対象試験と出題頻度
システム監査は「監査をする側」の知識を問う分野で、午前問題では工程名の使い分けがそのまま選択肢になります。なかでも予備調査は、基本情報技術者・応用情報技術者の午前で繰り返し顔を出す定番です。
システム監査の実施手順は「予備調査 → 本調査 → 評価・結論」という順番で進みます。この工程のどこで何をするのかを取り違えると、選択肢のひっかけにそのまま引っかかります。
対象試験と頻度の詳細
基本情報技術者
応用情報技術者
★★★☆☆
ランクB(標準)覚えておくと有利
用語の定義
「予備調査」と「本調査」、名前は似ているのに何が違うのか、最初はモヤッとしますよね。
予備調査(Preliminary Investigation)とは、一言で言うと
「本調査の前に、監査対象システムや業務の概要をざっくり把握しておく下調べの工程」
のことです。
イメージとしては、「健康診断の前の問診」です。
問診では「最近の体調は?」「気になる箇所は?」と医師がざっくり全体像を聞き取り、どこを重点的に検査するかの当たりをつけます。いきなり精密検査はしません。
予備調査も同じで、「どこに重点を置いて本調査をすべきか」を見極めるための情報集めに徹します。証拠を突き詰める精密検査(本調査)は、その後です。
📊 予備調査の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 別名 | 事前調査 |
| 位置づけ | 監査手続のうち「本調査」の前段階 |
| 目的 | 監査対象の概要把握と、本調査の絞り込み |
| 主な手法 | 関連資料のレビュー、チェックリスト(質問表)への回答 |
解説
監査人は、監査対象の業務やシステムについて最初から細部まで知っているわけではありません。
何の準備もなく現場に乗り込んでも、どこを掘れば問題が見つかるのか見当がつかず、時間ばかりかかります。
そこで、まず全体像をつかみ、「リスクが潜んでいそうな箇所」に当たりをつけてから本調査に進む。この下調べの工程が予備調査として定義されました。
経済産業省の「システム監査基準」でも、監査手続は予備調査と本調査に分けて実施すると明記されています。
システム監査全体の中での位置
監査の実施は、大きく次の流れで進みます。
予備調査がどこに座っているかを押さえてください。
①実施準備
監査計画の策定
②予備調査
概要把握・下調べ
③本調査
現地調査・証拠収集
④評価・結論
監査報告書の作成
▲ オレンジが予備調査。本調査の「前」に位置し、ここで本調査の的を絞る
予備調査でやること・やらないこと
予備調査の核心は「概要把握」です。
手元の資料を読み込んだり、簡単なチェックリストに答えてもらったりして、リスクやコントロール(統制)の存在を大まかに掴みます。そのうえで、計画していた本調査の内容を見直し、最終的に「本調査で何をどう調べるか」を記した監査手続書を確定させます。
| 観点 | 予備調査 | 本調査 |
|---|---|---|
| 目的 | 概要を把握し、調べる的を絞る | 監査証拠を集め、結論の根拠を固める |
| 深さ | 浅く広く(ざっくり) | 深く詳細に(精密) |
| 代表的な作業 | 資料レビュー、チェックリスト回答 | 現地調査、手続書に沿った詳細ヒアリング |
| 監査手続書 | ここで確定させる | 確定済みの手続書に従って実施 |
ここで注意したいのが、「監査手続書に従った詳細なヒアリング」や「現場での実地確認」「指摘事項のとりまとめ」は予備調査ではない、という点です。
これらは本調査や、その後の報告書作成でやることです。この境界の取り違えが、出題の最大の狙い目になります。
💡 覚えるのはここだけ:予備調査の要点
・本調査の「前」に行う、概要把握のための下調べ工程(別名:事前調査)
・主な手法は「資料レビュー」と「チェックリストへの回答」。浅く広く
・詳細ヒアリング・現地調査・指摘事項のまとめは本調査以降の仕事
試験ではこう出る!
