マイグレーション(移行)は、基本情報技術者試験・応用情報技術者試験のシステム構成やサービスマネジメント分野で出題されるテーマです。

ライブマイグレーション、一斉移行、順次移行といった移行方式の違いを正確に区別できるかが問われます。

対象試験と出題頻度

マイグレーションは、基本情報技術者・応用情報技術者で出題されるテーマです。

クラウドコンピューティングや仮想化技術との関連問題として登場するケースが多く、移行方式の特徴を正しく判別できるかが得点の分かれ目になります。

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対象試験:
基本情報技術者
応用情報技術者
出題頻度:
★★★☆☆
ランクB(標準)覚えておくと有利

用語の定義

情報処理試験を勉強していると、「マイグレーションって単なる引っ越しのこと?ライブマイグレーションとは何が違うの?」と混乱しがちです。

マイグレーション(Migration)とは、一言で言うと

 「既存のシステム・データ・ソフトウェアを、別の環境や新しい基盤へ移し替えること

です。

イメージとしては、自宅の引っ越しです。

家具や荷物(=データやアプリケーション)を旧居(=旧システム)から新居(=新システム)へ運ぶ。荷物を壊さず、生活に支障が出ないよう計画を立てて実行する。

マイグレーションはまさにこの「ITシステム版の引っ越し」です。

📊 マイグレーションの基本情報

項目 内容
英語名 Migration(移住・移動の意)
別名 システム移行、データ移行、レガシーマイグレーション
対象範囲 OS、アプリケーション、データベース、仮想マシンなど
試験での分類 システムの構成、サービスの設計・移行

解説

企業のITシステムは、ハードウェアの老朽化やOSのサポート終了、ビジネス要件の変化などにより、定期的に新しい環境へ移し替える必要があります。この移し替え作業を体系的に計画・実行するのがマイグレーションです。

ここでは、試験で区別を求められる代表的な移行方式と、関連する重要キーワードを整理します。

マイグレーションの主な種類

マイグレーションは「何を移すか」によって分類されます。

種類 概要 具体例
システム移行 旧システム全体を新システムへ切り替える オンプレミス→クラウドへの基盤刷新
データ移行 旧環境のデータを新環境へ移す 旧DBから新DBへのレコード変換・投入
ライブマイグレーション 稼働中の仮想マシンを停止せず別の物理サーバへ移す 物理サーバのメンテナンス時にVMを退避

システム移行方式の比較:一斉移行と順次移行

システム全体を新環境へ移す際のアプローチは、大きく2つに分かれます。

一斉移行方式 vs 順次移行方式

一斉移行方式

旧システム【稼働中】
新システム【一斉に切替】

ある時点で全業務を一気に新システムへ切り替える。並行運用のコストがかからない反面、切替時にトラブルが起きた場合の影響が大きい。

順次移行方式(並行運用方式)

旧システム ───
並行稼働
─── 新システム

新旧システムを一定期間並行で稼働させ、問題がないことを確認してから旧システムを停止する。安全性は高いが、両方の運用コストが発生する。

ライブマイグレーションの仕組み

ライブマイグレーション(Live Migration)は、ハイパーバイザ型仮想化環境で使われる技術です。

稼働中の仮想マシンのメモリ内容やCPU状態を、ネットワーク経由で別の物理サーバへコピーし、ダウンタイムをほぼゼロで移動を完了させます。

ライブマイグレーションの流れ

STEP 1

物理サーバAで仮想マシンが稼働中

STEP 2

メモリ内容・CPU状態をネットワーク経由で物理サーバBへコピー
(この間もサービスは停止しない)

STEP 3

物理サーバBで仮想マシンがそのまま稼働を継続
(ダウンタイムはほぼゼロ)

💡 ポイント:OSやアプリケーションを一切停止させずに移動が完了するため、可用性を損なわない

移行計画で押さえるべきポイント

マイグレーションの成否は計画段階で決まります。

特に重要なのは「切り戻し(フォールバック)」の設計です。移行作業が失敗した場合に、どの時点で旧環境に戻すかの判断基準を事前に定めておく必要があります。

また、移行対象のデータ量が大きい場合は一括ではなく分割して段階的に移行し、リスクを分散させるのが定石です。

では、この用語が試験でどのように出題されるか見ていきましょう。

💡 マイグレーションの核心を3行で

・既存のシステムやデータを新しい環境へ移し替える作業の総称
・一斉移行(一気に切替)と順次移行(並行運用してから切替)の2方式を区別する
・ライブマイグレーションは仮想マシンを無停止で別の物理サーバへ移す技術


試験ではこう出る!

