対象試験と出題頻度

ITサービス継続性管理(ITSCM)は、基本情報技術者・応用情報技術者で出題されるテーマです。

サービスマネジメントの一プロセスとして、ITILの枠組みの中で問われます。事業全体を守る「BCP」との役割分担を区別できるかが得点の分かれ目です。

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対象試験:
基本情報技術者
応用情報技術者
出題頻度:
★★★☆☆
ランクB(標準)覚えておくと有利

用語の定義

情報処理試験を勉強していると、「ITサービス継続性管理って、結局BCPと何が違うの?」と混乱しがちです。

ITサービス継続性管理(ITSCM:IT Service Continuity Management)とは、一言で言うと

 「災害や大規模障害が起きても、ITサービスを合意した水準・期限内で復旧・維持できるよう備える管理活動

のことです。

イメージとしては、病院の自家発電装置と非常用マニュアルです。

停電が起きても、病院は手術室や生命維持装置を止めるわけにはいきません。

だから普段から自家発電を用意し、「何分以内に切り替える」「どの設備を最優先で動かす」と決めておきます。

ITSCMも同じで、システムが倒れたときに「いつまでに」「どの状態まで」戻すかを前もって決め、その備えを整えておく取り組みです。

📊 ITサービス継続性管理の基本情報

項目 内容
英語名 IT Service Continuity Management(ITSCM)
分類 サービスマネジメント(ITILのプロセスの一つ)
上位の枠組み BCM(事業継続管理)/BCP(事業継続計画)
主な指標 RTO(目標復旧時間)、RPO(目標復旧時点)

解説

現代のビジネスは、基幹システムや顧客向けサービスが止まると業務そのものが立ち行きません。地震・水害・大規模なシステム障害は、いつ起きるか予測できません。

「壊れてから慌てて直す」では、復旧に何日もかかり、その間の損失は莫大になります。

そこで、被害が出る前に「許容できる停止時間」と「失っても良いデータの範囲」を決め、復旧の仕組みを準備しておく考え方が生まれました。これがITサービス継続性管理です。

2つの重要指標:RTOとRPO

復旧の「目標」を測る物差しが、RTOとRPOです。混同しやすいので、時間軸の図で押さえます。

⏱ 時間の流れで見るRTOとRPO

最後の
バックアップ取得
💥 障害発生
サービス
復旧完了
◀ RPO ▶
◀ RTO ▶
時間の流れ →
RPO(目標復旧時点)=障害発生時点からどれだけ過去までのデータ損失を許せるか。この幅が短いほどバックアップは高頻度になる。
RTO(目標復旧時間)=障害発生時点からどれだけ早くサービスを復旧させるか。この幅が短いほど復旧設備への投資が増える。

RPOが「失ってよいデータ量(時間幅)」、RTOが「許される停止時間」を表します。

RPOを短くするほどバックアップ頻度を上げる必要があり、RTOを短くするほど復旧設備への投資が増えます。

BCM・BCPとの位置づけ

ITSCMは単独で存在するものではなく、組織全体の事業継続の枠組みの「IT部分」を担います。

階層を図で整理します。

事業継続のなかでのITSCMの位置

BCM(事業継続管理)
組織全体の継続をマネジメントする活動
BCP(事業継続計画)
人・拠点・業務など全体の復旧計画
ITSCM(ITサービス継続性管理)
そのうち「ITサービス」の継続を担う

▲ BCPが事業全体の傘なら、ITSCMはその下でITだけを専門に守る役割

関連用語との比較

用語 守る対象 見分けキーワード
ITSCM ITサービスの復旧・維持 RTO、RPO、ITサービス
BCP 事業活動全体(人・拠点・業務) 事業全体、中核業務
可用性管理 平常時にサービスを使える状態に保つ 稼働率、平常運用
キャパシティ管理 必要な処理能力・資源の確保 性能、資源量

「可用性管理」が平常時にサービスを止めない取り組みなのに対し、ITSCMは「災害級の重大事象が起きた後にいかに復旧するか」に焦点を当てる点が決定的に違います。

では、この用語が試験でどのように出題されるか見ていきましょう。

💡 ITSCMの核心を3行で

・災害や重大障害が起きてもITサービスを合意水準で復旧・維持するための備え
・指標はRTO(何時間で復旧)とRPO(どこまでデータを戻す)
・組織全体を守るBCPの傘の下で、IT部分だけを担当する


試験ではこう出る!