FE・APの午前問題では、「監査手続のうち、予備調査で実施するものはどれか」という形で、本調査・報告書作成の作業を混ぜた4択が定番です。
工程の切り分けができれば確実に正解できます。
📊 過去問での出題実績
| 試験回 | 出題内容 | ひっかけの作り方 |
|---|---|---|
| AP H28春 午前 問59 |
予備調査で実施する監査手続を選ぶ問題。正解は「アンケート調査による情報収集」。 | ・指摘事項のまとめ(報告書作成) ・現場での実現可能性確認(本調査) ・手続書に従った詳細調査(本調査)を混入 |
| AP 午前 (複数回) |
「予備調査の目的」を問う問題。本調査の効果的・効率的な実施に向けた概要把握が正解。 | ・「監査証拠の入手・評価」を予備調査の目的とする誤答 |
| FE 午前 (マネジメント系) |
システム監査の実施手順(予備調査→本調査→報告)の並び順を問う問題。 | ・本調査と予備調査の順序を入れ替えた選択肢 |
📝 IPA試験での出題パターン
パターン1:「予備調査の作業を選べ」
4択のうち1つだけが下調べ系の作業(資料レビュー、チェックリスト・アンケート)。残りは本調査の「現地で詳細ヒアリング」「実現可能性を現場で確認」、報告書作成の「指摘事項をまとめる」。詳細・現場・まとめ系が出てきたら予備調査ではない、と弾く。
パターン2:「手順の順序を選べ」
予備調査と本調査の前後を入れ替えた選択肢がひっかけ。「概要把握が先、詳細調査が後」と覚えておけば即答できる。
監査手続書をいつ確定させるか(=予備調査の最後)まで押さえれば、この用語は得点ラインに届きます。それ以上の細かい監査基準の条文暗記は不要です。
【確認テスト】理解度チェック
Q. システム監査において、監査人が予備調査で実施する作業として最も適切なものはどれでしょうか?
- A. 監査手続書に従い、被監査部門の担当者へ詳細なヒアリングを行って監査対象の実態を細かく調査する。
- B. 監査対象に関する関連資料をレビューし、チェックリストやアンケートで監査対象の概要を把握する。
- C. 収集した監査証拠に基づいて指摘事項を整理し、監査報告書としてとりまとめる。
正解と解説を見る
正解:B
解説:
予備調査は本調査の前に監査対象の概要を把握する工程であり、その代表的な手法が「関連資料のレビュー」と「チェックリスト(質問表・アンケート)への回答」です。Bはまさにこの下調べの作業を述べているため正解です。
選択肢Aは本調査の説明です。監査手続書に従った詳細なヒアリングや実態の精査は、的を絞ったあとに行う本調査の作業であり、概要把握を目的とする予備調査の段階では行いません。選択肢Cは監査報告書の作成についての説明です。監査証拠に基づく指摘事項のとりまとめは、本調査を終えた「評価・結論」の工程で行うものであり、予備調査ではありません。
よくある質問(FAQ)
Q. 「事前調査」という言葉も見かけますが、予備調査と別物ですか?
同じものです。経済産業省のシステム監査基準でも「予備調査(事前調査ともいう)」と併記されています。試験の選択肢でどちらの表記が出ても、本調査前の概要把握工程を指していると判断して問題ありません。
Q. 予備調査でアンケートやヒアリングをするなら、本調査のヒアリングと何が違うのですか?
同じ「聞き取り」でも目的と深さが違います。予備調査の聞き取りは「全体像を掴むための広く浅い情報収集」で、簡易なアンケートやチェックリストが中心です。本調査の聞き取りは「監査手続書に沿って、特定の論点を裏付ける証拠を得る詳細な調査」です。問診と精密検査の違いと同じく、目的が概要把握なら予備調査、証拠固めなら本調査と切り分けてください。
Q. 監査手続書はいつ作るのですか?
予備調査の最後に確定させます。予備調査で把握したリスクや問題点を踏まえ、「本調査で何をどう調べるか」を具体化したものが監査手続書です。本調査はこの確定した手続書に沿って進めます。「手続書を作ってから本調査」という順序を覚えておくと、手順を問う問題に強くなります。
Q. 実務では予備調査をどれくらいの規模で行うのですか?
監査対象の規模やリスクの大きさによって変わります。大規模システムなら関連資料も膨大なため数週間かけることもありますが、小規模な業務監査なら担当者への質問表配布と回収だけで済む場合もあります。共通するのは「ここで本調査の重点領域を絞れていないと、本調査が非効率になる」という点で、実務上も省略できない準備工程として扱われます。