対象試験と出題頻度

「職能別組織と事業部制組織、何が違うんだっけ?」「マトリックス組織のデメリットってどっちだっけ?」。

組織形態の問題は、選択肢の説明文がどれも似ていて混乱する受験生が後を絶ちません。

しかし実は、この分野の過去問は「4つの定型説明文を使い回して、正解の組織だけ変える」という構造になっています。

つまり4つの説明文と組織名の対応を丸ごと覚えてしまえば、どの試験回で出題されても即答できるテーマです。

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対象試験:
ITパスポート
基本情報技術者
応用情報技術者
出題頻度:
★★★★☆
ランクA(重要)必ず覚えておくべき

用語の定義

経営組織(Management Organization)とは、一言で言うと

 「企業が経営目標を達成するために、人と業務をどのような単位でまとめ、指揮命令系統をどう設計するかの構造

のことです。IPAシラバスでは「ストラテジ系 → 企業活動 → 経営・組織論」の中に位置づけられています。

イメージとしては「チームスポーツのフォーメーション」です。

同じ11人のサッカーチームでも、4-3-3と5-4-1ではポジションの配置も役割も指揮系統もまるで違います。企業も同じで、同じ社員数でも「どう並べるか」で強み・弱みが変わります。

IPA試験で問われる代表的な組織形態は、職能別組織・事業部制組織・マトリックス組織・プロジェクト組織・カンパニー制組織の5つです。以下、それぞれの定義を整理します。

📊 5つの組織形態 早見表

組織形態 一言定義 日常の例え
職能別組織 営業・製造・経理など、仕事の専門性(職能)ごとに部門を分けた組織 病院の診療科。内科・外科・小児科と専門で分かれる
事業部制組織 製品・地域・顧客などの事業単位で独立した部門を置き、各部門に利益責任を持たせた組織 ショッピングモールのテナント。各店が独自に仕入れ・販売・会計を持つ
マトリックス組織 職能部門と事業・プロジェクト部門の両方に同時に所属する、縦横の二重構造を持つ組織 大学教員。「経済学部」に所属しつつ「学部横断のAI研究プロジェクト」にも参加
プロジェクト組織 特定の課題のために各部門から専門家を集めて編成する、期間限定の組織。目的達成後に解散 文化祭の実行委員会。終わったら解散
カンパニー制組織 事業部をさらに独立性の高い「社内カンパニー」として運営。事業部制より大きな権限を委譲するが、法的には同一法人 フードコートの直営ブランド。同じ会社だが、ブランドごとに独立採算で回す

解説

企業は創業期なら社長が全員に直接指示を出せます。しかし従業員が数十人、数百人と増えると、全員を一人で見ることは物理的に不可能です。

そこで「人と業務をどう分割し、誰が誰に指示を出すか」を設計する必要が生まれました。これが経営組織の出発点です。

どの形態にも万能な正解はなく、企業の規模・事業の多角化度合い・市場の変化スピードに合わせて最適解が変わります。ここでは主要3形態の構造を図解し、それぞれの強みと弱みを対比します。

3つの組織構造の違い

① 職能別組織(機能別組織)

経営者(社長)
営業部
製造部
経理部
人事部
開発部

▲ 専門性ごとに縦割り。命令系統は経営者→各部門長の1本で明快。ただし部門間の壁(セクショナリズム)が課題

② 事業部制組織

経営者(社長)