ITSCMは、FE・APの午前問題でサービスマネジメントの分野から出題されます。APでは午後問題の長文テーマとしても登場した実績があります。

📊 過去問での出題実績

試験回 出題内容 問われたポイント
AP H24春
午後 問11
中堅メーカーを題材にしたITサービス継続マネジメントの長文問題。 ・複数拠点でのデータ保全と復旧手順
・RTO・RPOを踏まえた対策の妥当性
FE/AP
午前(複数回)
ITSCMの目的や指標RTO・RPOの意味を問う問題。 ・RTO=目標復旧時間/RPO=目標復旧時点の取り違えを誘う

📝 IPA試験での出題パターン

パターン1:「ITSCMの目的・説明を選べ」
サービスマネジメントの各プロセス(可用性管理、キャパシティ管理など)の説明が並び、「重大な中断後の復旧を担保する」記述を選ばせる形式。可用性管理(平常時の稼働維持)の説明がひっかけとして紛れ込みます。

 

パターン2:「RTO・RPOの意味を問う」
「目標復旧時間はどちらか」を問い、RTOとRPOを入れ替えた選択肢で揺さぶる形式。RTO=復旧までの時間、RPO=どこまで遡ってデータを戻すか、と方向で覚えるのが鉄則です。

 

深追いは不要です。経済産業省「ITサービス継続ガイドライン」の細目までは問われないので、目的とRTO・RPOの区別を固めれば十分です。


【確認テスト】理解度チェック

ここまでの内容を理解できたか、簡単なクイズで確認してみましょう。


Q. ITサービス継続性管理(ITSCM)の説明として、最も適切なものはどれでしょうか?

  • A. 平常時にサービスが合意した稼働率を満たすよう、可用性を維持・監視する。
  • B. 将来必要となる処理能力や資源量を予測し、過不足なく確保する。
  • C. 災害や重大な中断が起きても、ITサービスを合意した水準・期限内で復旧・維持できるよう備える。

正解と解説を見る

正解:C

解説:
ITSCMは、災害や大規模障害といった重大な中断が発生した後に、ITサービスを合意した水準・期限内で復旧・維持することを目的とする管理活動です。RTO・RPOという目標指標を定め、組織のBCPの一部としてIT領域を担います。

選択肢Aは可用性管理の説明です。可用性管理は平常時に稼働率を保つ活動であり、災害後の復旧に焦点を当てるITSCMとは目的が異なります。選択肢Bはキャパシティ管理の説明です。処理能力や資源量の確保を扱うものであり、サービス継続の備えとは別のプロセスです。


よくある質問(FAQ)

Q. ITSCMとDR(ディザスタリカバリ)は同じものですか?

同じではありません。DR(災害復旧)は、被災したシステムを実際に復旧させる「技術的な手段・実装」を指します。遠隔地のバックアップサイトやデータ複製の仕組みがDRの具体例です。一方ITSCMは、そのDRを含めて「いつまでに、どの水準まで戻すか」を計画・管理する上位のマネジメント活動です。DRはITSCMを実現するための部品の一つ、と理解すると整理しやすくなります。

Q. RTOとRPOはどちらを短くするほどコストが上がりますか?

どちらも短くするほどコストは上がりますが、増えるコストの種類が違います。RTO(復旧までの時間)を短くするには、待機系サーバや自動切替の仕組みなど「復旧スピードへの投資」が必要です。RPO(戻せるデータの時点)を短くするには、バックアップやデータ複製の頻度を上げる「データ保全への投資」が必要です。実務では事業上の許容範囲とコストのバランスで両者を決定します。

Q. 中小企業でもITSCMは必要ですか?

規模に関わらず、業務がITに依存しているなら必要です。ただし大企業のような専用バックアップサイトを持つ必要はなく、クラウドの自動バックアップやリージョン分散など、コストを抑えた手段で同等の備えを実現できます。重要なのは「自社にとって許容できる停止時間とデータ損失はどこか」を経営判断として決めておくことです。

Q. ITSCMの計画は作って終わりでよいですか?

作って終わりではありません。システム構成や事業内容は変化するため、定期的な見直しと「復旧訓練(テスト)」の実施が欠かせません。実際に切替手順を試さないと、計画上は問題なくても本番で機能しない事態が起こり得ます。ITILでも継続的改善のサイクルに組み込むことが推奨されています。