ABC分析の対象試験と出題頻度

参考書を開くと「ABC分析」と「ABC(活動基準原価計算)」が近い場所に並んでいて、どちらの話なのか迷った経験はないでしょうか。

ABC分析はストラテジ系「企業活動」の定番論点で、IP・FE・APの3区分すべてに出題実績があります。IPでは説明文や事例を選ぶ形が中心。

FE・APでは表の数値からA群の種類数を数える計算問題が繰り返し出ており、区分によって必要な準備が変わります。

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対象試験:
ITパスポート試験(IP)
基本情報技術者試験(FE)
応用情報技術者試験(AP)
出題頻度:
★★★★☆
頻出度A(IPは事例選択、FE・APは計算問題が中心)

ABC分析の定義

「重点分析」という別名で書かれていたり、パレート図とセットで説明されていたりするため、どこからどこまでがABC分析なのか輪郭をつかみにくい用語。まずは定義を1文で固定してしまいましょう。

発想の源流は、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが見いだした「全体の大部分は上位のわずかな要素が生み出す」という偏りの法則にあります。

これを在庫管理の実務に落とし込み、3ランク分類として体系化したのが1950年代のゼネラル・エレクトリック社だとされています。

ABC分析とは、

金額の大きい順に並べ、累積構成比でA・B・Cの3ランクに分けて重点管理する手法

です。

自宅の冷蔵庫の中身を思い浮かべてみてください。しょうゆやみそのように毎日使うものは切らすと困るので、残量を見ながらこまめに買い足すはず。

逆に年に一度しか使わないスパイスは、多少余っていても気にしません。同じ「食材」でも使用金額の大きさで買い方を変える、この発想がそのままABC分析の考え方になります。

📊 ABC分析の基本情報

項目 内容
英語名 ABC Analysis
別名 重点分析/ABC分類
分類 ストラテジ系 > 企業活動 > 業務分析・データ利活用
使用する図 パレート図(棒グラフ+累積構成比の折れ線)
背景理論 パレートの法則(上位2割が全体の8割を占めるという経験則)
主な用途 在庫管理、売れ筋商品の把握、品目削減、不良原因の絞り込み

ABC分析の解説

A・B・Cはどこで区切るのか(累積構成比と70%・90%)

ランク分けの基準になるのは、売上金額そのものではなく累積構成比です。金額の大きい順に並べ、上から順に構成比を足していった値が70%までをA群、90%までをB群、残りをC群とするのが一般的な区切り方。

次の表は、10品目の売上を実際にこの手順で分類したものになります。

📊 ABCランク分け表と累積構成比バー(点線=70%・90%の基準線)

商品 売上金額 構成比 累積構成比 ランク
商品A 5,000万円 40.0%
40.0%
A
商品B 3,800万円 30.4%
70.4%
A
商品C 1,200万円 9.6%
80.0%
B
商品D 800万円 6.4%
86.4%
B
商品E 600万円 4.8%
91.2%
B
商品F 300万円 2.4%
93.6%
C
商品G 300万円 2.4%
96.0%
C
商品H 250万円 2.0%
98.0%
C
商品I 150万円 1.2%
99.2%
C
商品J 100万円 0.8%
100.0%
C

売上合計12,500万円。バーが最初の点線を越えた商品Bまでが A群、次の点線を越えた商品Eまでが B群。

この表で注目すべきは、品目数と金額の逆転関係です。A群はわずか2品目(全体の20%)にすぎないのに、売上の70%超を占めています。

逆にC群は5品目(同50%)もあるのに、売上への貢献は1割弱。数は少ないが金額が大きい塊を切り出すことが、ABC分析の狙いになります。

パレート図との関係 ―「図」と「手法」の役割分担

ABC分析とセットで必ず登場するのがパレート図で、これは金額の棒グラフと累積構成比の折れ線を重ねた複合グラフを指します。

この図はQC7つ道具の一つに数えられ、品質管理の現場から広まりました。

両者の関係は、手法(ABC分析)が道具(パレート図)を使うという上下関係で整理できます。

試験でも「ABC分析で使用する図はどれか」という問い方(IP H26春 問14)がされており、答えはパレート図。逆に「パレート図で行う分析は」と聞かれればABC分析になります。