マイグレーション関連の問題は、FE・APの午前問題でシステムの構成やサービスマネジメントの分野から出題されています。

出題パターンは大きく3つに分かれます。

📊 過去問での出題実績

試験回 出題内容 問われたポイント
AP H30秋
午前 問12
ライブマイグレーションの概念を説明したものを選ぶ ・「OSやソフトウェアを停止せず移し替える」が正解
・ストレージ自動階層化・マルチテナント・リソースオンデマンドがひっかけ
AP H28春
午前 問14
H30秋 問12と同一構成の問題(流用) ・FEとAPで同じ問題が出回る典型例
FE R2免除
問14
上記AP問題のFEへの流用 ・ライブマイグレーションの定義を正しく選べるかが鍵
FE R1秋
午前 問56
システムの移行計画に関する記述で適切なものを選ぶ ・「失敗時に旧システムに戻す判断基準が必要」が正解
・並行運用はコスト増、一括移行はリスク大
FE H26春
午前 問55
一斉移行方式の特徴を選ぶ ・「移行時のトラブル影響が大きい」が正解
・順次移行方式の特徴がひっかけ

📝 IPA試験での出題パターン

パターン1:「ライブマイグレーションの説明を選べ」
仮想化関連の用語説明が4つ並び、ライブマイグレーションに該当するものを選ぶ形式。ストレージ自動階層化・マルチテナント・リソースオンデマンドの説明が混在する。キーワードは「停止せず」「別の物理サーバへ」。

 

パターン2:「移行計画の記述で正しいものを選べ」
切り戻し計画の必要性を問う形式。「データ量が多ければ一括移行」「並行運用でコスト低減」などの誤った記述がひっかけになる。

 

パターン3:「一斉移行方式の特徴を選べ」
一斉移行と順次移行の特徴を入れ替えた選択肢が出る。「トラブル影響が大きい」=一斉移行、「並行運用コストが発生」=順次移行という対応を覚えておけば確実に得点できる。

 

試験ではここまででOKです。ライブマイグレーションの内部的なメモリコピーの仕組みまで問われることはないので、深追いは不要です。


【確認テスト】理解度チェック

ここまでの内容を理解できたか、簡単なクイズで確認してみましょう。


Q. 仮想サーバの運用で使用するライブマイグレーションの説明として、最も適切なものはどれでしょうか?

  • A. データの利用頻度に応じて、格納先のストレージを自動的に最適配置する技術である。
  • B. 複数の利用者でサーバやデータベースを共有しながら、利用者ごとにデータを論理的に分離する技術である。
  • C. 仮想サーバで稼働しているOSやソフトウェアを停止することなく、別の物理サーバへ移し替える技術である。

正解と解説を見る

正解:C

解説:
ライブマイグレーションは、稼働中の仮想マシンをOSやアプリケーションを停止させずに別の物理サーバへ移動させる技術です。AP H30秋 午前問12・AP H28春 午前問14・FE R2免除問14で繰り返し出題されている定番の問いです。

選択肢Aはストレージ自動階層化の説明です。データの利用頻度に応じてSSDやHDDなど適切なストレージに自動配置する技術であり、仮想マシンの移動とは無関係です。選択肢Bはマルチテナントの説明です。1つのシステム基盤を複数の利用者で共有しつつデータを論理的に分離する仕組みであり、物理サーバ間の移動は伴いません。


よくある質問(FAQ)

Q. マイグレーションとモダナイゼーションはどう違いますか?

マイグレーションは既存のシステムやデータを「別の環境へ移す」行為全般を指します。一方、モダナイゼーション(Modernization)は古いシステムの構造や技術を「最新のアーキテクチャに作り替える」ことを意味します。例えば、メインフレーム上のCOBOLプログラムをJavaに書き換えてクラウド上で動かすのはモダナイゼーションです。単にサーバ環境だけを入れ替えるのがマイグレーション、プログラム自体を刷新するのがモダナイゼーションと整理してください。

Q. 「切り戻し」とは具体的に何をすることですか?

切り戻し(フォールバック)とは、移行先の新環境で障害やデータ不整合が発生した場合に、あらかじめ取得しておいたバックアップを使って旧環境の状態に復元する手順です。移行計画書には「どの指標がどの閾値を超えたら切り戻すか」の判断基準と、復旧手順の両方を明記しておく必要があります。FE R1秋 午前問56では、この切り戻し計画の必要性が正解の根拠として問われました。

Q. 実務ではどのようなタイミングでマイグレーションが発生しますか?

代表的なトリガーは、ハードウェアの保守期限切れ(EOL)、OSやミドルウェアのサポート終了、事業拡大に伴うスケーラビリティ不足、コスト最適化を目的としたクラウドシフトの4つです。近年は経済産業省の「DXレポート」で指摘された「2025年の崖」が契機となり、レガシーシステムからの脱却を目的としたマイグレーション案件が急増しています。

Q. ライブマイグレーションはどんな場面で使われますか?

最も多いのは、物理サーバの計画メンテナンス(ファームウェア更新やハードウェア交換)の際に、稼働中の仮想マシンを別の物理サーバへ退避させる場面です。サービスを停止させずにメンテナンスを実行できるため、SLAで高い稼働率を求められるシステムで重宝されます。また、負荷分散の目的で特定サーバに集中した仮想マシンを別サーバへ再配置する場面でも利用されます。