対象試験と出題頻度

スクラム(Scrum)は、基本情報技術者・応用情報技術者で出題されるテーマです。

アジャイル開発の代表的なフレームワークとして定番化しており、「役割(ロール)」「イベント」「作成物(成果物)」の3要素を正確に区別できるかが問われます。

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対象試験:
基本情報技術者
応用情報技術者
出題頻度:
★★★★☆
ランクA(重要)必ず覚えておくべき

用語の定義

情報処理試験を勉強していると、「スクラムってアジャイルと何が違うの?役割やイベントが多くて覚えられない…」と混乱しがちです。

スクラム(Scrum)とは、一言で言うと

 「短い期間ごとに開発と振り返りを繰り返し、少人数チームで価値あるソフトウェアを継続的に届けるアジャイル開発のフレームワーク

のことです。

イメージとしては、毎週献立を見直す家庭料理です。

1か月分の献立を最初に全部決めてしまうと、家族の好みが変わったり食材の値段が上がったりしたとき、対応できません。

「今週はこれを作る→食べた感想を聞く→来週の献立に反映する」を繰り返せば、家族の満足度に合わせて柔軟に調整できます。

スクラムも同じで、短い期間(スプリント)ごとに動くソフトウェアを作り、利用者の声を反映しながら次の開発に活かす進め方です。

📊 スクラムの基本情報

項目 内容
英語名 Scrum
分類 アジャイル開発のフレームワーク
提唱者 Ken Schwaber、Jeff Sutherland(スクラムガイド)
3つの柱 透明性(Transparency)/検査(Inspection)/適応(Adaptation)
名前の由来 ラグビーのスクラム(チーム一丸でボールを前に進める)

解説

従来のウォーターフォール型開発では、要件定義→設計→実装→テストを順番に進めるため、最後にならないと動くものが見えません。途中で要件が変わると手戻りが大きくなります。

この課題を解決するため、1990年代に「短い反復で動くソフトウェアを作り、利用者の反応を見ながら方向修正する」考え方が広まりました。

スクラムはその中で最も普及した枠組みで、公式な定義書「スクラムガイド」によって役割・イベント・作成物が明確に定められています。

3つの役割(ロール)

スクラムチームは固定された3つの役割で構成されます。それぞれ責任範囲が明確に分かれている点がポイントです。

役割 責任
プロダクトオーナー
(PO)
「何を作るか」を決める責任者。プロダクトバックログの内容と優先順位を管理し、価値の最大化に責任を持つ。
スクラムマスター
(SM)
スクラムが正しく機能するよう支援する役割。チームの障害を取り除き、プロセスを改善する。指揮命令する管理者ではなく、奉仕型のリーダー(サーバントリーダー)。
開発者
(Developers)
実際にプロダクトを作る人々。設計・実装・テストを自律的に進める。一般に3〜10名程度の少人数で構成。

5つのイベント(セレモニー)

スクラムでは、決まったタイミングで決まった集まりを行います。これを「スクラムイベント」と呼びます。

イベント タイミング 目的
スプリント 1〜4週間(固定長) 他4イベントを内包する開発サイクル本体。
スプリントプランニング スプリント開始時 今回のスプリントで何を、どう作るかを計画する。
デイリースクラム 毎日(15分以内) 開発者が進捗・障害を共有し、当日の計画を調整する短い会議。
スプリントレビュー スプリント終了時 完成した成果物をステークホルダに見せ、フィードバックを受ける。
スプリントレトロスペクティブ レビューの後 プロセス自体を振り返り、次スプリントの改善点を決める。

図解:スクラムの全体フロー

🔄 スプリント(1〜4週間)のサイクル

スプリント 1〜4週間 の繰り返し 🔁 ①プロダクト バックログ 作るもの一覧 ②スプリント プランニング 計画立案 ③開発+ デイリースクラム 毎日15分 ④レビュー& レトロスペクティブ 成果物確認+改善 次スプリントへ循環
━━ 1スプリント内の流れ(①→②→③→④) ┅┅ 次スプリントへの循環