図の名前と手法の名前を入れ替えて出題されるので、どちらが道具なのかを覚えておいてください。

ランクごとに管理方法を変えるのが本当の目的

分類して満足してしまうと、ABC分析は単なる集計表で終わります。

実務での価値は、ランクを管理方法の分岐条件として使う点にあるでしょう。

📊 ランク別の管理方針比較

ランク 累積構成比 品目数の目安 発注方式 棚卸頻度 現場での扱い
A群 0〜70% 約20% 定期発注(発注点を絞り小ロット高頻度納品) 週次の循環棚卸 欠品も過剰在庫も許されない最重点品
B群 70〜90% 約30% 定量発注(発注点方式で自動化) 四半期ごと 例外時だけ人が判断する準重点品
C群 90〜100% 約50% まとめ発注・ダブルビン方式で省力化 年1回 管理コストを下げる。取扱中止の候補

在庫管理システムの改修案件では、商品マスタに「ABCランク」という1文字のコード項目を持たせ、前月の出荷金額から夜間バッチで自動再計算する実装をよく見かけます。

このコードは分析結果を眺めるためのものではなく、発注点計算ロジックと棚卸サイクルの分岐条件として参照される値。

A群だけ週次で数え、C群は年1回で済ませるという運用差が、そのまま人件費に効いてきます。

📝 ポイント整理

・並べ替えの基準は「金額」、ランク分けの基準は「累積構成比」
・70%・90%は慣習的な目安。試験では問題文の指定が絶対
・パレート図は道具、ABC分析はそれを使う手法という上下関係
・分類後にランクごとの管理方法を変えて初めて効果が出る

ABC分析は試験ではこう出る!

出題形式は3型に整理できます。どの型に当たっても30秒以内に処理できる状態を目標にしてください。

📝 IPA試験での出題パターン

パターン1:説明文選択型(IP中心)
ABC分析の説明として正しい記述を選ぶ形。「累積構成比」「重要度をランク付け」という語が入った選択肢が正解になります。

 

パターン2:事例選択型(IP・FE)
4つの分析事例から該当するものを選ぶ形。他の分析手法との識別が本質で、後述の比較表がそのまま得点源になる型。

 

パターン3:計算型(FE・AP固有)
不良品個数などの表を与え、「A群は何種類か」を数えさせる形。しきい値の計算と累積の打ち切り判断が問われます。

 

IPは1・2型のみで十分。FE・APは3型への対応が必須で、午前で確実に1問取り切る位置づけの論点です。

過去の出題実績を確認する(公開問題のうち代表的なもの)

IP 平成22年春 問23:ABC分析の説明として適切なものはどれか(累積構成比を基に重要度をランク付けする)/正解:エ

IP 平成26年春 問14:ABC分析で使用する図として適切なものはどれか/正解:エ(パレート図)

IP 令和3年春 問21:ABC分析の事例として適切なものはどれか(売上高の高い順に3グループへ分類)/正解:イ

FE 平成20年秋 問73:不良品個数の表からA群(70%以上)の製品は何種類か/正解:ウ(5種類)

FE 平成23年特別 問74:ABC分析を適用する事例はどれか(売れ筋商品の把握)/正解:イ

AP 令和2年秋 問74:不良品個数の表からA群(70%以上)の製品は何種類か/正解:ウ(5種類)

ひっかけの傾向もはっきりしています。

説明文選択型では、特性要因図(魚の骨で要因を整理)・散布図(2変数の相関)・管理図(工程の安定性)が並ぶのが定番。事例選択型では、コーホート分析・3C分析・RFM分析という「三つの◯◯で見る」手法が横並びになり、語感で迷わせにきます。

