プロジェクトマネジメントを勉強していると、「クラッシングって何を増やして何を縮めるの?ファストトラッキングと何が違うの?」と頭が混乱しがちです。

この記事では、クラッシングの意味・狙い・注意点を、身近な例えと過去問の出題実績を交えて整理します。

対象試験と出題頻度

クラッシングは、応用情報技術者試験(AP)で出題されるテーマです。

プロジェクトマネジメントのスケジュール短縮技法として、ファストトラッキングと並んで定番化しており、両者の違いを正確に区別できるかが問われます。

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対象試験:
応用情報技術者
出題頻度:
★★☆☆☆
ランクC(応用)余裕があれば覚える

用語の定義

クラッシング(Crashing)とは、一言で言うと

 「コストを追加投入してプロジェクトの所要期間を短縮する手法

のことです。

イメージとしては、引っ越し当日に人手を増やすです。

一人で荷物を運ぶと丸一日かかる引っ越しも、友人や業者を追加で呼べば半日で終わります。

ただし、業者を呼べばその分の費用が発生します。「お金(コスト)を払って時間を買う」のがクラッシングの本質です。

📊 クラッシングの基本情報

項目 内容
英語名 Crashing
分類 スケジュール短縮技法(PMBOK)
狙い クリティカルパス上の作業期間を短縮する
代償 コストの増加(人件費、残業代、外注費など)

解説

プロジェクトは、当初の計画どおりには進みません。仕様変更、メンバーの離脱、外部要因による遅延――こうした事情で「納期に間に合わない」という状況が頻繁に発生します。

この遅れを取り戻すために用いられるのが、スケジュール短縮技法です。

PMBOK(Project Management Body of Knowledge)では、代表的な短縮技法として「クラッシング」と「ファストトラッキング」の2つが挙げられています。

クラッシングの仕組み

クラッシングは、クリティカルパス上の作業に対して資源を追加投入することで、所要期間を圧縮します。

クリティカルパス以外の作業を短縮しても全体の納期は縮まないため、対象を見極めることが重要です。

クラッシングのイメージ図

Before(通常):作業期間 10日/コスト 100万円

作業A(10日・1人)
→ 10日

⬇ 人員を2人に増員(コスト追加)

After(クラッシング後):作業期間 6日/コスト 150万円

作業A(6日・2人)
→ 4日短縮/+50万円

▲ 期間は短縮されるが、総コストは増加する

ファストトラッキングとの比較

もう一つの短縮技法であるファストトラッキングは、本来順番に行う作業を並行して進める手法です。

両者は「短縮の手段」も「副作用」も異なります。

比較項目 クラッシング ファストトラッキング
手段 資源(人員・設備)を追加投入する 順次実行の作業を並行実行に変更する
副作用 コスト増加 手戻り・品質低下のリスク増加
追加コスト 発生する 基本的に発生しない
身近な例え 引っ越し業者を追加で呼ぶ 荷造りと掃除を同時並行で進める

クラッシングで注意すべきこと

「人を増やせば終わる」と単純化すると失敗します。実務上、以下の点に注意が必要です。

⚠ クラッシングの注意点

追加人員の教育コスト:新メンバーへの説明・引継ぎで既存メンバーの稼働が一時的に下がる(ブルックスの法則)
コスト効率の低下:投入する資源が増えるほど短縮効果は鈍化する(限界効用逓減)
対象はクリティカルパス上のみ:それ以外を短縮しても全体納期は縮まない

💡 クラッシングの核心を3行で

・追加コストを投じてクリティカルパス上の作業期間を縮める手法
・コストが増える代わりに納期を守れる(時間をお金で買う)
・並行実行で縮めるファストトラッキングとは手段も副作用も異なる

では、この用語が試験でどのように出題されるか見ていきましょう。


試験ではこう出る!

