対象試験と出題頻度
EVM(Earned Value Management)は、基本情報技術者・応用情報技術者で出題されるテーマです。
プロジェクトマネジメントの進捗・コスト管理手法として定番化しており、PV・EV・ACの3指標と、そこから導かれるCV・SV・CPI・SPIの計算が正確にできるかが問われます。
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基本情報技術者
応用情報技術者
★★★☆☆
ランクB(標準)覚えておくと有利
用語の定義
情報処理試験を勉強していると、「EVMって進捗管理?コスト管理?結局何を計算する手法なの?」と混乱しがちです。
EVM(Earned Value Management)とは、一言で言うと
「プロジェクトの進捗とコストを「金額」に換算して同時に管理する手法」
のことです。
イメージとしては、「家のリフォーム工事の家計簿」です。
「今日までに50万円分の作業が終わっている予定だった(計画)」「実際には40万円分しか進んでいない(出来高)」「しかも45万円を使ってしまった(実費)」――この3つを並べて見ると、「予定より遅れていて、しかも予算もオーバー気味」と一目で分かります。
EVMはこれをプロジェクト全体で行う仕組みです。進捗と予算を別々に管理するのではなく、両方を同じ「お金」の物差しで測ることで、ズレを早期に発見できます。
📊 EVMの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 英語名 | Earned Value Management |
| 分類 | プロジェクトマネジメント/進捗・コスト統合管理 |
| 3つの基本指標 | PV(出来高計画値)、EV(出来高実績値)、AC(コスト実績値) |
| 準拠標準 | PMBOK Guide(PMI) |
解説
プロジェクトでは「進捗は80%です」「予算は60%消化しました」と別々に報告されることが多くあります。
しかしこの2つを別管理にすると、「進捗は遅いがコストは予算内」なのか「進捗は進んでいるが大幅赤字」なのかが瞬時に判断できません。
この弱点を解決するために生まれたのがEVMです。
作業量を「金額」という共通の単位に換算することで、進捗とコストを同じ土俵で比較できるようにしました。
3つの基本指標:PV・EV・AC
EVMの土台となるのは、次の3つの値です。すべて「円(金額)」で表します。
| 略号 | 正式名称 | 意味 |
|---|---|---|
| PV | Planned Value (出来高計画値) |
「この時点までに、これだけの作業が終わっているはず」という計画上の出来高(金額換算) |
| EV | Earned Value (出来高実績値) |
「実際に終わった作業」を金額換算したもの。EVMの心臓部 |
| AC | Actual Cost (コスト実績値) |
実際に支出したコスト |
| BAC | Budget At Completion (完成時総予算) |
プロジェクト完了時の総予算 |
EVMのSカーブ
PV・EV・ACを時間軸に沿ってグラフにすると、EVMの状況が一目で分かります。下の例は「進捗遅れ+コスト超過」のケースです。
📈 EVMグラフ(現在地点:6か月目)
▲ 月ごとのペースは一定ではない。EVは4か月目で停滞、ACは3か月目に外注費で急増。それでも現在地点(6か月目)でEVがPVを下回り、ACがEVを上回る → 進捗遅延かつコスト超過
差異と効率の計算式
PV・EV・ACの3つから、プロジェクトの「健康診断」を行う4つの指標が導かれます。試験で最も問われる部分です。
| 指標 | 計算式 | 良い/悪いの判定 |
|---|---|---|
| CV コスト差異 |
EV − AC |
>0:予算内 <0:コスト超過 |
| SV スケジュール差異 |
EV − PV |
>0:進捗先行 <0:進捗遅延 |
| CPI コスト効率指数 |
EV ÷ AC |
>1:効率良好 <1:効率悪化 |
| SPI スケジュール効率指数 |
EV ÷ PV |
>1:予定より速い <1:予定より遅い |
💡 覚え方:差異はEVから引く(EV−AC、EV−PV)/効率はEVを割る(EV÷AC、EV÷PV)。すべて「EVが主役」と覚えれば迷いません。
ダッシュボードでの見え方
実務ではRedmineやMicrosoft Projectなどのツールで、次のような表として確認します。先ほどのグラフ(PV=400、EV=240、AC=320、BAC=800)を当てはめた例です。
| 指標 | 値 | ステータス |
|---|---|---|
| PV(出来高計画値) | 400 万円 | ― |
| EV(出来高実績値) | 240 万円 | ― |
| AC(コスト実績値) | 320 万円 | ― |
| SV=EV−PV | −160 万円 | ⚠ 進捗遅延 |
| CV=EV−AC | −80 万円 | ⚠ コスト超過 |
| SPI=EV÷PV | 0.60 | <1:要対策 |
| CPI=EV÷AC | 0.75 | <1:要対策 |
午前問題そのままのパターン
【問】PV=500万円、EV=400万円、AC=480万円のとき、CPIはいくらか。
CPI = EV ÷ AC
= 400 ÷ 480
= 0.833...
→ CPI < 1 のためコスト効率が悪い
同様に SPI = EV ÷ PV = 400 ÷ 500 = 0.8(進捗も遅れ)
では、この用語が試験でどのように出題されるか見ていきましょう。
💡 EVMの核心を3行で
・進捗とコストを「金額」という共通単位で同時に管理する手法
・基本3指標はPV(計画)/EV(出来高)/AC(実コスト)
・差異はEV−○、効率はEV÷○。1未満や負の値は赤信号
試験ではこう出る!
