経済的発注量(EOQ)の対象試験と出題頻度

在庫管理の計算問題は、解き方を知っていれば30秒、知らなければ手が出ないという極端な分野です。経済的発注量(EOQ)はその代表格。

午前問題での登場は数年に一度ですが、出題されれば計算1問が確実に立ちはだかります。

主戦場はFEとAPで、なかでもAPは問74〜76付近が定位置。

ITパスポートでは計算まで問われないため、在庫を持てばコストがかかるという考え方さえ押さえておけば十分でしょう。

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対象試験:
応用情報技術者試験(AP)
基本情報技術者試験(FE)
出題頻度:
★★★☆☆
頻出度B(数年に一度/出れば計算1問が確定)

経済的発注量(EOQ)の定義

在庫は多く持てば欠品しないが、置いておくだけで費用がかかる。

この当たり前の板挟みを、数式で決着させたのが経済的発注量の考え方です。

原型は1913年にフォード・W・ハリスが発表した発注量モデルで、100年以上使われ続けている古典的な公式でもあります。

経済的発注量(EOQ)とは、

発注費用と在庫保管費用の合計が最小になる、1回あたりの発注量

です。

トイレットペーパーの買い置きを思い浮かべてみてください。1回で12ロールまとめて買えば、店に足を運ぶ回数は減ります。その代わり、収納棚は圧迫される。

逆に2ロールずつ買えば置き場所には困らないものの、買い物の回数がかさんでしまう。この2つの不都合がちょうど釣り合う買い方が、EOQにあたります。

📊 経済的発注量(EOQ)の基本情報

項目 内容
英語名 Economic Order Quantity(EOQ)
別名 経済的ロットサイズ/最適発注量
分類 ストラテジ系 > 企業活動 > 業務分析・データ利活用(OR・IE)
使用する図 総費用のU字カーブ(横軸に発注量、縦軸に年間費用を取るグラフ)
前提条件 需要が一定/調達期間が一定/欠品を許さない/数量割引がない
属する発注方式 定量発注方式

経済的発注量(EOQ)の解説

U字カーブで理解する ― なぜ「発注費=保管費」が最小点なのか

縦軸に年間費用、横軸に1回あたりの発注量Qを取ると、性格の異なる3本の線が現れます。まとめて発注するほど発注回数が減るので、年間発注費は右下がり。

1回に大量に届けば在庫は積み上がるため、年間保管費は右上がりに伸びていきます。

総費用のU字カーブとEOQの位置

年間費用 発注費=保管費 ここがEOQ EOQ 1回あたりの発注量 Q
総費用(U字) 年間発注費(右下がり) 年間保管費(右上がり)

2本が交わる真上に、U字の底(総費用の最小点)が来る

図が示すとおり、総費用の底と2本の線の交点は同じ位置に来ます。

年間発注費=年間保管費が成立する点を探せばEOQに届く、というのがこの分野の急所。AP令和2年秋 問75は、まさにこのグラフの各線が何を表すかを問う出題でした。

定量発注方式・定期発注方式・ダブルビン法の中でのEOQの居場所

EOQは在庫管理全般の万能ツールではなく、定量発注方式のためだけに用意された値です。

1回の発注量を固定する方式だからこそ、その固定値を最適化する意味が生まれます。

どの品目に適用するかを決める前工程がABC分析で、金額構成比の高いA群は手間をかけた定期発注、中位のB群が定量発注、少額のC群はダブルビン法という棲み分けが定番の切り分け方。

📊 発注方式3種の比較とEOQの適用範囲

方式名 発注のタイミング 1回の発注量 需要予測 EOQ ABCランク 出題例
定量発注方式 在庫が発注点まで減った時点 毎回一定(固定) 都度は不要 使う B群 AP平成29年春 問75
定期発注方式 あらかじめ決めた周期ごと 毎回変動する 毎回必要 使わない A群 AP平成27年春 問76
ダブルビン法 片方の箱が空になった時点 箱1つ分で一定 不要 実質使わない C群

EOQの前提条件と、実務でそのまま使えない理由

公式が成立するのは、需要が一定・調達期間が一定・欠品なし・数量割引なしという4つの前提が揃ったときだけ。

この条件の厳しさが、理論と現場の距離を生んでいます。

筆者が製造業の販売管理システムを改修していたころ、発注ロジックにEOQの式そのものが実装されていた例はほとんど見かけませんでした。

マスタには「標準発注ロット」という固定値が入っており、その根拠を情報システム部門に尋ねると「10年前に生産管理部が決めた数字」と返ってくる。

受注量は月ごとに揺れますし、仕入先には100個単位でしか受けない、500個以上で単価が下がるといった制約もあるため、理論値の1,000個をそのまま発注できないのが実情です。

