の「溝」を理解する)、技術経営(MOT)

デザイン思考はイノベーション創出のための「思考法」であるのに対し、イノベーター理論やキャズムは技術・製品が市場に普及していく過程を分析する「フレームワーク」です。

この位置づけの違いも試験で問われることがあるため、あわせて確認しておくと得点力が上がります。