情報処理試験を勉強していると、「差分バックアップと増分バックアップって何が違うの?」と混乱しがちです。名前が似ているうえに、どちらも「変更があったデータだけを保存する」点は共通しているため、区別がつかなくなるのは当然です。

この記事では、フルバックアップを基準に「差分」と「増分」がそれぞれ何を保存し、復旧時にどう使い分けるかを図解で整理します。

対象試験と出題頻度

差分・増分バックアップは、ITパスポート・基本情報技術者・応用情報技術者のいずれでも出題されるテーマです。

3方式(フル・差分・増分)の定義を正しく区別できるか、復旧に必要なバックアップの組み合わせを正確に答えられるかが問われます。

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対象試験:
ITパスポート
基本情報技術者
応用情報技術者
出題頻度:
★★★★☆
ランクA(重要)必ず覚えておくべき

用語の定義

バックアップには「フル」「差分」「増分」の3方式があります。フルバックアップを土台として、差分と増分は「どこからの変更分を保存するか」が異なります。

差分バックアップ(Differential Backup)とは、一言で言うと

 「前回のフルバックアップ以降に変更されたデータをすべて保存する方式

のことです。

増分バックアップ(Incremental Backup)とは、一言で言うと

 「前回のバックアップ(フルまたは増分)以降に変更されたデータだけを保存する方式

のことです。

イメージとしては、日記のコピーの取り方で考えると分かりやすいです。

日曜日に日記帳をまるごとコピーするのがフルバックアップ。月曜日以降、「日曜日のコピーから増えたページを毎日まとめてコピー」するのが差分バックアップ。

「昨日のコピーから増えた分だけコピー」するのが増分バックアップです。

📊 差分・増分バックアップの基本情報

項目 差分バックアップ 増分バックアップ
英語名 Differential Backup Incremental Backup
保存対象 フルバックアップ以降の全変更分 前回バックアップ以降の変更分のみ
バックアップ時間 日が経つほど長くなる 毎回短い
復旧に必要な世代 フル+直前の差分(計2つ) フル+全増分(複数)
復旧時間 比較的短い 増分の数に比例して長くなる

解説

業務システムでは毎日のデータ更新量が膨大になるため、毎回すべてのデータをコピーするフルバックアップだけでは時間もストレージも足りません。

そこで「変更された部分だけを効率よく保存する」手法として差分・増分の2方式が生まれました。

3方式の動作の違いを図解で比較

日曜にフルバックアップを取り、月〜水の3日間で運用する場面を想定します。

各日に新たなデータ(A・B・C)が追加されたとき、それぞれの方式でどのデータが保存されるかを見てください。

フルバックアップ方式

日曜(フル)
全データ
月曜(フル)
全データ+A
火曜(フル)
全データ+A+B
水曜(フル)
全データ+A+B+C

▲ 毎回すべてのデータを保存するため、バックアップ時間は長いが復旧は最新1つで済む

差分バックアップ方式

日曜(フル)
全データ
月曜(差分)
A
火曜(差分)
A+B
水曜(差分)
A+B+C

▲ フル以降の変更を毎回すべて保存 → 日が経つほどデータ量が増える。復旧はフル+直前の差分の2つ

増分バックアップ方式

日曜(フル)
全データ
月曜(増分)
A
火曜(増分)
Bのみ
水曜(増分)
Cのみ

▲ 前回バックアップからの変更分だけを保存 → 毎回のデータ量は少ない。復旧はフル+全増分が必要

復旧手順の違い

ここだけは確実に押さえてください。

「水曜の障害発生後、火曜終了時点に復旧する」場面を想定したとき、必要なバックアップの数が異なります。

方式 復旧に必要なもの 必要数
フル 火曜のフルバックアップのみ 1つ
差分 日曜のフル + 火曜の差分 2つ
増分 日曜のフル + 月曜の増分 + 火曜の増分 3つ

差分方式は復旧が速い代わりに毎日の保存データ量が膨らみ、増分方式は毎日の保存が軽い代わりに復旧時の手順が増えます。これがバックアップ方式の本質的なトレードオフです。

アーカイブビットによる管理

OSはファイルごとに「更新されたかどうか」を示すフラグ(アーカイブビット)を管理しています。

差分と増分の動作の違いは、このフラグのリセットタイミングに起因します。

方式 バックアップ後のフラグ 結果
差分 リセットしない(残す) 次回もフル以降の全変更を保存する
増分 リセットする(消す) 次回は今回以降の変更分だけ保存する

では、これらの知識が試験でどのように出題されるか見ていきましょう。

💡 差分・増分バックアップの核心を3行で

・差分=フル以降の全変更を保存。復旧はフル+差分1つで済む
・増分=前回バックアップ以降の変更分だけ保存。復旧はフル+全増分が必要
・バックアップ時間と復旧時間はトレードオフの関係にある


試験ではこう出る!

