プライベートクラウドは、クラウドの分類を学ぶうえで避けて通れないキーワードです。パブリッククラウドやハイブリッドクラウドとセットで問われるため、それぞれの違いを正確に押さえておく必要があります。
対象試験と出題頻度
プライベートクラウドは、ITパスポート・基本情報技術者・応用情報技術者の3試験で出題されるテーマです。
クラウドの提供形態(デプロイメントモデル)を比較する問題の選択肢として登場することが多く、パブリッククラウドやハイブリッドクラウドとの違いを正確に区別できるかが問われます。
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ITパスポート
基本情報技術者
応用情報技術者
★★★☆☆
ランクB(標準)覚えておくと有利
用語の定義
情報処理試験を勉強していると、「パブリッククラウドとプライベートクラウドって結局何が違うの?」と混乱しがちです。
プライベートクラウド(Private Cloud)とは、一言で言うと
「特定の組織が専用で利用するクラウド環境」
のことです。
イメージとしては、「自社ビル内に設けた専用の社員食堂」です。
一般公開されたフードコート(パブリッククラウド)は誰でも利用できて安く済みますが、メニューや衛生管理を自社の基準に合わせることはできません。
一方、社員食堂なら利用者は社内の人間に限られ、メニューもセキュリティルールも自社の方針で自由に決められます。そのぶん維持費は自社持ちになる、という構造です。
📊 プライベートクラウドの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 英語名 | Private Cloud |
| 定義元 | NIST SP 800-145(The NIST Definition of Cloud Computing) |
| 分類 | クラウドの実装モデル(デプロイメントモデル)の1つ |
| 関連モデル | パブリッククラウド、ハイブリッドクラウド、コミュニティクラウド |
解説
クラウドコンピューティングが普及する以前、企業は自社のサーバールームやデータセンターにハードウェアを設置し、自前で運用する「オンプレミス」が当たり前でした。
その後、AWSやAzureのように不特定多数にリソースを提供するパブリッククラウドが登場し、コスト削減やスケーラビリティの面で急速に普及しました。
しかし、金融機関や医療機関、官公庁のように厳格なセキュリティ要件やコンプライアンス規制を満たす必要がある組織では、「他社と共有する環境にデータを置けない」という課題が残りました。
この課題を解決する手段として、クラウドの利便性(仮想化・セルフサービス・弾力的なリソース配分)を維持しつつ、インフラを自組織専用として隔離する形態が生まれました。これがプライベートクラウドです。
NISTが定義する4つのデプロイメントモデル
NIST SP 800-145では、クラウドの実装モデルを4種類に分類しています。
プライベートクラウドはその1つであり、他の3つとの違いを整理すると全体像がつかめます。
| モデル | 利用者の範囲 | 特徴 |
|---|---|---|
| プライベート | 単一の組織 | 自組織専用。セキュリティ・カスタマイズ性が高いが、構築・運用コストも高い |
| パブリック | 不特定多数 | 一般公開。低コスト・高スケーラビリティだが、カスタマイズ性は限定的 |
| コミュニティ | 共通目的を持つ複数組織 | 同業種・同目的の団体で共同利用。コストをシェアしつつ要件を統一 |
| ハイブリッド | 上記の組み合わせ | プライベートとパブリック等を連携させ、相互運用する形態 |
図解:デプロイメントモデルの関係
クラウド デプロイメントモデルの全体像(NIST SP 800-145)
🔒 プライベート
自組織専用
🌐 パブリック
不特定多数が共用
🔗 ハイブリッド
両者を連携・相互運用
👥 コミュニティ
共通目的の複数組織で共有
※ ハイブリッドはプライベートとパブリックの連携形態。コミュニティは独立した第4のモデル。
構築方式:オンプレミス型とホステッド型
プライベートクラウドには、誰がインフラを所有・管理するかによって2つの方式があります。
| 方式 | 設置場所 | 管理主体 | 向いている組織 |
|---|---|---|---|
| オンプレミス型 | 自社データセンター内 | 自社 | IT部門に十分な人員とスキルがある大企業 |
| ホステッド型 | 外部事業者のデータセンター | 外部事業者(専用区画を割当て) | 自社設備を持たないが専用環境が必要な組織 |
NIST SP 800-145でも「プライベートクラウドはその組織自身、またはサードパーティ、あるいはその組み合わせによって所有・管理・運用される」と定義されており、自社設備が必須というわけではありません。ここだけは確実に押さえてください。
では、この用語が試験でどのように出題されるか見ていきましょう。
💡 プライベートクラウドの核心を3行で
・特定の組織が専用で利用するクラウドのデプロイメントモデル
・NISTが定義する4モデル(プライベート/パブリック/コミュニティ/ハイブリッド)の1つ
・自社運用(オンプレミス型)だけでなく、外部事業者に委託するホステッド型もある
試験ではこう出る!