さらに主成分分析が正解の問題でABC分析が誤答として置かれる例もあるため、「データ項目を絞り込む=ABC分析ではない」という逆方向の識別も持っておきましょう。

なお上記はIPAが公開している問題のうち代表的なものであり、CBT方式の回は全問が公表されているわけではありません。

ここに挙げた6件以外にも出題がある前提で準備してください。

【計算問題】「A群は何種類か」を30秒で解く3ステップ

FE H20秋 問73 と AP R2秋 問74 は、ほぼ同一形式の計算問題。製品別の不良品個数の表が与えられ、「A群(累積70%以上)に入るのは何種類か」を問われます。

実務でも障害チケットを原因モジュール別に集計して同じ処理を行い、上位2モジュールで全体の7割という結果からテスト工数を再配分することがあり、手順そのものは現場の作業と変わりません。

📊 A群の種類数を求める3ステップ(不良品個数875個の例)

①合計を出す
全製品の個数を合算
合計=875個
»
②しきい値を出す
合計×70%を計算し切り上げ
875×0.7=612.5
→613個以上
»
③大きい順に足す
超えた時点で打ち切り
182+136+120+98+91
=627 → 5種類

構成比を1件ずつ%に直す必要はなく、個数のまま累積して比較するのが最短ルート。

落とし穴は2つあります。

1つ目は並べ替え忘れで、表が製品番号順に並んでいる場合は必ず個数の降順に並べ直してから累積してください。

2つ目はしきい値の端数処理。612.5個という個数は存在しないため、「70%以上」を満たすには613個以上が必要になります。

切り捨てて612としてしまうと、境界付近で種類数が1つずれる可能性があるので注意しましょう。

【確認テスト】ABC分析の理解度チェック

Q. ABC分析の事例として、最も適切なものはどれでしょうか?

  • A. マーケティング環境を、顧客・競合・自社の三つの観点から分析する。
  • B. リピート顧客を、最新購買日・購買頻度・購買金額の三つの観点から分析する。
  • C. 自社の商品を売上高の高い順に並べ、累積構成比を基に三つのグループへ分類して重点的に管理する。
正解と解説を見る

正解:C

解説:
金額の大きい順に並べ、累積構成比でA・B・Cにランク分けし、限られた経営資源をA群へ集中させるのがABC分析です。IP 令和3年春 問21も、これとほぼ同じ文面が正解になりました。

Aが不正解の理由:3C分析の説明です。外部環境と自社を俯瞰して戦略の方向性を導く手法であり、個々の商品を順位付けするものではありません。

Bが不正解の理由:RFM分析の説明です。分析の対象が「商品」ではなく「顧客」である点が決定的な違い。「三つに分ける」という共通点に引きずられず、何を分けているのかで判断してください。

ABC分析の関連用語ネットワーク

紛らわしい4つの手法は、「分析の対象」「使う軸の数」「出力される答え」の3本で並べると一気に整理できます。

📊 類似する分析手法との比較

手法 分析の対象 使う軸の数 出力される答え
ABC分析 商品・在庫・不良品などの品目 1軸(金額または数量) 重点管理すべき品目(A群)
RFM分析 顧客 3軸(最新購買日・頻度・金額) 優良顧客層と離反顧客層
3C分析 市場環境 3視点(顧客・競合・自社) 戦略の方向性
コーホート分析 同時期に同じ経験をした集団 3効果(時代・年齢・世代) 世代ごとの行動の変化
パレート図 -(手法ではなく図そのもの) ABC分析を行うための可視化

ABC分析は「商品を1軸で3ランクに分ける」、RFM分析は「顧客を3軸で分ける」。分けている対象が商品か顧客かを見た瞬間に判別できれば、IP 令和3年春 問21のような4択は即答できます。

📊 関連用語マップ

カテゴリ 関連用語
前提知識 パレート図(分析に使う図・本文で解説)/QC7つ道具(パレート図を含む上位概念)/パレートの法則
関連用語 RFM分析(顧客を3軸で分ける)/3C分析(市場環境を3視点で見る)/コーホート分析/在庫管理(定期発注方式・定量発注方式)
発展 データマイニング/主成分分析/活動基準原価計算(ABC・略語が同じ別概念)