情報処理試験を勉強していると、「並列システムの稼働率ってどう計算するの?」「直列との計算式がごちゃ混ぜになる…」と混乱しがちです。この記事では、並列システムの稼働率について、日常の例え話と図解で整理し、試験で確実に得点できる状態を目指します。
対象試験と出題頻度
並列システムの稼働率は、基本情報技術者・応用情報技術者で出題されるテーマです。
ほぼ毎回の試験で直列・並列の組み合わせ計算が出題されており、高可用性やMTBF・MTTRの知識と組み合わせて問われるのが定番パターンです。
詳細をクリックして確認
基本情報技術者
応用情報技術者
★★★★☆
ランクA(重要)必ず覚えておくべき
用語の定義
並列システム(Parallel System)とは、一言で言うと
「同じ役割の装置を複数台並べて、どれか1台でも動いていればシステム全体が稼働する構成」
のことです。
イメージとしては、「高速道路の複数車線」です。
3車線ある高速道路なら、1車線が工事で封鎖されても残り2車線で通行を続けられます。全車線が同時に封鎖されない限り道路は「使える」状態です。
並列システムもこれと同じで、複数台のうちどれか1台でも生きていればシステム全体は止まりません。台数を増やすほど「全滅」の確率が下がり、稼働率が上がります。
📊 並列システム(稼働率)の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 英語名 | Parallel System / Availability |
| 分類 | コンピュータシステム > システムの信頼性設計 |
| 稼働条件 | 構成装置のうち少なくとも1台が動いていればOK |
| 稼働率の公式(2台) | 1 −(1 − R)²(Rは装置単体の稼働率) |
| 対になる概念 | 直列システム(全装置が稼働しないとNG) |
解説
システムの信頼性を設計する場面では、「装置が壊れてもサービスを止めたくない」という要求が必ず出てきます。そこで、同じ役割の装置を複数台用意して「どれか1台でも動いていればOK」とする冗長構成が採用されます。
これが並列システムの考え方です。
直列システムとの違い
稼働率の計算で最も大切なのは、直列と並列の「稼働条件の違い」を正確に区別することです。
| 比較項目 | 直列システム | 並列システム |
|---|---|---|
| 稼働条件 | 全装置が動いていなければNG | 1台でも動いていればOK |
| 公式(2台) | R × R = R² | 1 −(1 − R)² |
| R=0.9の例 | 0.9 × 0.9 = 0.81 | 1 −(0.1)² = 0.99 |
| 装置を増やすと | 稼働率が下がる | 稼働率が上がる |
| 日常の例え | クリスマスの直列つなぎの電球(1個切れると全消灯) | 高速道路の複数車線(1車線封鎖でも通行可) |
計算式の考え方
並列システムの公式を丸暗記するのではなく、「なぜその式になるのか」を理解しておくと忘れません。
ポイントは「全滅する確率を求めて、1から引く」という発想です。
並列システムの稼働率 ── 考え方の3ステップ
Step 1:装置1台が「故障している」確率を出す
装置の稼働率が R なら、故障している確率は (1 − R)
Step 2:全台が「同時に故障している」確率を出す
2台なら (1 − R)×(1 − R)=(1 − R)²
n台なら (1 − R)ⁿ
Step 3:「全滅しない」=「システムが動いている」確率を出す
全体から全滅確率を引く → 1 −(1 − R)²
※ 直列は発想が逆で「全部動いている確率」をそのまま掛け算する(R × R = R²)
図解:直列・並列の混合システムを解く手順
実際の試験では、直列と並列が混合した構成が出題されます。
解き方の手順は「内側(並列部分)→ 外側(直列部分)」の順にまとめていくのが鉄則です。
例題:R = 0.9 のとき、以下のシステム全体の稼働率は?
並列部分
直列部分
① 並列部分(A, B)の稼働率を求める
1 −(1 − 0.9)² = 1 − 0.01 = 0.99
② 並列部分と装置Cを直列として掛ける
0.99 × 0.9 = 0.891
→ システム全体の稼働率 = 0.891
何となくで覚えたい人向け:公式の語呂合わせ
直列 =「全部動け!」→ 掛け算
全装置の稼働率をそのまま掛ける。R × R × R …
並列 =「全滅だけはNG!」→ 1 から全滅確率を引く
1 −(1 − R)ⁿ
「直列は掛け算、並列は全滅引き算」──この一言だけ覚えておけば、式の形を忘れても試験会場で復元できます。
稼働率の変化をグラフで確認
装置単体の稼働率Rを変化させたとき、直列(2台)と並列(2台)で全体の稼働率がどう変わるかをグラフで確認します。AP R7春 問13のように、グラフの形状を選ばせる問題が実際に出題されています。
装置単体の稼働率Rと、システム全体の稼働率の関係
| R(装置単体) | 直列2台(R²) | 並列2台(1−(1−R)²) |
|---|---|---|
| 0.5 | 0.25 | 0.75 |
| 0.7 | 0.49 | 0.91 |
| 0.8 | 0.64 | 0.96 |
| 0.9 | 0.81 | 0.99 |
| 0.95 | 0.9025 | 0.9975 |
R = 0.9 のときの比較(棒グラフ)
▲ 並列構成は単体より稼働率が上がり、直列構成は単体より下がる。この関係が試験で問われる。
では、この知識が試験でどのように問われるかを見ていきましょう。
💡 並列システムの稼働率を3行で
・「どれか1台でも動いていればOK」の冗長構成
・公式は「1 −(1 − R)ⁿ」=全滅確率を1から引く発想
・直列(R²)と混合する問題は「内側の並列 → 外側の直列」の順に計算する
試験ではこう出る!