家電事業部

営業 製造 経理

自動車事業部

営業 製造 経理

半導体事業部

営業 製造 経理

▲ 各事業部が営業・製造・経理を自前で持つ「ミニ会社」の集合体。独立採算で利益責任を負う

③ マトリックス組織

開発部門 営業部門 製造部門
製品Aプロジェクト 担当者① 担当者② 担当者③
製品Bプロジェクト 担当者④ 担当者⑤ 担当者⑥

▲ 縦軸=職能(開発・営業・製造)、横軸=事業。担当者①は「開発部門長」と「製品Aリーダー」の両方から指示を受ける二重構造

メリット・デメリット比較

図の構造が違えば、当然ながら長所と短所も変わります。

ここを押さえておくと、選択肢の文言から組織形態を逆引きできるようになります。

組織形態 メリット デメリット
職能別 専門知識の蓄積と人材育成がしやすい。同じ職種を一括管理でき規模の経済が働く 部門間の調整が経営トップに集中し、意思決定が遅くなりがち。縄張り意識(セクショナリズム)が生じやすい
事業部制 市場変化に素早く対応できる。事業部ごとの損益が明確で、責任の所在がはっきりする。次期経営者の育成に向く 営業・経理など同じ機能が事業部ごとに重複しコストがかさむ。事業部間の連携が弱くなりやすい
マトリックス 専門性と事業対応力を両立できる。部門の壁が薄くなり、組織全体の視野が広がる 指揮命令系統が二重になり、誰の指示に従うかで混乱が起きやすい(ツー・ボス問題)
プロジェクト 課題に最適な人材を部門横断で集められる。柔軟性が高い 一時的な組織のため、解散後にノウハウが散逸しやすい
カンパニー制 事業部制よりさらに大きな権限委譲で、意思決定が速い。経営責任が明確 カンパニー間の連携が困難になりやすい。全社最適より部分最適に陥るリスクがある

事業部制とカンパニー制の境界線

IP R7 問15で出題されたように、事業部制とカンパニー制は混同しやすいポイントです。

両者の違いは「権限委譲の深さ」にあります。

事業部制 vs カンパニー制:権限の深さ比較

事業部制 カンパニー制
比較項目 事業部制 カンパニー制
利益責任 あり あり
人事権 本社が保持 カンパニーに委譲
投資判断 本社の承認が必要 一定額まで独自判断
法人格 同一法人 同一法人(分社化とは異なる)
独立性の度合い

▲ 試験で問われたら「人事権・投資判断まで委譲されているか」で判別する

得点ラインはここ(3行整理)

・職能別=専門性で分ける。命令系統は1本。セクショナリズムが弱点
・事業部制=製品や地域で分ける。各事業部に営業・経理が内包され独立採算。機能の重複が弱点
・マトリックス=職能別と事業別を掛け合わせた二重構造。指揮命令系統の複雑化が最大の弱点

試験ではこう出る!

経営組織はIP・FE・APのすべてで繰り返し出題されており、しかも同一の選択肢文がほぼそのまま別の試験回で再利用される「流用率トップクラス」のテーマです。

📊 過去問での出題実績

試験回 出題内容 正解の組織
IP R7 問15 「意思決定の迅速化」「独立採算の推進」「事業領域ごとに独立した組織を設置」に該当する組織を選ぶ。 カンパニー制
IP H28秋 問25 組織図を読み取り、営業・製造・経理・総務・開発の5部門構成から形態を判定。 職能別組織
FE H28秋 問76
(=FE R3免除 問74)
4つの説明文からマトリックス組織を選ぶ。同一問題がFE R3免除で再出題。 マトリックス組織
AP R5春 問74
(=FE H22春 問75)
事業部制組織の特徴を選ぶ。FE H22春と同一構成の問題が流用。 事業部制組織
AP H26春 問74 職能部門別組織を説明したものを選ぶ。 職能別組織

「4つの定型文」を丸暗記すれば全問正解できる

上の出題実績を見ると気づくはずですが、FE H28秋、FE R3免除、AP H26春、AP R5春はすべて同じ4つの説明文を使い回しています。

変わるのは「どれを正解にするか」だけです。

ここだけは確実に押さえてください。以下の対応表を頭に入れておけば、どの年度で出ても瞬殺できます。

選択肢の定型パターン(丸暗記推奨)

選択肢の文言(要約) 正体
「利益責任を製品別・顧客別・地域別に持ち、自己完結的な経営活動が展開できる」 事業部制組織
「職能部門と特定の事業を遂行する部門の両方に所属する」 マトリックス組織
「購買・生産・販売・財務など、仕事の専門性によって機能分化された部門を持つ」 職能別組織
「特定の課題のもとに専門家を集めて編成し、期間と目標を定めて活動する一時的な組織」 プロジェクト組織

