ゲーム理論・ナッシュ均衡の対象試験と出題頻度

ストラテジ系は暗記項目が多く、ゲーム理論やナッシュ均衡のような数年に一度の用語は後回しにされがちではないでしょうか。

ただ、この分野に限っては捨て問にしないでほしい理由があります。

ゲーム理論はストラテジ系・企業活動・業務分析(OR)に属する分野で、FE・APの午前で出題されます。

頻出度はCですが、FE・AP合わせて9回の出題実績があり、しかも利得表を使う計算型は数値まで同じ問題が繰り返し出ている。学習コストに対する得点効率は、ストラテジ系の中でもかなり高い部類です。

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対象試験:
基本情報技術者試験(FE)
応用情報技術者試験(AP)
出題頻度:
★★☆☆☆
Cランク(数年に一度/出れば確実に取れる型)

ゲーム理論・ナッシュ均衡の定義

「均衡」という言葉が抽象的で、日本語を読んでも何が釣り合っているのか掴めない。ナッシュ均衡でつまずく人の多くは、ここで止まっています。

ゲーム理論は、複数の意思決定者が互いの出方を読み合う状況を分析する理論です。その中で数学者ジョン・ナッシュが定式化した「解」の概念がナッシュ均衡にあたります。

ナッシュ均衡とは、

相手の戦略を所与としたとき、自分だけ戦略を変えても利得を増やせない組合せ

です。

飲食店に置き換えると、牛丼チェーン2社の値下げ合戦がそれにあたります。相手が安売りを続けている限り、自社だけ定価に戻せば客を取られる。

かといって双方とも値下げしたままでは利益が細る。どちらも動けなくなった、あのにらみ合いの状態が均衡です。

📊 ゲーム理論・ナッシュ均衡の基本情報

項目 内容
英語表記 Game Theory / Nash Equilibrium
包含関係 ゲーム理論という枠組みの中の「解の概念」がナッシュ均衡。同義ではない
使う道具 利得表(ペイオフマトリクス)
適用条件 競合相手が存在し、結果が相手の選択に左右される状況
分類 ストラテジ系/企業活動/業務分析・データ利活用(OR・IE)

ゲーム理論・ナッシュ均衡の解説

利得表(ペイオフマトリクス)の読み方

試験で示されるのは、たいてい2社×2戦略の小さな表です。

行が自社の戦略、列が相手の戦略、セルの中は「(自社の利得, 相手の利得)」という並びになっています。

左右どちらの数値が誰のものかは問題文に必ず書いてあるので、そこを読み飛ばさないでください。

📊 図解①:2×2利得表(A社の利益, B社の利益)

B社:b1
B社:b2
A社:a1
(60, 40)
A社の印のみ
(70, 55)
印が2つ重なる
A社:a2
(50, 50)
B社の印のみ
(45, 30)
印なし

単位は営業利益(億円)。淡青=A社の最適反応/淡橙=B社の最適反応/橙枠=両者が重なるナッシュ均衡(a1・b2)

「自分だけが動いても損」という均衡の意味

橙枠の(a1, b2)が均衡になる理由を確かめます。B社がb2を選んでいる前提でA社だけがa2へ動けば、利益は70から45へ下がる。

逆にA社がa1のままのとき、B社だけがb1へ動けば55から40へ下がります。どちらも単独では動く動機を持たない、これが均衡の実体です。

手を動かすうえで大事なのは、比較の向きを固定すること。自社の利得は同じ列の中で縦に、相手の利得は同じ行の中で横に比べます。

向きが混ざった瞬間に答えがずれるので、ここだけは機械的に処理してください。

そして均衡は「安定」であって「最良」ではない。囚人のジレンマと呼ばれる有名な例では、双方が合理的に動いた結果、二人とも損をする組合せで固定されます。

全体として最も望ましい状態(パレート最適)と一致しないことがある、という点までAP受験者は押さえておきましょう。

📝 ポイント整理

・自社の利得は縦(列内)、相手の利得は横(行内)で比較する
・両者の印が重なったセルがナッシュ均衡
・均衡は複数存在することも、純粋戦略では存在しないこともある
・ナッシュ均衡は全体最適とは限らない

試験ではこう出る!ゲーム理論の出題パターン

出題パターン分析

📝 IPA試験での出題パターン

パターン1:用語定義選択型
4択のうち3つがゼロサム・ミニマックス・マクシミンの説明文。記述の見分けだけで解ける(AP 令和6年春 問73)。

 

パターン2:利得表読解型
市場シェアの表からナッシュ均衡の組合せを選ぶ。FE 平成26年秋・AP 平成24年春・AP 令和6年秋の3回とも正解は「イ」で、表の数値まで同型の再利用問題。

 

パターン3:手法選択型/マクシミン系計算型
「ゲーム理論を使うのに適した業務はどれか」(FE 令和4年度 問77)と、投資計画や株式選択でマクシミン原理を適用させる型。

過去問の出題実績(全9件)を見る

AP 令和6年春 問73:ナッシュ均衡の説明はどれか(用語選択)/正解 エ

AP 令和6年秋 問75:市場シェア表からナッシュ均衡の組合せを選ぶ/正解 イ

FE 平成26年秋 問77:市場シェア表からナッシュ均衡の組合せを選ぶ/正解 イ

AP 平成24年春 問74:市場シェア表からナッシュ均衡の組合せを選ぶ/正解 イ

FE 令和4年度(午前免除6月) 問77:ゲーム理論を使って検討するのに適した業務はどれか/正解 ウ(出題歴:AP 平成21年春 問76)