④で振り返った改善点を①に反映し、次のサイクルを開始する

3つの作成物(成果物)

スクラムでは透明性を確保するため、以下の3つの作成物を必ず管理します。

作成物 内容
プロダクトバックログ プロダクトに必要な機能・改善要望を優先度順に並べた一覧。POが管理する。
スプリントバックログ 今スプリントで実装する項目と作業計画。開発者が管理する。
インクリメント スプリントで完成した、動作可能なプロダクトの増分。「完成の定義(Definition of Done)」を満たしたもの。

バーンダウンチャートで進捗を見える化

スプリント中の進捗管理によく使われるのが「バーンダウンチャート」です。残作業量を縦軸、時間を横軸に取り、理想線と実績線を比較します。

📉 バーンダウンチャート(イメージ)

残作業量 時間 100 50 0 Day1 Day5 Day10 理想線 実績線

理想線より実績線が上にあれば遅れ気味、下にあれば順調。

XP・カンバンとの違い

スクラムを正しく位置づけるには、他のアジャイル系手法との違いを押さえると整理しやすくなります。

手法 特徴 見分けキーワード
スクラム 役割・イベント・作成物を定めた管理フレームワーク スプリント、PO、SM
XP
(エクストリーム
プログラミング)
技術プラクティス中心。ペアプロ、TDD、リファクタリング等を重視 ペアプロ、TDD、技術
カンバン 作業の流れを可視化しWIP(仕掛中)を制限。固定長の反復はない WIP制限、可視化、流れ

💡 スクラムの核心を3行で

・短い反復(スプリント)で動くソフトを継続的に届けるアジャイル開発の枠組み
・3つの役割(PO/SM/開発者)、5つのイベント、3つの作成物で構成される
・透明性・検査・適応の3本柱で、変化に強いプロセスを実現する

では、この用語が試験でどのように出題されるか見ていきましょう。


試験ではこう出る!

スクラムは、FE・APの午前問題でアジャイル系の定番テーマとして繰り返し出題されています。出題の切り口は「役割の責任範囲」「イベントの目的」「用語の定義そのもの」の3系統が中心です。

📊 過去問での出題実績

試験回 出題内容 問われたポイント
AP R3秋
午前 問49
スクラムにおけるスプリントレトロスペクティブの説明として適切なものを選ぶ問題。 ・「プロセスを振り返り改善する」が正解
・レビュー(成果物確認)との混同が典型的なひっかけ
AP R元秋
午前 問49
スクラムマスターの役割を問う問題。 ・「障害除去とプロセス支援」が正解
・「指示命令する管理者」と書かれた選択肢はSMの本質と逆
FE R元秋
午前 問50
スクラムの説明として適切なものを4択から選ぶ問題。 ・「短い反復で動くソフトを開発」が正解
・ウォーターフォール/プロトタイプ/RADがひっかけ
AP H30春
午前 問50
プロダクトバックログを管理する役割を問う問題。 ・正解は「プロダクトオーナー」
・スクラムマスター・開発者と紛らわしく出題される

📝 IPA試験での出題パターン

パターン1:「役割の責任を選べ」
POと開発者とSMを入れ替えた選択肢を並べ、正しい責任範囲を選ばせる形式。「プロダクトバックログの優先順位を決める」=PO、「障害を除去しプロセスを支援する」=SM、「実装を行う」=開発者と即答できるようにしておくこと。

 

パターン2:「イベントの目的を選べ」
特にスプリントレビュー(成果物の確認)とスプリントレトロスペクティブ(プロセスの改善)の混同が頻出のひっかけです。「成果物を見せる」と「やり方を振り返る」で覚え分けてください。

 