📝 出題パターンは3種類

パターン1:「○○組織の説明を選べ」
上記4つの説明文が並び、指定された組織に該当するものを選ぶ形式。FE H28秋 問76、AP H26春 問74、AP R5春 問74がこれに該当する。選択肢の文言は年度が変わってもほぼ同一。

パターン2:「組織図から形態を読み取れ」
IP H28秋 問25のように図を見て判断させる形式。経営者の直下に職能名が並んでいれば職能別、事業名の下に各職能が内包されていれば事業部制と判定する。

パターン3:「特徴の記述から形態を選べ」
IP R7 問15のように、「独立採算」「意思決定の迅速化」などの記述から該当する形態を選ぶ形式。カンパニー制と事業部制の混同を狙う出題が増えており、「権限委譲の度合い」で判断する必要がある。


【確認テスト】理解度チェック


Q. マトリックス組織を説明したものとして、最も適切なものはどれでしょうか?

  • A. 業務遂行に必要な機能と利益責任を、製品別・顧客別又は地域別に持つことによって、自己完結的な経営活動が展開できる組織である。
  • B. 構成員が、自己の専門とする職能部門と特定の事業を遂行する部門の両方に所属する組織である。
  • C. 購買・生産・販売・財務など、仕事の専門性によって機能分化された部門を持つ組織である。

正解と解説を見る

正解:B

解説:
選択肢Bは、FE H28秋 午前問76およびFE R3免除 問74で正解とされた記述そのものです。「職能部門」と「事業を遂行する部門」の二重所属がマトリックス組織の定義上の核心であり、他の組織形態にはない特徴です。

選択肢Aは事業部制組織の説明です。「利益責任」「自己完結的な経営活動」が識別キーワードで、AP R5春 問74で正解として出題されています。選択肢Cは職能別組織の説明です。「仕事の専門性による機能分化」は縦の一軸構造を表しており、AP H26春 問74で正解として出題されています。


よくある質問(FAQ)

Q. 「機能別組織」と「職能別組織」は同じものですか?

同じです。IPAシラバス(Ver.6.5)の用語例には「機能別組織」と「職能別組織」の両方が併記されています。試験問題でも、FE系では「購買・生産・販売・財務など仕事の性質で分けた組織」という説明文で登場し、IP系では「職能別組織」の名称で選択肢に並ぶなど、呼び方が混在しています。どちらの名前で出ても同じものだと認識してください。

Q. 「持株会社(ホールディングス)」との違いは何ですか?

持株会社は、自ら事業を行わず、傘下のグループ企業の株式を保有して支配・管理する会社です。カンパニー制は「同一法人内での独立運営」ですが、持株会社は「法的に別法人のグループ企業を束ねる」構造です。IPAシラバスの用語例にも「持株会社」が含まれており、IP試験でカンパニー制と比較される可能性があるため、「法人格が同じか別か」で区別してください。

Q. マトリックス組織の「ツー・ボス問題」は実務でどう対処されていますか?

プロジェクトマネージャとラインマネージャ(所属部門長)の間で、事前に権限配分を取り決めるのが一般的です。たとえば「日々の業務指示はプロジェクトマネージャ、人事評価と昇進はラインマネージャ」と線引きします。PMBOKの資源マネジメントでもこの調整が語られており、権限の曖昧さがコンフリクトの主因になると明記されています。

Q. CxO(CEO・CIO・CFOなど)もこの分野の出題範囲ですか?

はい。IPAシラバスでは「経営組織」の用語例にCxOが含まれています。CEO(最高経営責任者)、CIO(最高情報責任者)、CFO(最高財務責任者)、CISO(最高情報セキュリティ責任者)など、役職の名称と役割の対応がIP試験で問われることがあります。ただし本記事では組織形態の比較に集中するため、CxOについては別記事で扱います。

📚 関連用語ネットワーク

【前提知識】 経営・組織論/コーポレートガバナンス/所有と経営の分離

【関連用語】 CxO/階層型組織/持株会社/コンプライアンス内部統制

【発展】 ITガバナンス/ティール組織/ホラクラシー/アメーバ経営