バックアップ方式の問題は、IP・FE・APいずれでも繰り返し出題されています。出題パターンは大きく2つに分かれます。

📊 過去問での出題実績

試験回 出題内容 問われたポイント
FE R1秋
問19
バックアップ方式の説明のうち、増分バックアップはどれか ・「直前のバックアップ以降の変更分を保存し、フラグをリセットする」が正解
・差分の説明(フラグをリセットしない)がひっかけ
AP R5秋
問57
フルと差分を併用した運用に関する適切な記述を選ぶ ・「フルで復元→差分を反映」が正解
・「差分だけで復旧可能」はひっかけ
AP R3秋
問55
差分バックアップの運用で必要な磁気テープの最少本数を求める ・フル用と差分用のテープ本数×保持月数の計算問題
IP H28春
問92
増分バックアップで復元に必要なファイルの組み合わせを選ぶ ・フル+月曜の増分+火曜の増分が正解
・「火曜の増分だけ」は増分の定義を誤解した選択肢

📝 IPA試験での出題パターン

パターン1:「方式の定義を選べ」
FE R1秋 問19のように、3方式の説明文が並び「増分バックアップはどれか」を選ばせる形式。ひっかけは差分と増分の説明文の入れ替え。「フラグをリセットするかしないか」が判断基準になる。

 

パターン2:「復旧に必要なバックアップを選べ」
IP H28春 問92やAP R3秋 問55のように、復旧や運用に必要なバックアップの数・組み合わせを問う形式。差分なら「フル+直前の差分」、増分なら「フル+全増分」という復旧手順を正確に覚えていれば解ける。

 

試験ではここまででOKです。実務で使われるスナップショットやCDPなどの方式は試験範囲外なので、深追いは不要です。


【確認テスト】理解度チェック

ここまでの内容を理解できたか、簡単なクイズで確認してみましょう。


Q. 毎週日曜日にフルバックアップを取り、月曜〜土曜は差分バックアップを取るシステムがある。木曜の業務中に障害が発生し、水曜の業務終了時点に復旧する場合、必要なバックアップの組み合わせとして正しいものはどれか。

  • A. 日曜のフルバックアップと、水曜の差分バックアップ
  • B. 日曜のフルバックアップと、月曜・火曜・水曜の差分バックアップ
  • C. 水曜の差分バックアップのみ

正解と解説を見る

正解:A

解説:
差分バックアップは、フルバックアップ以降に変更されたデータをすべて含んでいます。水曜の差分には月曜・火曜・水曜の変更分がまとめて入っているため、フルバックアップと水曜の差分の2つで復旧できます。

選択肢Bは増分バックアップの復旧手順です。増分の場合は各日の変更分しか含まないため、フル+全増分(月・火・水)が必要になります。差分との混同を狙ったひっかけ選択肢です。選択肢Cは、差分だけでは復旧できません。差分はあくまで変更分のみを記録しているため、フルバックアップで土台を復元してから差分を適用する必要があります。


よくある質問(FAQ)

Q. 実務ではどの方式が一番多く使われていますか?

多くの企業では「定期的なフルバックアップ+日次の増分バックアップ」の組み合わせが主流です。ストレージコストを抑えつつ、バックアップ時間を短縮できるためです。一方、復旧速度を最優先するミッションクリティカルなシステムでは差分方式を採用するケースもあります。運用要件に応じて可用性とコストのバランスで選択します。

Q. RAIDを導入していればバックアップは不要ですか?

不要にはなりません。RAIDはディスク故障に対する耐障害性を高める技術であり、誤操作によるファイル削除やランサムウェアによる暗号化には対応できません。バックアップは「ある時点のデータの複製を別メディアに保管すること」であり、RAIDとは目的が異なります。両方を組み合わせて運用するのが基本です。

Q. 「世代管理」とは何ですか?

バックアップデータを複数の時点分保持する運用方法です。たとえば「3世代管理」なら、過去3回分のバックアップを保管し、古いものから順に上書きします。AP R3秋 問55のように「何か月分のデータを保持するか」によって必要な媒体数が変わる計算問題は、この世代管理の考え方がベースです。

Q. ミラーリングとバックアップの違いを教えてください。

ミラーリングは同じデータを2台のディスクにリアルタイムで同時書き込みする技術です。ディスク故障時に即座に切り替わるのが強みですが、誤ってファイルを削除するとミラー側にも即座に反映されてしまいます。バックアップは特定の時点のデータを別メディアに「静的に」保管するため、誤操作やウイルス被害からの復旧手段になります。