とはいえEOQが死んだ知識になったわけではありません。

理論値と現行ロットを突き合わせ、乖離の大きい品目を洗い出す診断ツールとしては今も現役。

理論値の3倍のロットで回している品目は、たいてい過去の欠品トラブルの反動でロットを膨らませたまま見直されていない、という当たりの付け方ができます。

📝 ポイント整理

・総費用の最小点=年間発注費と年間保管費が一致する点。公式より先にこの関係を押さえる
・EOQは定量発注方式の道具。定期発注方式の側に置かれていたら誤り
・4つの前提(需要一定・調達期間一定・欠品なし・割引なし)が崩れると理論値は使えない

経済的発注量(EOQ)は試験ではこう出る!

出題パターン分析

公表されている出題は、大きく3つの型に整理できます。難易度の差がはっきりしているため、型を見抜くところから始めてください。

📝 IPA試験での出題パターン

パターン1:数値代入型(AP令和7年秋 問74)
年間需要量・発注費用・保管費用の3値からEOQを算出させる型。設問文に「発注費と保管費が等しくなる点」というヒントが書かれる年もあり、公式を覚えていなくても到達できる。

 

パターン2:式・グラフ選択型(AP令和2年秋 問75ほか)
U字カーブの各線がどの費用かを識別し、EOQを表す式を選ぶ型。計算はほぼ不要で、3型のうち最も易しい。

 

パターン3:発注点計算型(AP平成31年春 問75ほか)
EOQという語を出しながら、実際に問うのは発注点。EOQの数値はダミーとして置かれる最重要の要注意型。

 

周辺には、定量発注方式と定期発注方式のどちらの特徴かを選ぶ方式識別型(AP平成29年春 問75/AP平成27年春 問76)もあります。EOQは定量発注方式側のキーワードとして登場。

過去問の出題実績を確認する(全7件)

AP 令和7年秋 問74:表の条件から経済的発注量を計算。正解はエ(1,000個)

AP 令和2年秋 問75:費用と発注量のグラフからEOQを表す式を選ぶ。正解はア(Q=√(2RC÷H))

FE 令和3年度 科目A免除修了試験 問75:AP令和2年秋 問75と同一問題。正解はア

AP 平成31年春 問75:EOQ600個・調達期間5日・安全在庫30個から発注点を求める。正解はウ(280個)

FE 令和5年度 科目A免除修了試験 問57:AP平成31年春 問75と同一問題。正解はウ

AP 平成29年春 問75:定量発注方式の特徴を選ぶ。正解はエ

AP 平成27年春 問76:定期発注方式の特徴を選ぶ。正解はイ

※FEの2件は本試験(科目A)ではなく、科目A免除制度の修了試験での出題。またCBT方式の回は全問が公表されるわけではないため、上記7件以外にも出題がある前提で備えてください。

ひっかけポイントと対策

数値代入型の誤答は作り方が決まっています。平均在庫をQ÷2ではなくQとして計算した値、そして発注回数と発注量を取り違えた値が、そのまま選択肢に並ぶ。

AP令和7年秋の「200」「500」がこの系統にあたります。

方式識別型では「発注時に需要予測が必要」(定期側)と「発注量にEOQを用いると効果的」(定量側)が毎回セットで登場し、どちらを問われているかだけで正誤が反転します。

AP平成29年春とAP平成27年春は、ほぼ同じ選択肢群で正解だけを入れ替えた関係。発注点計算型では、安全在庫を足し忘れた「250」が誤答に置かれる点も覚えておきましょう。

【最重要】「経済的発注量」か「発注点」かを3秒で見分ける

設問を読んだら、答えの単位ではなく問われている性質を先に判定します。

「1回あたり何個発注するか」ならEOQ、「在庫が何個まで減ったら発注するか」なら発注点。

判定キーワードは、前者が「発注量」「費用の合計が最小」、後者が「調達期間(リードタイム)」「安全在庫」です。

調達期間と安全在庫という2語が問題文に出た瞬間、答えは発注点だと確定できます。AP平成31年春 問75はこの構造そのもの。

EOQ=600個という数字を堂々と提示しながら、計算には一切使わせません。答えは50個×5日+30個=280個で、600は完全なダミーでした。

筆者自身、公式を√(2RC÷H)の形で丸暗記して本番に臨み、R・C・Hのどれが保管費だったか思い出せずに冷や汗をかいた記憶があります。

暗記をやめ、(R÷Q)×Cと(Q÷2)×Hを書いてイコールで結ぶ手順に切り替えてからは、記号の取り違えが消えました。

AP令和7年秋 問74(年間需要量100,000個、1回あたり発注費5,000円、1個あたり年間保管費1,000円)を、この3ステップで解いてみます。

公式を忘れても解けるEOQ計算3ステップ

STEP 1
年間発注費を式にする
(100,000÷Q)×5,000
STEP 2
年間保管費を式にする
(Q÷2)×1,000
STEP 3
等号で結んでQを解く
Q2=1,000,000 Q=1,000個