パターン3:「スクラムそのものの定義」
「短い反復で動くソフトを継続的に届ける」が核心キーワード。「すべての要件を最初に確定させる」「設計書を完璧に作ってから実装する」といった選択肢はウォーターフォールの説明なので即除外できます。ここだけは確実に押さえてください。


【確認テスト】理解度チェック

ここまでの内容を理解できたか、簡単なクイズで確認してみましょう。


Q. アジャイル開発フレームワークであるスクラム(Scrum)の説明として、最も適切なものはどれでしょうか?

  • A. 要件定義・設計・実装・テストを順番に進め、各工程の成果物が完成してから次工程に着手する開発手法である。
  • B. 短い反復期間(スプリント)ごとに動作するソフトウェアを作成し、利用者の声を反映しながら開発を進めるアジャイルのフレームワークである。
  • C. ペアプログラミングやテスト駆動開発などの技術プラクティスを中心に据え、コード品質の向上を最優先する開発手法である。

正解と解説を見る

正解:B

解説:
スクラムは、スプリントと呼ばれる短い反復期間で動くソフトウェアを継続的に作り、利用者からのフィードバックを受けて次の開発に反映させるアジャイル開発のフレームワークです。プロダクトオーナー・スクラムマスター・開発者という3つの役割と、スプリントプランニング等のイベントを軸に進められます。

選択肢Aはウォーターフォール型開発の説明です。各工程を直線的に進める手法であり、反復を前提とするスクラムとは進め方の思想が逆です。選択肢XPの説明です。XPはアジャイルの一種ですが、技術プラクティスに焦点を当てたものであり、役割やイベントを定めた管理フレームワークであるスクラムとは別物として区別されます。


よくある質問(FAQ)

Q. スクラムの「アジャイル」と「リーン」は何が違いますか?

アジャイルはソフトウェア開発の価値観・原則(アジャイルソフトウェア開発宣言)であり、スクラムやXPはその実践フレームワークです。リーンはトヨタ生産方式に源流を持つ「ムダの排除」を中心とした考え方で、製造業から派生してソフトウェア開発にも応用されました。両者は思想として親和性が高く、リーンスタートアップのようにアジャイルと組み合わせて使われることも多いものの、出自が異なる別概念として整理してください。

Q. 「ベロシティ」とは何ですか?試験で出ますか?

ベロシティは、1スプリントで開発チームが完了させた作業量(ストーリーポイントの合計など)を指します。過去のベロシティの平均から、次スプリントで取り組める作業量を見積もるのに使います。応用情報の午前で「ベロシティの説明として適切なもの」を問う形で出題されたことがあるので、「チームの開発速度の指標」と覚えておけば対応できます。

Q. 1人のスクラムマスターが複数チームを兼務するのは普通ですか?

小規模な組織では兼務するケースもありますが、スクラムガイドの原則では1チーム1名の専任が望ましいとされています。複数チームをまたぐ大規模開発では「LeSS(Large-Scale Scrum)」や「SAFe」「Nexus」といった大規模スクラムのフレームワークが使われます。試験範囲では深追いされませんが、実務では知っておくと役立ちます。

Q. スプリント期間の途中で要件が変わったら追加してよいですか?

原則として、スプリント期間中はそのスプリントのゴールを変えません。途中で出てきた要望はプロダクトバックログに追加し、次以降のスプリントプランニングで取り扱います。これによって開発者が安定して作業に集中でき、見積もりの精度も保たれます。柔軟さを担保するのは「スプリント単位の短さ」であって、スプリント内での割り込みではない、という点を押さえてください。

Q. 「完成の定義(Definition of Done)」とは何ですか?

インクリメントが「完成」と言える状態を、チームで合意した具体的な基準のことです。例えば「単体テストが全てパスする」「コードレビューを受けている」「ステージング環境に配置されている」など。これがないと「完成」の解釈がバラつき、品質が安定しません。試験では深追いされませんが、スプリントレビューに出せる成果物の基準として理解しておくと、用語の関係性がスッキリ整理されます。