AP 平成22年春 問76:投資計画とマクシミン/マクシマックス原理の記述選択/正解 エ

AP 平成27年秋 問75:同上(再出題)/正解 エ

FE 平成18年春 問76:両社がマキシミン戦略を採った場合のA社の利得/正解 ウ

FE 平成20年春 問77:マクシミン原理に従うとき投資すべき株式/正解 ア(出題歴:AP 令和3年秋 問75/AP 平成29年春 問76)

ひっかけポイントと対策

誤答選択肢の作り方には型があります。

定番は「利得の総和がゼロ」というゼロサムゲームの説明を混ぜること。

もう一つが主語の入れ替えで、自分の最小利得を最大化するならマクシミン、相手の最大利得を最小化するならミニマックスです。

利得表問題では、A社側の数値だけを見て決めさせ、B社側の検討を忘れさせる設計も頻出。

手法選択型では、SWOT分析のような外部環境分析の手法が誤答に置かれます。相手の出方に結果が左右されるかどうかが、SWOT分析との切り分けの基準になる。

試験区分別では、FEは利得表型とマクシミン計算型を手を動かして1回ずつ解けば十分です。

APは用語定義選択型の記述識別まで踏み込み、ゼロサム・ミニマックス・マクシミンの説明文3種を読み分けられる状態にしておきましょう。

利得表から30秒でナッシュ均衡を見つける3ステップ

ここが本記事の中心です。計算らしい計算はいりません。表を2回スキャンして印を重ねるだけで答えが出ます。

ナッシュ均衡判定の3ステップ

1
縦を見る
列ごとに、自社の利得が大きい方に印
2
横を見る
行ごとに、相手の利得が大きい方に印
3
重なりを探す
印が2つ重なったセルが答え

重なりが0なら純粋戦略の均衡なし。複数あれば均衡も複数存在する

図解①の表で試します。

b1列のA社は60>50でa1に印、b2列も70>45でa1に印。

次にa1行のB社は40<55でb2に印、a2行は50>30でb1に印。重なるのは(a1, b2)のセルだけで、これが答えです。この手順は過去問3回分にそのまま通用します。

次に、混同しやすい4つの近縁用語との違いを整理します。判断基準の「主語」に注目してください。

📊 図解③:ナッシュ均衡と混同しやすい用語の比較

用語 概要 判断基準 性格 試験での問われ方
ナッシュ均衡 互いに動けない安定点 相手を所与としたとき自分だけ変えても得しない 相手ありき 利得表から組合せを選ぶ/定義選択
マクシミン戦略 最悪の中で最善を取る 自分の最小利得が最大になる戦略 悲観的・保守的 投資計画・株式選択の計算
マクシマックス原理 最良の中で最良を狙う 自分の最大利得が最大になる戦略 楽観的 マクシミンとの対比で記述選択
ミニマックス戦略 相手の取り分を抑え込む 相手の最大利得を最小化する 防御的 主語の入れ替えで誤答に混入
ゼロサムゲーム 奪い合いの構造 全員の利得の総和がゼロ ゲームの分類(解ではない) ナッシュ均衡の誤答として登場

他のOR手法との使い分けも同じ発想で切れます。

発生確率が分かるなら期待値、制約条件下の最大化なら線形計画法、到着や処理の確率分布が既知なら待ち行列理論(M/M/1)

確率が不明で、しかも結果が競合の出方に依存するときだけゲーム理論の出番です。

【確認テスト】ナッシュ均衡の理解度チェック

Q. ゲーム理論における「ナッシュ均衡」の説明として最も適切なものはどれか。

  • A. 各戦略のうち、最小の利得が最も大きくなる戦略を選択している状態
  • B. 相手の戦略を前提としたとき、どのプレイヤーも自分だけが戦略を変更しても利得を増やせない戦略の組合せ
  • C. 一方の利得が他方の損失となり、参加者全員の利得の総和がゼロになる状態
正解と解説を見る

正解:B

解説:
「相手を所与とする」「自分だけ動いても得しない」という2要素が揃っている点が決め手です。なお、ナッシュ均衡は「安定している状態」であって「全員にとって最も望ましい状態」ではありません。囚人のジレンマのように、全員が合理的に動いた結果、双方にとって損な組合せで固定されることもあります。

Aが不正解の理由:マクシミン戦略の説明です。「最悪でもこれだけは確保する」という保守的な判断基準であり、相手との相互作用は問題にしていません。

Cが不正解の理由:ゼロサムゲームの説明です。ゲームの性質を表す分類であって、均衡という「解」を指す語ではありません。

ゲーム理論・ナッシュ均衡の関連用語ネットワーク

同じ業務分析の小分類にある手法と一緒に押さえると、選択肢の切り分けが速くなります。

📊 関連用語マップ

カテゴリ 関連用語
前提知識 利得表(ペイオフマトリクス)、期待値、マクシミン戦略
関連用語 線形計画法、待ち行列理論、ABC分析、ゼロサムゲーム、ミニマックス戦略
発展 囚人のジレンマ、パレート最適、競争地位別戦略

📝 この記事のまとめ

・ゲーム理論は相手の出方を読み合う状況の分析理論、ナッシュ均衡はその「解」
・利得表は縦(自社)→横(相手)の2回スキャンで印の重なりを探す
・マクシミンは自分の中だけで完結、ナッシュは相手ありき
・利得表型は数値まで同型の再利用問題。1問解けば確実に得点できる