R=年間需要量、C=1回あたり発注費用、H=1単位あたり年間保管費用、Q=1回あたり発注量。両辺を整理すればQ=√(2RC÷H)が自力で再現できる

📝 計算でつまずく3つの落とし穴

・平均在庫をQにしてしまう。在庫は発注直後のQから減ってゼロになるため、平均はQ÷2。外すと答えが√2倍ずれる
・「経済的発注量」と「発注点」の取り違え。どちらも答えの単位が「個」なので、設問の性質判定を先に行う
・保管費の単位の読み違え。「在庫金額に対する年利率」で与えられたら、H=単価×年利率に変換してから代入する

📊 EOQと混同されやすい4語の比較

用語 何を決めるものか 計算に必要な入力値 属する発注方式 設問キーワード
経済的発注量 いくつ発注するか(量) 年間需要量R/発注費C/保管費H 定量発注方式 1回あたりの発注量/費用の合計が最小
発注点 いつ発注するか(タイミング) 1日の消費量/調達期間/安全在庫 定量発注方式 調達期間/在庫がいくつになったら
安全在庫 変動への備え(量) 需要のばらつき/調達期間/安全係数 両方式で使用 欠品を防ぐ/需要変動に備える
ABC分析 どの品目に力を入れるか(対象選定) 品目別の年間出庫金額 方式選定の前工程 金額構成比/累積比率
SCM 供給連鎖全体の在庫最適化 需要・生産・物流の共有情報 上位概念 企業間/サプライチェーン全体

安全在庫がEOQの式には入らず、発注点の式にだけ加算されるという非対称も、同じ理由で狙われます。

表の「何を決めるものか」の列だけでも頭に入れておけば、取り違えはほぼ防げるはずです。

【確認テスト】経済的発注量(EOQ)の理解度チェック

Q. 定量発注方式における経済的発注量(EOQ)の説明として、最も適切なものはどれでしょうか?

  • A. 年間の発注費用と年間の在庫保管費用の合計が最小になる、1回あたりの発注量のこと。
  • B. 在庫量がこの水準まで減ったら発注をかける、という基準となる在庫量のこと。
  • C. 欠品を防ぐために、需要変動やリードタイムのばらつきに備えて常に確保しておく在庫量のこと。
正解と解説を見る

正解:A

解説:
2つの費用の合計が最小になる点では、右下がりの年間発注費と右上がりの年間保管費がちょうど一致します。AP令和7年秋 問74は、この等式を設問文中に明示したうえで計算させる親切な出題でした。3つの選択肢はいずれも答えが「個」で出るため、設問が「量」を聞いているのか「タイミング」を聞いているのかを先に判定してください。

Bが不正解の理由:発注点の説明。EOQが発注量を決めるのに対し、発注点は発注のタイミングを決める値です。AP平成31年春 問75で実際に問われたのはこちらでした。

Cが不正解の理由:安全在庫の説明。EOQの計算式には一切登場せず、発注点の計算にのみ加算される点が決定的な違いになります。

経済的発注量(EOQ)の関連用語ネットワーク

EOQは在庫管理という広いテーマの一点にすぎないため、前後の用語とつなげて覚えると午前問題での取りこぼしが減ります。

📊 関連用語マップ

カテゴリ 関連用語
前提知識 ABC分析(適用品目の選定)/パレート図/平均在庫/リードタイム
関連用語 発注点/安全在庫/定量発注方式/定期発注方式/ダブルビン法
発展 SCM(供給連鎖全体への拡張)/MRP/線形計画法

📝 この記事のまとめ

・EOQは発注費用と保管費用の合計が最小になる1回あたりの発注量
・公式より先に「年間発注費=年間保管費」の等式を書けば、Q=√(2RC÷H)は自力で再現できる
・EOQは「量」、発注点は「いつ」。調達期間と安全在庫が出たら発注点の問題
・FEは科目A免除修了試験での出題が中心。APはパターン1〜3すべてに備える