稼働率の計算は、FE・APの午前問題でほぼ毎回出題されています。出題パターンは大きく3つに分かれます。
📊 過去問での出題実績
| 試験回 | 出題内容 | 問われたポイント |
|---|---|---|
| FE R1秋 午前 問16 |
2台の装置で「並列のとき」と「直列のとき」の稼働率の差を求める。 | ・R=0.9で並列0.99、直列0.81 ・差0.18を正確に計算できるか |
| FE H29春 午前 問14 |
並列部分を2組直列に接続したシステム全体の稼働率の式を選ぶ。 | ・並列を先に計算 → 直列で掛ける手順 ・正解は(1−(1−R)²)² |
| AP R6秋 午前 問14 |
直列・並列3パターンの構成を稼働率の高い順に並べる。 | ・並列のみ > 直列+並列混合 > 並列+直列混合の大小関係 |
| AP R7春 午前 問13 |
3個の装置の並列+直列構成で、装置単体の稼働率とシステム稼働率の関係を示すグラフを選ぶ。 | ・並列部分がある分、常に装置単体以上にはならない点を把握しているか |
📝 IPA試験での出題パターン
パターン1:「稼働率の式を選べ」
直列・並列が混合した図を見せて、システム全体の稼働率を表す式を選ばせる。ひっかけは並列の部分を直列の公式で計算した式。並列を先にまとめてから直列で掛ける手順が身についていれば確実に解ける。
パターン2:「稼働率の数値を求めよ」
具体的な稼働率(0.9など)が与えられ、並列と直列の差や組み合わせ後の値を問う。R1秋 問16のように小数の掛け算・引き算が必要になるので、計算ミスに注意。
パターン3:「構成を稼働率の高い順に並べよ」
複数パターンの構成図を見比べて稼働率を比較する。R6秋 問14が典型。式を展開して大小を比較する力が必要だが、仮に R=0.9 を代入して計算してしまうのが最速の解法。
ここだけは確実に押さえてください。「並列は全滅確率を引く」「直列は掛け算」という2つの公式を覚えておけば、あとは組み合わせ次第で全パターン解けます。
【確認テスト】理解度チェック
ここまでの内容を理解できたか、1問で確認してみましょう。
Q. 稼働率0.9の装置2台を並列に接続したシステムがある。このシステムにさらに稼働率0.9の装置1台を直列に接続した場合、システム全体の稼働率として最も近いものはどれか。
- A. 0.891
- B. 0.81
- C. 0.999
正解と解説を見る
正解:A
解説:
まず並列部分の稼働率を計算します。1 −(1 − 0.9)² = 1 − 0.01 = 0.99。次に、この0.99と直列接続された装置(稼働率0.9)を掛けます。0.99 × 0.9 = 0.891。
選択肢Bの0.81は、2台を直列接続した場合の値(0.9 × 0.9)です。並列を直列と取り違えた場合にこの数値になります。選択肢Cの0.999は、3台を並列接続した場合の値(1 −(1 − 0.9)³ = 1 − 0.001)です。直列部分の存在を無視して全台を並列と見なした場合に出る数値であり、設問の構成とは異なります。
よくある質問(FAQ)
Q. 並列システムの台数を増やせば稼働率は100%に限りなく近づきますか?
理論上はそうなります。n台並列の稼働率は 1 −(1 − R)ⁿ であり、nを増やすほど(1 − R)ⁿ はゼロに近づくため、稼働率は1(100%)に漸近します。ただし実際には台数が増えるとコストや管理の複雑さも増すため、「何台まで並列にするか」はSLA(サービスレベル契約)で求められる稼働率とのバランスで決定されます。
Q. 稼働率の計算で使う「MTBF」「MTTR」とはどういう指標ですか?
MTBF(Mean Time Between Failures:平均故障間隔)は「故障と故障の間の平均稼働時間」、MTTR(Mean Time To Repair:平均修復時間)は「故障してから復旧するまでの平均時間」です。装置単体の稼働率は R = MTBF ÷(MTBF + MTTR)で求めます。この値を直列・並列の公式に代入してシステム全体の稼働率を算出するのが試験の典型パターンです。
Q. 稼働率の計算はITパスポートでも出題されますか?
出題されます。ITパスポートでも「稼働率0.9の装置を何台並列に接続すれば稼働率0.999以上になるか」といった問題が出ています(例:IP R7年 問94)。FE/APと比べると計算の複雑さは控えめですが、公式と考え方は共通です。
Q. 実務で「並列構成」はどのような場面で使われていますか?
Webサーバの冗長化が最も身近な例です。ロードバランサの背後に同じ構成のWebサーバを複数台配置し、1台が障害で落ちても残りのサーバで応答を継続する構成は、ECサイトやクラウドサービスでは標準的な設計です。データベースのレプリカ構成やディスクのRAID構成(RAID 1のミラーリングなど)も、本質的には並列の考え方で信頼性を高めています。