クラッシングは、応用情報技術者試験(AP)午前のプロジェクトマネジメント分野で繰り返し出題されています。

出題の軸はほぼ1つに固定されています。

📊 過去問での出題実績

試験回 出題内容 問われたポイント
AP R元秋
午前 問52
クラッシングの説明として適切なものを選ぶ問題。 ・「資源追加による期間短縮」が正解
・ファストトラッキングの説明(並行実行)がひっかけ
AP H30春
午前 問52
スケジュール短縮の手法に関する問題。 ・クラッシングとファストトラッキングの区別
・コスト増を伴うのはどちらか
AP H27春
午前 問51
プロジェクト期間短縮技法の選択問題。 ・「最小の追加コストで最大の短縮効果を得る」がクラッシングの目的

📝 IPA試験での出題パターン

パターン1:「クラッシングの説明を選べ」
4択でクラッシングの定義を選ばせる形式。ひっかけ選択肢には必ずファストトラッキングの説明(「先行作業の完了を待たずに後続作業を並行して進める」)が紛れ込む。キーワードは「資源追加」「コスト増加」。

 

パターン2:「短縮技法の組合せを選べ」
クラッシングとファストトラッキングの説明文を入れ替えたひっかけが定番。「コストを増やすのがクラッシング/リスクを増やすのがファストトラッキング」と覚えると安全です。

 

試験ではここまででOKです。具体的な投入人数の計算問題は出ないため、深追いは不要です。


【確認テスト】理解度チェック

ここまでの内容を理解できたか、簡単なクイズで確認してみましょう。


Q. プロジェクトマネジメントにおける「クラッシング」の説明として、最も適切なものはどれでしょうか?

  • A. 先行作業の完了を待たずに後続作業を並行して進めることで、全体の所要期間を短縮する技法である。
  • B. クリティカルパス上の作業に追加の資源を投入し、コスト増加と引き換えに所要期間を短縮する技法である。
  • C. プロジェクトのスコープを縮小して成果物の範囲を絞り込むことで、結果的に作業期間を短縮する技法である。

正解と解説を見る

正解:B

解説:
クラッシングは、クリティカルパス上の作業に人員などの資源を追加投入し、追加コストと引き換えに期間を短縮するスケジュール短縮技法です。「コスト増を伴う」という点が他の選択肢との明確な区別ポイントになります。

選択肢Aはファストトラッキングの説明です。並行実行による短縮はコストを増やさない代わりに手戻りリスクが高まる手法で、クラッシングとは別物です。選択肢Cはスコープ縮小(スコープマネジメントの一手段)の説明であり、スケジュール短縮技法には分類されません。


よくある質問(FAQ)

Q. 人員を倍にすれば作業期間は半分になりますか?

なりません。新メンバーへの教育・引継ぎ・コミュニケーションコストが発生するため、投入人数と短縮量は比例しません。ソフトウェア開発では、F.ブルックスが「遅れているプロジェクトに人員を追加するとさらに遅れる」と指摘した、いわゆる「ブルックスの法則」も存在します。実務では「どの作業を、どれだけ短縮すると、どれだけコストが増えるか」をトレードオフ表として整理し、費用対効果が最も高い作業から短縮します。

Q. クラッシングとファストトラッキング、実務ではどちらを優先しますか?

一般的にはファストトラッキングを先に検討します。追加予算が不要なため意思決定のハードルが低いからです。ただし、設計レビュー前に実装に着手するなど、手戻りが発生しやすい場面では選べません。並行化が難しい場合や品質を絶対に落とせない場面では、予算を確保してクラッシングに切り替えるのが定石です。

Q. PMBOKでは他にどんなスケジュール短縮技法がありますか?

PMBOK第7版以降では、スケジュール圧縮技法として明示されているのは主にクラッシングとファストトラッキングの2つです。広義には「リソース最適化(リソース平準化・リソース円滑化)」や「アジャイル手法によるイテレーション短縮」も期間調整の選択肢として扱われますが、これらは厳密には「短縮技法」ではなく「調整技法」として区別されます。試験対策としては2つの短縮技法をしっかり区別できれば十分です。

Q. クリティカルパス以外の作業をクラッシングしても意味がないのはなぜですか?

プロジェクト全体の所要期間は、クリティカルパス(最長経路)の長さで決まるためです。それ以外の作業にはフロート(余裕時間)があり、短縮しても最長経路が変わらない限り全体の納期は前倒しになりません。クラッシングを検討するときは、まずネットワーク図でクリティカルパスを特定し、その経路上で「単位コストあたり最も短縮効果が大きい作業」から手をつけるのがセオリーです。