EVMは、FE・APの午前問題で「用語の定義を問う問題」と「PV・EV・ACを与えて指標を計算させる問題」の2パターンで繰り返し出題されています。
📊 過去問での出題実績
| 試験回 | 出題内容 | 問われたポイント |
|---|---|---|
| AP R5春 午前 問52 |
EVMで進捗管理しているプロジェクトのSPI算出。 | ・SPI = EV ÷ PV の公式記憶 ・指数が1未満なら進捗遅延と判断 |
| AP R3秋 午前 問52 |
EVMの管理対象として最も適切なものを選ぶ問題。 | ・正解は「プロジェクトのスケジュールとコスト」 ・「品質」「リスク」「スコープ」がひっかけ |
| FE H31春 午前 問52 |
EVMにおけるEV(アーンドバリュー)の意味を問う問題。 | ・EV=「完了した作業の金額換算」 ・PV・ACの定義との混同に注意 |
| AP H29秋 午前 問52 |
PV・EV・ACの値からCV・SVを計算させる問題。 | ・CV=EV−AC、SV=EV−PV ・符号の正負で予算超過/遅延を判断 |
📝 IPA試験での出題パターン
パターン1:「EVMの管理対象を選べ」
「EVMで何を統合管理するか」を問う形式。正解は「スケジュールとコスト」。ひっかけとして「品質と納期」「スコープとリソース」「リスクと進捗」が並ぶ。キーワードは「進捗とコストの統合」「金額換算」。
パターン2:「指標を計算せよ」
PV・EV・ACの数値が与えられ、CV/SV/CPI/SPIのいずれかを求める計算問題。公式さえ覚えれば確実に得点できる。最頻出はSPI(EV÷PV)とCPI(EV÷AC)。
ひっかけの定番:CPIとSPIを逆に覚えていると即不正解。「C」はCost=ACと組む、「S」はSchedule=PVと組む、と分けて記憶してください。試験ではここまででOKです。EAC(完成時総コスト見積)等の派生指標は深追い不要です。
【確認テスト】理解度チェック
ここまでの内容を理解できたか、簡単なクイズで確認してみましょう。
Q. EVM(Earned Value Management)の説明として、最も適切なものはどれでしょうか?
- A. プロジェクトの作業を細分化して階層的に整理し、成果物単位で管理するための構造図を作成する手法。
- B. プロジェクトの進捗とコストを金額に換算した出来高で同時に把握し、計画値・実績値・実コストの差異から状況を評価する手法。
- C. プロジェクト内の作業の依存関係を矢印で結び、最長経路を求めて完了までの最短期間を導く手法。
正解と解説を見る
正解:B
解説:
EVMは、PV(計画値)・EV(出来高実績)・AC(実コスト)の3指標を金額で扱い、スケジュールとコストの両方を同じ物差しで評価するプロジェクトマネジメント手法です。差異(CV・SV)と効率(CPI・SPI)からプロジェクトの健全性を判定します。
選択肢AはWBS(Work Breakdown Structure)の説明です。作業を階層的に分解する構造図であり、出来高の評価手法ではありません。選択肢CはCPM(Critical Path Method/クリティカルパス法)の説明です。作業の依存関係から最長経路を求めるスケジューリング技法であり、金額換算による進捗・コスト評価を行うEVMとは異なります。
よくある質問(FAQ)
Q. EVMはどんなプロジェクトに向いていますか?
スコープが事前に確定しており、作業をWBSで細かく分解できる中〜大規模プロジェクトに向いています。逆に、要件が頻繁に変わるアジャイル開発では出来高の計画値を固定しにくく、相性は良くありません。アジャイルではバーンダウンチャートなど別の指標が使われます。
Q. CPIやSPIがどれくらい下回ると危険信号ですか?
実務の目安では、CPI・SPIともに0.9を下回ったら是正措置を検討、0.8を切ったら大幅な計画見直しが必要なレベルとされます。1.0が「計画通り」、1.0超は「順調」と覚えておくと判断が早いです。試験ではこの閾値そのものは問われないため、「1未満なら悪化」という方向感だけで十分です。
Q. EAC(完成時総コスト見積)とは何ですか?
EAC(Estimate At Completion)は「現状のペースで進めた場合、最終的にいくらかかるか」の予測値です。代表的な式は EAC = BAC ÷ CPI で、コスト効率が悪化したまま進んだ場合の完成時総コストを推定します。これに対しBACは当初の総予算なので、EAC>BACであれば最終的に予算オーバーが見込まれます。AP試験では稀に出題されますが、FEでは基本指標が中心で深入りは不要です。
Q. EVと「進捗率(%)」の関係は?
EV = BAC × 進捗率 で求めることができます。例えば総予算800万円のプロジェクトが30%完了していれば、EV = 800 × 0.3 = 240万円となります。試験では「進捗率○%、総予算○円」という条件からEVを逆算させる問題もあるため、この関係式は押さえておくと得点源になります。
Q. EVMはPMBOKのどの知識エリアに属しますか?
PMBOK Guide(PMI発行)の「コスト・マネジメント」と「スケジュール・マネジメント」にまたがって登場します。両方を統合的に扱う点が特徴で、PMBOKでは「コストのコントロール」プロセスの代表的な技法として記載されています。IPA試験のシラバスでもプロジェクトマネジメント領域のコスト管理技法として位置づけられています。