プライベートクラウドそのものが単独で問われるケースよりも、パブリッククラウドやハイブリッドクラウドとの比較問題の選択肢として登場するパターンが中心です。
📊 過去問での出題実績
| 試験回 | 出題内容 | 問われたポイント |
|---|---|---|
| FE R5年度 科目A 問15 |
ハイブリッドクラウドの説明を選ぶ問題。選択肢に「自社専用に使用するクラウドサービス」(=プライベートクラウド)という記述が含まれる | ・プライベートとパブリックの連携がハイブリッドの定義 ・「自社専用」が区別のキーワード |
| AP H30春 午後 問4 |
クラウドサービスの利用形態選定。SaaS/PaaS/IaaSとパブリック/プライベートの組み合わせで最適な形態を選ぶ | ・セキュリティ要件が高い場合にプライベートが選ばれる理由の理解 ・サービスモデルとデプロイメントモデルの掛け合わせ |
| IP シラバス Ver.6.3 |
ITパスポートのシラバスVer.6.3で「パブリッククラウド,プライベートクラウド,ハイブリッドクラウド,マルチクラウド」が用語例として明記 | ・4つのモデル名を正確に覚えているかが直接問われる可能性 |
📝 IPA試験での出題パターン
パターン1:「ハイブリッドクラウドの説明を選べ」
FE R5年度 科目A 問15のように、ハイブリッドクラウドの定義を問う形式で、前提知識としてプライベートクラウドの理解が必須になる。「自社専用のクラウドサービスと汎用のクラウドサービスの連携」と書かれていたらハイブリッドを指す。
パターン2:「クラウドの利用形態を選定せよ」
AP H30春 午後問4のように、業務要件(セキュリティ・コスト・カスタマイズ性)をもとに、サービスモデル(IaaS/PaaS/SaaS)×デプロイメントモデル(パブリック/プライベート)の組み合わせを選ばせる応用問題。
試験ではここまででOKです。オンプレミス型とホステッド型の構築方式の違いまで午前問題で問われることはないので、深追いは不要です。
【確認テスト】理解度チェック
ここまでの内容を理解できたか、簡単なクイズで確認してみましょう。
Q. NIST SP 800-145におけるクラウドのデプロイメントモデルのうち、「プライベートクラウド」の説明として最も適切なものはどれでしょうか?
- A. クラウドインフラストラクチャが単一の組織の専用使用のために提供され、その組織自身またはサードパーティにより所有・管理・運用される形態。
- B. 不特定多数の利用者に対してインターネット経由でリソースを提供し、利用量に応じた従量課金で運用する形態。
- C. 複数の異なるクラウド環境を組み合わせ、データやアプリケーションの相互運用を可能にする形態。
正解と解説を見る
正解:A
解説:
NIST SP 800-145では、プライベートクラウドを「単一の組織の専用使用のために提供されるクラウドインフラストラクチャ」と定義しています。所有・管理はその組織自身でもサードパーティでもよい点がポイントです。
選択肢Bはパブリッククラウドの説明です。不特定多数に広く公開され、従量課金モデルで運用される点がプライベートクラウドとの違いです。選択肢Cはハイブリッドクラウドの説明です。異なるデプロイメントモデルを連携・相互運用する形態であり、単一組織の専用環境を指すプライベートクラウドとは区別されます。
よくある質問(FAQ)
Q. プライベートクラウドとオンプレミスは同じ意味ですか?
異なります。オンプレミスは「自社設備で自社運用する」という設置・運用形態を指す言葉です。プライベートクラウドはクラウドの特性(仮想化、弾力的なリソース配分、セルフサービスなど)を備えたうえで利用者を単一組織に限定した環境を指します。自社データセンターにサーバーを置いていても、クラウドの特性を持たなければそれは単なるオンプレミスであり、プライベートクラウドとは呼びません。
Q. CASBはプライベートクラウドにも関係しますか?
CASBは主にパブリッククラウド(SaaS)の利用状況を監視・制御するためのセキュリティ製品です。プライベートクラウドは自組織が管理する環境のため、CASBの監視対象にはなりません。CASBが活躍するのは、従業員が会社の管理外でSaaSを勝手に使ってしまう「シャドーIT」を防ぎたい場面です。
Q. マルチクラウドとハイブリッドクラウドはどう違いますか?
マルチクラウドは「複数のパブリッククラウド事業者のサービスを併用する」形態です。例えばAWSとAzureを用途に応じて使い分けるケースがこれに当たります。一方、ハイブリッドクラウドは「プライベートとパブリックを連携させる」形態です。ITパスポートのシラバスVer.6.3では両者とも用語例に含まれているため、混同しないよう注意してください。
Q. 中小企業でもプライベートクラウドを導入するメリットはありますか?
ホステッド型であれば、自社でハードウェアを購入・管理する必要がないため、中小企業でも導入は可能です。ただし、パブリッククラウドに比べてコストが高くなる傾向があるため、厳格なデータ管理要件(業界規制や取引先のセキュリティ基準など)が存在しない限りは、パブリッククラウドで十分なケースが大半です。